79話
現実逃避したくなる今日この頃。
翌日、休日のため学園はお休みなのだが、自主的に訓練する生徒のために各施設は解放されていた。
そんな中で、学園の茶室にてジャックはヨナと共に魔力の扱い方について習うことにしたのだが・・・・。
「なんで学園の校庭とかじゃなくて、茶室なの?」
茶室にて、ジャックは座禅の体制をとらされていた。
「ここの方が、音も静かで集中しやすいのん。普段は学園の茶道部が使っているらしいけど、今日はここを使わないことを聞いたので使っているのん」
確かに、普段はこの学園の茶道部が使用している。だが、今言った言葉の一部はヨナの嘘であった。
昨日の夜、精神系の魔法をこっそり使ってここの部屋を使う人たちにここを今日は開けるようにと誘導したのである。
精神系の魔法の使用は許可がない限り本来は使用禁止なのだが、バレない程度に弱めの物なので多分大丈夫のんとヨナは思っていた。
一応、ジャックを籠絡させて魔王崇拝集団の方に連れていきたいが、こういった約束は守ってあげようという良心もあった。
なので、まじめに取り組むつもりでもある。
ちなみに、この学園は適正者用の学校なのだが、運動系以外ならまじめな部活動なんかも作られているようであった。適正者の身体能力が原因で、運動系は常人以上になるからである。ジャックは学園長の訓練のせいで入れていないのだが。
「この座禅の体制は、はるか東の国発祥の物と言われていて、精神集中などがしやすいのん。心を冷静に保ち、自身を見つめ直す様にすれば自然と己の魔力を見ることができて、今以上にスムーズに魔力の操作ができるはずだのん」
東の国というと「ジポン」、つまりライバルであるミツの出身国だが、ここは利用できるものは利用するという信条で黙認することにしたのである。
「つまり、自分を見つめ直せってことか・・・」
「そうなのん。シロとクロもジャックと同じようにするのん。武器自身も同調すれば、より鮮明に、正確にできるはずなのん」
聖剣・魔剣の姿から人の姿になったシロとクロも座禅を組んだ。
素直に従っているのは、マスターであるジャックの協力になるとも言われているし、何よりも・・・
「昔、勇者様と同じようにしましたからねぇ・・」
「魔王様もこれにははまっていた時期があったのぅ・・・」
どうやら勇者も魔王もやっていた方法らしい。
効果が期待できるかもとジャックは思い、まじめに精神を手中させ始めるのであった。
その隣には、ヨナも座禅を組んでこちらも集中する。
だが、ただ集中しているのではない。
ジャックが自分に惹かれるように念じながら座禅をしているのであった。
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「・・・・まじめなようですわね」
物陰から、ジャックたちの様子をうかがう姿があった。
ルナである。
女の勘的なもので、どうにも嫌な予感がしたからこっそりと覗いてみたのだが今のところただ座禅しているだけの様なので異常が見られない。
「考え過ぎでしたのかしら・・・・?」
だが、やはり気になる。
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ルナと同様に、別の物陰からジャックたちの様子を見る者がいた。
「拙者の国のやり方ぜよではないか・・・」
ミツである。
こちらはヨナとは正反対の勇者崇拝集団からジャックを連れてくるように言われている。
ヨナが魔王崇拝集団側なのを知ってはいるが、正々堂々と籠絡したいのである。
参考までにと思い、敵側のやり方を見に来たのだが、自分の故郷のやり方なのが腹ただしく思った。
(しかし、飛び込んで邪魔するわけにもいかないぜよ・・・)
真面目にしている様子なので、邪魔しにくい。
悶々と機会をうかがうことにしたのであった。
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(マスターに視線を向けている人がいますね)
(ルナと・・・ミツとかいう転入生の気配じゃな)
隠れてジャック達を見ている視線に、シロとクロは気がついていた。
勇者と魔王に使われていた剣の二人は、この程度の気配は探知ができるのだ。
最近、ジャックに魔力を流されてきているのもあり、少しずつ昔の力を取り戻してきているのもあって、誰が視線を向けているのかまでわかるようになっていた。
ルナとミツは完全に気配を隠しているつもりだが、シロとクロにはもろバレであったのである。
(まあ、このまま黙っていたほうがよさそうですね)
(マスターも罪なお方じゃのぅ・・)
面白そうなので、このまま二人は黙っておくことにして、座禅に集中するのであった・・・。
隠れて様子をうかがうルナとミツ。
そのことに気が付いているのはシロとクロだけであった。
そんなことにも気が付いていないジャックとヨナは、魔力に関して特訓を進める。
次回に続く!!
・・・・よくよく考えたら、学園長も覗き見していそう。




