71話
皇帝って適正者じゃないんだけど・・・めっちゃ強い。
本日2つ目です。
「むろふぃしゃぁぁぁぁぁっ!!」
「どわぁぁぁ!!」
「ひぇぇぇ!!」
レント皇帝が大剣を振るうたびに、襲い掛かってきた人たちが薙ぎ払われていく。
「・・・適正者でもないのにすごい人だな」
「デュラハン並みのすごさですよね・・・」
「適正者ほどの力ではないとはいえ、人間の中では最強クラスじゃないかのぅ?」
表彰式の最中に襲ってきた人たちをジャックたちは無力化しているのだが、適正者でもない皇帝が次々と人を薙ぎ払っていく様は圧巻であった。
もともと、戦場で敵なしともいわれる皇帝。過去には適正者と本気での戦いに勝利したという伝説もあるが、この様子だと嘘ではなさそうであった。
「というか、ロイスとの使い方が違うな・・・」
大剣はその重量を利用して相手をたたききったりするのだが、皇帝はどうやらわざと切れない部分で殴るかのように大剣を利用していた。
適正者だったらもっと恐ろしい人になっていた可能性があり、ちょっと想像したら怖くなった。
「殴るようにして大剣を扱っているけど・・・この親にしてこの子ありと言う言葉の意味を理解したような気がするよ」
「同感ですね」
「同感じゃな」
ルナも現在広場で暴れて襲い掛かって来ている人たちをガントレットでぼっこぼこにしているのだが、その様子が皇帝そっくりである。
この親子怖いな・・・。
なんか寒気がしたジャックであった。
とにもかくにも、まずはこの混乱を収めるためにジャックたちは動き続けた。
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「だいぶ歳だと思うが、まだまだ皇帝の力は健在か・・・」
「だが、これだけの金に目が眩んだ者たちを倒すとさすがに疲れが見え始めたようだ」
「本命のやつらを行かせろ。今なら確実に皇帝の命をとれるはずだ」
大騒ぎになっている広場を遠くから観察しながら、今回の騒動を起こした首謀者の貴族たちは、皇帝を殺すための命令をその場で下した・・・
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「ジャック!!そっちはどれだけの人数がいましたですの!」
「大体23人ほどかな?ルナの方は?」
「21人ほどですわ!!」
となると、かなり大掛かりな襲撃のようだが・・・何か引っかかるな。
ジャックはふと違和感を覚えた。
ここまでの大人数、皇帝を狙った誰かによるものだとは理解できる。
だが、それにしてはやけにお粗末な奴らが多い。
もしかすると、適当なごろつきとかその辺を金とかで買収して・・・
「・・・・陽動か!?」
普段、逃げるための作戦とかを考えることを得意とするジャック。その頭で今回の襲撃の目的が分かった。
「今皇帝はどこに!!」
「あっちの方で襲ってきている人たちをぶっ飛ばしているようですけど」
「急いで向かうぞ!!」
ジャックは聖剣・魔剣をつかみ直して皇帝の方へと急いだ。
これだけの人数だが、全員がそこそこ程度のごろつきだ。
皇帝を殺すとか言っていたが、この実力的には到底無理だろう。というか、普通無理だろう。
だが、皇帝はあれだけの強さであっても適正者ではない。
適正者ではないということは身体能力が高くても適正者に及ばない。
と、いう事は・・・・
ジャックは己の予想が当たっている可能性に嫌な予感がした。
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「ふん!!よくこの実力で儂を殺せるとか言ったな!!」
ダン!!と音を立てて大剣を地面に突き刺した皇帝。
その足元には死屍累々の襲ってきたやつらが転がっていた。
「・・・しかし、なぜこのようなときに、こやつらが・・」
皇帝はふと考える。
この騒ぎの原因は十中八九この間ルナの乗った馬車を襲おうとしたやつらの背後にいる自分が邪魔だと考える貴族達であろう。
だが、それにしてはずいぶんと粗末な奴らしかいなかったような気がするのだ。
(ここまでぶっ倒すのに体力を消耗した儂を狙ってか?だが、完全に儂を倒せるものは・・・)
と、ここで皇帝もジャックと同じような結論に達した。
「まさか!?」
皇帝が理解した瞬間であった。
いきなりどこからかとげとげの鉄球のようなものが飛んできた。
持ち前の勘でかろうじて皇帝は避ける。
「ちっ」
その鉄球の持ち主は、鎖を引き戻しながら舌打ちをした。
持ち主の姿は、若い男性のようだが、腕の筋肉が発達しており、逆三角形のような体型をしていた。
「我が帝国の適正者・・・・星球武器を扱うゼノゲアル=パイソン!!」
「覚えていてくれて光栄だね皇帝陛下」
ゼノゲアルと呼ばれた男性は、星球武器の先にある鉄球を頭上で振り回し始めた。
「だが、俺だけじゃないぜい!!」
「あっしらもいるんですよ」
「ぬっふっふっふっふ」
その背後からさらに二人が現れた。
一人が手に持っているのは杖のようだが、どぎつい紅いローブを着たおばさんと言っていいような女性。
もう一人は鋭い槍を構えている鎧の騎士の様な恰好をしたやつだった。
「いばらの杖を扱うバサシミル=ケツウラ!!神速の槍使いのテンダー=バン!!お前らも適正者の!!」
三人とも、この国に属する適正者たちである。
「皇帝陛下さんよう、あの大人数を相手して疲れてきている頃間と思ってな」
「あっしらが本命として」
「殺しに来たのでザマス!!」
どうして、仕えるべき皇帝を裏切ったのか。
理由としてはすぐにわかった。金で簡単に買収されたのだ。
「これで皇帝陛下を殺してしまっても、俺らを雇ったやつらによって罪にはならない」
「そして、あっしらは逆に重要な地位に着けるんでやんすよ」
「と言うわけで、皇帝を殺しにきたのでザマス!!」
皇帝は適正者ではない。
適正者の身体能力は適正者でない物に比べてはるかに上である。
モンスターを相手にできるだけの力を持つ・・・それが適正者なのだから。
「と言うわけで、俺ら全員の攻撃を喰らって!!」
「~~~~(詠唱中)」
「死ぬでやんすー!!」
「『火炎蜥蜴の一撃』」
鉄球、トカゲの形をした炎、槍が皇帝に襲い掛かろうとした。
皇帝は大剣で受け止めようとしたが、相手の方が早い。
「「「ここでおわりだぁぁあぁぁ!!」」」
轟音が鳴り響き、物凄い煙が上がる。
「やったか?」
「多分でやんす」
「これを喰らっていくら皇帝でも無事でいられるわけがないザマス」
三人は、今の攻撃で確実に皇帝を仕留めたと思っていた。特に、槍で直接攻撃していたテンダーは感触があった。
煙がはれていき、皇帝の死体が転がっているだろうと思った時だった。
「「「・・・何!?」」」
三人とも、目の前の状況に目を疑った。
皇帝を今の三人の同時攻撃で仕留めたと思った。
しかし、そこにいたのは・・・・
「ぎ、ぎりぎりセーフ・・・・」
「ジャックの予想が当たりましたわね」
槍の先を片方のガントレットで受け止め、鉄球をもう片方のガントレットで受け止めているルナの姿と、聖剣・魔剣で魔法を防いだジャックの姿がそこにあった・・・・。
適正者たちの攻撃を防いだジャックたち。
適正者3名に対し、こちらは2名と適正者ではない1名と言う状況だがジャックたちは戦いを挑む。
果たして、どのように対応していくのか!!
次回に続く!!
・・・・星球武器って聞くと、白い悪魔が使用した武器をなぜか連想した。同じ種類の武器になるんだっけ?
追加注意事項)鎖付きなのは「フレイル」という名称らしいですが、作者自身のイメージしやすさからしてこのままの名称で通します。コメントして教えてくれた方々、ありがとうございました。




