68話
どう乗り切るのか?
「お父様・・・・?」
ルナのつぶやきに、ジャックは聞き間違いかと一瞬思った。
先ほど謎の部屋に一緒にいた男性、この人がルナのお父さん・・・・って、ことは皇帝陛下!?
(なんでそんな人があの部屋にいたんだよ!!)
みると、物凄い冷や汗をかいているように見えた。
だが、この人が皇帝で、もしあの部屋の持ち主だとしたらいろいろ納得いく点がある。
まず、そもそもこのギアス城にあんな仕掛けを施していることだ。
城はこの国の皇帝の所有物でもある。
そんなものに細工を施せるとしたら皇帝しかいない。
それに、あの部屋に合ったものにも納得だ。
あの絵画や、品々、どれも皇帝の子供に関するものばかりであった。
皇帝の子供の持ち物のようなものもあり、あれだけ収集できるとすればその成長を見てきた皇帝にしかできない。
それに、よくよく考えると今脱出できた通路も変である。
まるで、タイミングを見計らって出したかのような・・・・。
この男性が皇帝陛下だとしたら納得がいくが・・・・あの部屋はないでしょとか、変態でしょとかいった自分のつぶやきを思い出した。
その瞬間、ジャックの背中には冷たい汗が流れた。
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(ま、まずい!!ひっじょーにまずい!!)
レント=ギアス最大のピンチを味わっていた。
まさかルナに鉢合わせしようとは思わなかったのである。
このまま知らぬふりをして逃亡したくとも、逃げるタイミングを逃してしまった。
皇帝としての威厳も冷静さもどこへやら。今、レント皇帝はかなり焦っていた。
(こ、このまま娘にあの部屋の存在もばれてしまったら・・・・!!)
非常にまずい事態。
もはや、どうすることもできないかと皇帝が思った時であった。
「い、いや実はね、ちょっと眠れなくて、歩いていたら偶々ここの廊下で皇帝陛下にお会いしただけなんだよ。ねぇ皇帝陛下?」
急ににジャックがそう言いだした。
ここで返事しなければまずいかもしれない。
皇帝はすぐに返事を切り返すことにした。
「あ、ああ。こちらも少し思うところがって出歩いていたのだが、偶然出会ったのだよ」
「そうなのですか・・・?」
ルナがどこか疑うような表情をしたのだが、納得したのかそのままその場から去った。
ジャックと皇帝は、両方とも安堵の息を吐いたのであった。
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「とりあえず皇帝陛下、先ほどの無礼をお許しください」
「いや、こちらも黙っていたことは謝るぞ」
とにもかくにも、互いに違う考えをしていたが、今のピンチを乗り切ったことによりうやむやにできていた。
そして、互いに話し合って確認しあい、ジャックはあの部屋が皇帝の隠し部屋だと理解したが、絶対しゃべらないことを約束した。
「先ほどの部屋の中での失言を聞かなかったことにしてくれるのなら」
「ああ、それでいいだろう。こちらとしても、助かったからな」
眼がさえてしまったので、とりあえずは皇帝陛下の自室へとジャックは案内された。
「しかし・・君のようなのが聖剣・魔剣所持者なのは驚くな」
「そうなのですか?」
「ああ、この帝国でも勇者と魔王の話はあるからな」
そのあとは、互いにいろいろと盛り上がり、日が昇って来た時には友人のような関係になってしまっていたのであった。
・・・・・なお、部屋に戻った際になんで自分たちを置いて何処かに行っていたのかと言うことをシロとクロにジャックが説教されたことは言うまでもない。
・・・校則でつねに携帯しないといけないのをジャックは忘れていたからであった。
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昼の職務の合間、皇帝はジャックについて思いを巡らせていた。
(娘に秘密がばれなくて済んだが・・・・あのジャックと言う少年、中々の人物だ)
一晩中の話で、皇帝のジャックに対する評価は上がっていたのであった。
・・・・あれ?書いていて気が付いたけど皇帝のジャックに対する評価が上がったということは・・・・。




