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86話

本日3話目

ちょっと劇です

「劇タイトルは『仮面舞踏会 ~星の涙~』か」

「意外と有名な奴だな」


 休憩を取り、劇が行われる会場へジャックたちは入った。


 劇が開かれるのは、この学園の体育館である。


 とはいっても、普段はほとんど使用されないのであちこちボロボロなのだが、それでも大勢のお客でにぎわっていた。


「実際にあった出来事ですの?」

 

 ルナが不思議そうな顔で聞いてきた。不覚にも少しドキリとジャックはしたが、まあ落ち着いて。


「ああ、今からはるか300年ほど前にこの国であった出来事で、絵本にもなっているんだよね」

「300年ほど前ですか・・」

「妾たちも知らんのぅ」


 シロとクロがいた時代とすれば、桁数が違うからな。


 とにもかくにも、この国ではかなり有名な話である。


「楽しみですのん」

「かぶーきーの方が面白いかもしれんが、楽しみぜよ」


 ヨナとミツも楽しみなようである。


 会場にて、席に座って開演を待った・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方、舞台裏では。


「きゃははははははっ!!やっとターゲットが来たようなのサ!!さあ、楽しむがいいのサきゃははははははっ!!」


 笑いながら、その人物は手を振って指示を出した・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ぬ?」

「ん?」

「どうした?シロ、クロ」


 席に座っていたシロとクロが何やら一瞬思案顔になった。


「なんかいま変なものを感じたんですよね・・・」

「ここは適正者の学園じゃ。もしかしたら魔法で何かするのか?」


 どうも変な魔法の気配を感じたらしいけど・・・気になるな。



 まあほおっておいて、劇がどうやら始まるようであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『昔、昔、とっても昔。あるところに仲の良い男の子と女の子がいました・・・・』


そこから話は始まる。


 男の子の名前はアルセル。女の子の名前はエリザベス。アルセルは平民、エリザベスは貴族と身分の差があるものの、とても仲が良くていつも二人は一緒だった。


 将来は結婚しようなんて誓いもたてたほどである。


「私と結婚するなら、ずっと私を守ってくれるの?」

「うん!!絶対約束するよ!!」絶対守るからね!!」




 だが、ある時森で二人はモンスターに襲われてしまう。


 アルセルがエリザベスをかばい、片目をえぐり取られてしまう。


 幸いにして、適正者たちが駆け付けて二人は助かったのだが、アルセルの片目があった場所は深い傷となり、彼はエリザベスを完全に守り切れなかったことを悔しがって、彼女の前から姿を消した。


 アルセルの家にエリザベスは向かったが、彼の両親の話によると家出して完全に行方不明になっていた。


 捜索がされたものの、結局は打ち切りとなった・・・・。






 それから年月が過ぎ、エリザベスは15歳となった。


 水晶の儀を行ったものの、彼女は適正者ではなかったということが分かった。


 そのため、彼女の両親はこの際他の貴族の家に嫁いでもらおうと思い、ある晩の舞踏会へ彼女を出した。


 だが、エリザベスはアルセルのことが忘れられず、舞踏会の最中でも乗り気に離れなかった。


 そんな時、いきなり舞踏会上にモンスターたちが襲撃をかけてくる。


 適正者たちが警備をしていたはずなのだが、どうやら襲ってきたのは物凄く強いモンスター。


 舞踏会場がパニックになる中、エリザベスは腰が抜けて動けなかった。


 モンスターが今まさに彼女に襲い掛からんとした時だった。


ひゅんっつ


 一線の光の筋が走り、モンスターを一刀両断にした。


 みると、剣を持った仮面の男性が彼女を助けたようである。


 その見た目から、彼女はアルセルを思い浮かべた。


 そして、その仮面の男は瞬く間にモンスターたちをすべて切り裂き、倒してしまった。


 そのまま立ち去ろうとしたので、彼女は呼び止めた。


「貴方はアルセルではないのか」と。


 だが、仮面の男は何も言わずにその場を去ってしまった。


 駆けつけてきたほかの適正者たちに話を聞いてみたが、彼らも知らないと。


 幻でも見たのではと言われたが、彼女は間違いなくあれはアルセルだと思った。


 生きているようなのはうれしかったが、なぜ彼女に声をかけてくれなかったのか。







 アルセルについて調べている中、以前から怪しかったとある国との戦争が始まってしまった。


 臆病な貴族たちの中には、この国から逃げていくものが出始めた。


 彼女の家も、この戦争から逃れるために馬車に乗って一家ごとこの国から去ろうとした。


 エリザベスはアルセルがまだいるかもしれないこの国から出ていきたくはなかったが、当主である血と矢に逆らえずに馬車に乗せられた。


 だが、国境を越えようとしたあたりでいきなり盗賊たちに襲われた。


 貴族たちがこのルートで逃げていくものだから、盗賊たちが待ち伏せていたのである。


 馬車から出て、逃げようとしたエリザベスを盗賊たちが押さえつけた。


 家族は殺され、彼女は身ぐるみをはがされて盗賊たちの慰めものにされかけた。


 そんな時だった。


 あの舞踏会の時のように、仮面の男が盗賊たちを一気に切り捨てた。


 アルセルで間違いない。彼女はそう確信した。


「アルセルでしょう・・・・私を守ってくれたのは」

「・・・」


 返事は帰ってこない。だが、彼女にはもう彼がアルセルとしか思えなかった。


「あの日のことを覚えてくれているから、私を守ってくれたのでしょう・・」

「・・・」


「あの日」と言った瞬間に仮面の男がピクリと反応したように見えた。


「あの日、あなたが将来結婚しようとした時に行ってくれた誓いを覚えているかしら?」


 あの日、幼い時に互いに誓ったあの事。


 エリザベスの事をアルセルが守ってくれるということを。


「モンスターに襲われた後、あなたは私の前から姿を消した。モンスターの危険から、私を完全に守れなかったことを悔しがって・・・・」

「・・・・」

「でも、私の命は守ってくれたじゃない。命懸けで」

「・・」

「それでも、私を守れなかったと言えるの?」


 エリザベスの問いに、仮面の男は答えようとしない。だが、その場から去ることもしない。


 まるで、話を聞いているようなそんな感じだ。


「悔しがって私の前から消えたのも・・・私を守るための力が欲しかったからでしょう。その修行みたいなことをしていたのね」

「・・・」

「・・・・あなたはついに舞踏会でのモンスターから、そして、今の盗賊たちから私を守ってくれた」

「・・・だが、ギリギリで間に合わないかもしれなかった」


 仮面の男が返事を初めて返した。その声は、昔のあの頃の声とは違うが、アルセルだとはっきりわかるもの。


「結局は、ギリギリでしか君を守れなかった。モンスターの時は襲われかけて、今の盗賊の時は衣服を破られて・・・・本当に危ないギリギリのところでしか・・・」


 肩を振るえさせ、まるで自身が許せないような、そんな仮面の男。


 エリザベスは、そっと後ろから彼を抱きしめた。


「・・・!?」

「いいのよ・・・結局は私を守ってくれたことには変わりはないでしょ?ねぇ、アルセル・・・」

「・・エリザベス・・・!」


 星空の下、仮面の男、いやアルセルはそのまま彼女に後ろから抱かれていた。


 エリザベスもまたアルセルの事をやさしく抱きしめる。


 幼い頃の森の中、二人が仲良かったころのように・・・・。


 そして、そのうちに二人は自然と体が離れた。


「アルセル・・・せっかくだからここで私と踊ってくれないかしら?」

「ここでかい?」

「ええ、あの舞踏会の時、あなたがいてくれたら踊れたのに、私は踊れなかったのよ」


 ぷんぷんと怒るようなエリザベスを見て、アルセルは仮面の下から苦笑を浮かべる。


「それじゃあ、ここで踊るかい?」

「・・・仮面は外してくれないの?」

「・・・今の素顔はひどいからね。あの後、傷が化膿して、焼きゴテで無理やり焼いて・・・」

「・・・いいのよ、あなたの素顔がどんなものでも。アルセルは、アルセルのままなんだから」


 エリザベスがそういったので、アルセルは仮面を外した。


 その顔は、ひどいものになっていたけど・・・・


「やっぱり、アルセルは、アルセルのままよ」


 エリザベスはそんな顔にかまわずに、アルセルの手を取って、彼の顔に口づけをした。


 そして、まだ夜明けが来ぬ星空の下、彼らはまるで舞踏会にいるように踊り合った・・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うえっぐ、うえっぐ・・・」


 観客たち、全員感動していた。


 涙や鼻水が止まらない者たちであふれ、泣きじゃくる。


 ジャックたちも例外ではなく、全員涙を流していた。


 


 一方、舞台裏の人影はジャックの姿を確認していた。


「そろそろなのサ!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そして、アルセルとエリザベスは一晩の時を過ごした。


 朝になり、彼らは歩き、国へと戻った。


 


 エリザベスの家は党首が死んでしまったことによりつぶされかけたが、エリザベスが当主として継ぐことで存続した。


 アルセルは適正者だと判明し、国に仕えよという命令が出たが、彼はエリザベスの家に仕えた。


 そしてそこから失った時間を取り戻すかのように二人は互いを求め、愛し合い、ついに結婚式を迎えた。


 結婚式会場の鐘が鳴り響く中、誓いの口づけをーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


バチン


「へ?」


 いきなり劇の会場の照明が切れた。魔道具なので、そう簡単にいきなり切れることはないはずなのだが・・・。



 一体何が起きたのか、いいところだったのにという思いをジャックが思た時であった。


(・・・!?)


 いきなり悪寒が走った。


 ジャックは慌てて席から飛びあがる。


ザススススススス!!


 何かが連続で先ほどジャックがいた席に刺さる音が聞こえた。


 着地したが、あたりが真っ暗にされていたのでよく見えない。


「シロ!!クロ!!」

「はい!!」

「了解なのじゃ!!」


 シロとクロの二人を呼び、素早く剣の姿になってもらって手元に構える。


 聖剣・魔剣の輝きによってあたりが少し照らされる。


 ジャックが見たのは、劇をしていた人たちからの様々な武器での攻撃だった・・・・・。


 





いきなりの襲撃に、あたりは混乱する。

ジャックは、自分をいきなり襲ってきた相手の姿が、上級生たちだとわかったのだが、どこか様子がおかしい。

しかし、彼らは本気でジャックを殺しに来ているかのように見えた・・・・。

次回に続く!!


・・・意外とここまではまともに劇を行っているんだよね。

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