73話
事故処理
表彰式の最中に起きた襲撃事件は、三人の適正者が捕まったことでやっと終わった。
襲撃の裏にいた貴族たちは、三人の適正者たちの自白のもと、すぐにいた場所を取り押さえた。
一応、一部の貴族たちの中にはそれなりの能力を持つ者がいたため、執行猶予付きで領地を減らされたり、爵位を落とされたりしたが、首はつながった。
だが、主犯格であった貴族たちは社会的にも物理的にも切り落とされた。
ちなみに、あの三人の適正者たちは皇帝を狙ったやつらとして死刑を宣告されるかと思ったが、適正者としての待遇を落とす代わりに帝国内に留まることを許された。
適正者はモンスターが出てきた時に必要な存在。
帝国内にはほかにもいるのだが、この三人実力はそれなりにあるからだそうだ。
反対する人もいたが、皇帝は笑ってこう答えた。
「儂をここまで追いつめようとしたその力は惜しいからな。今度同じようなことをしたら、容赦なく儂自らの手で首をもぐがな」
「切る」ではなく「もぐ」という表現が怖ろしかった。
皇帝としては、三人は金で目が眩んで殺そうとしてきたのだが、今は皇帝の采配の上で生かされているようなものだと心の中に刻み込みたかったらしい。
三人ともこの皇帝の心に打たれたのか、もう一生忠誠を誓いますとか言う契約まで皇帝としてきた。
すごい人は、心もすごい。
ここまでの作業がものすごく劇的に行われ、皇帝のその手腕は国内外で高く評価された。
「ここまですごい人っているんですね~」
「なんというか、超人の類じゃのぅ」
聖剣・魔剣であるシロとクロもこうコメントしていたし、皇帝のすごさを思い知らされたかのような感じだった。
なお、ジャックたちは表彰式が終わった次の日には王国へ戻るつもりだったが、いろいろとごたごたしてしばらくギアス城に滞在した。
表彰式が中断されたので、すぐにもう一度行われたけど今回の襲撃での功労も追加で称えられたのである。
そんなこんなで1週間ほどたち、ようやくジャックは王国へ戻れることになった。
「これで、ジャック殿ともさらばか」
「また会いに行ける時は会いに行きますよ」
皇帝ともずいぶん仲良くなれたので、次からギアス城出入り自由になる許可ももらえたのである。
これで立場さえ同じならば、親友とも言えそうだが・・・・。
「お父様、わたくしも学校がもうそろそろなので王国に戻りますわ」
「うむ、精進してくるがよい」
というわけで、ジャックたちは帝国をあとにしたのであった・・・・・。
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「・・・しかし、なかなかいい若者であった」
ジャックたちが乗った馬車が見えなくなると、皇帝は自然とつぶやいた。
ジャックの状況判断応力、戦闘能力などをこの目で確かめることができ、その人間性もしっかりと確かめた。
「もし、娘があの者と結婚したいといった時、儂は許してやろう。ジャック、お前は儂の友としても、ルナの思いを寄せる相手としても合格だ。もし、帝国の未来を切り開くならば、あのようなものが儂は欲しい・・・」
皇帝からしても、ジャックは帝国に欲しいと思える人材であった。
今回の事で、帝国の名誉適正者として迎え入れたくもなったが、何せジャックはまだ王国にいる身。
もし、王国がいやになって帝国に来たら、その時には大いに迎え居てやろうと皇帝は思った。
そして、ルナが思いを寄せる相手ならば、父親としてあのジャックならば十分合格だとも思った。
「聖剣・魔剣所持者としてではなく、一人の男として儂はお前を見る。もし、何かあったら力を貸そう我が友よ!!」
皇帝の叫び声はジャックには聞こえることはなかったが、その心は聞こえそうであった・・・・。
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一方、とある村にて再度集会が行われていた。
「・・・ようやく選考が終わったか」
毎度おなじみ魔王を崇拝する集団である。
この夏の期間、時間をかけてやっとジャックを魔王としてこちらに引き入れることができそうな人物を選考し終えたのだ。
なお、勇者を崇拝している集団も同時に同じように進行していた。
「この者が、今回選ばれたものです」
黒フードの男に連れられてきたのは、少々小柄な少女であった。
「ふむ、まな板でもなくスタイルがいい・・・が、少々小柄すぎんか?」
「大丈夫でしょう。情報によると、このくらいの身長が異性に好かれるらしいですから」
「どこの情報だそれは」
黒フードの男のその発言に周りは少々不安になった。
「大丈夫ですのん。必ず、この私がその目的の殿方を籠絡してこちらに連れてきて見せます・・・のん」
「本当に大丈夫か?」
かなり不安になった雰囲気がその場をしばらく漂うのであった・・・・。
次回から新章




