閑話 月夜の夜に
本日2話目
なんか書きたくなった。
ある満月の夜・・・・。
「・・・・よし」
ジャックの部屋で、ジャックが寝たのを見計らってこっそりと部屋から出ていく影があった。
がしっ
「ん?」
「・・・・あなたもですか」
もう一人の影がつかみ、二人そろって外に出て、寮の屋上に行く。
月の明かりに照らされて見えた姿は・・・・シロとクロ。ジャックの聖剣・魔剣の二人である。
夜寝る時には剣の姿でじっとして寝ているのだが、今日満月がきれいな気がして、こっそり人の姿になって抜け出したのである。
二人は寮の屋上に着くと、その端っこの方に座って月を見上げた。
落ちたら普通の人間なら大けがものだが、彼女たちは聖剣・魔剣の姿に戻れば無傷なので、そのままその場所から満月を見る。
「綺麗ですよね・・・・」
「そうじゃな・・・・・」
聖剣と魔剣、相反する剣同士でも同じような感覚があるのであった。
「勇者様ともこうしてみたことがありました・・・」
「同じじゃな。魔王様と月を見たことがあるのじゃ」
ジャックの前の彼女たちの持ち主、勇者と魔王をそれぞれ思い出した。
ジャックと似てはいるが、全く違うその二人。
互いの持ち主としても、敵としてもお互いよく知っていた。
最後の戦いの時も、互いに全力を振り絞って、互いの敵にとどめを刺したもの同士。
持ち主の仇として見ることはできるのだが、別にそうは思わない。
だって、彼女たちは武器。使用してくれる人に従うだけ。
互いに仇の様なものでも、別に恨むわけではない。
そのため、彼女たちはそういった因縁とかはなく、仲良しなのである。
まあ、ジャックに所有される身になってから驚いたこととしては、
「それにしても・・・・互いに自立して動けるのは驚きましたよね」
「まったくじゃな」
何度も勇者と魔王が斬り合って、互いにその中心にいる武器なのに、お互いがこうして人の姿になれたことを知らなかったのであった。
・・・適正者たちが、水晶の儀で手に入れる武器。実はいつどこでどのようにして生まれたのかはわからない。
生まれたての時の事なんてこの二人は知らない。
気が付いたら、いつの間にか自分は扱われていた。そういった感じである。
普通に作られるような武器とは違い、なぜかモンスターに対しての有効打となる武器。
壊れたとしても、水晶に触れれば復活した状態でまた持ち主の元に戻る。
そして、その持ち主が転生した時はその持ち主を選んで顕現する。
それが、適正者の武器。
案外、同じように人の姿になって動ける武器もあるかもしれないが・・・・同じような存在は、まだ互いの事しか知らない。
それでも、今互いに思っていることは、今夜の月は綺麗だなという事だけであった。
「ここまで見事な満月は久しぶりですね」
「マスターと見れないのは残念じゃのう」
ジャックは現在熟睡中。
さすがに、ムリに起こすのもどうかと思って起こさなかったのである。
「昔の・・・勇者様のことが思い出されるようなそんな月ですね」
「まあ、魔王様の事を思い出せるのはいいのぅ」
互いに、前主の勇者と魔王の事を思い出す。
この二人、勇者と魔王の日記にもあるようによく迫っていた。
理由としては、武器でありながらも人の姿が取れるのが原因である。
人に近い感情・・・・恋心なども持っていたのだ。
なので、積極的にアピールしていた。
だが、結局は実ることはなかった・・・・・・。
「マスターは生まれ変わりみたいですけど・・・」
「いかんせん、マスターはマスター。同一の魂であって、同一人物ではないのじゃ・・」
生まれ変わったら、全くの別人。そういった感じがする。
マスターの事は好きだとも思えるが、元の持ち主とは全く違う。
それはいいことのようにも思え、悲しくも思えた。
そんな悲しみがあるものの、二人は武器。今の持ち主の剣。
「昔は昔、今は今」と割り切りたいところがある物の、いまだに忘れきれぬ勇者と魔王への想い。
この出口のないような想いに答えは出るのだろうか。
その答えをいえる者は誰もいない。
ただ、空に輝く満月だけが二人を照らすだけであった・・・・・。
おまけ話みたいな、そんな話。
迫りくる学園祭。
ご褒美をもらおうと、各自忙しくなってくる。
そんな中、迫りくる影・・・・
次回に続く!!
・・・・こういうちょっと話みたいなものをたまには書いてみたくなるんですよ。誰かの過去話とかたまにね。




