59話
サイクロプスって巨人みたいなイメージあったから某有名なセリフとか言わせた方がよかったかな?
「・・・何?サイクロプスだと?」
「はっ、深夜ごろにサイクロプスが5体ほど出現。第3皇女含め、その他4名の適正者たちによって撃沈したのを確認いたしました」
ギアス帝国にて、レント皇帝は定期的な第3皇女ルナに関する報告を聞いていた。
表向きは、今の帝国内の情勢からルナを狙う輩が出るのではないかと言う監視のため。
本音は娘がものすごく心配なだけのものだが、今朝届きたての報告によると、真夜中にサイクロプスの群れにルナたちが滞在していた村にサイクロプスたちが襲撃してきたという話だった。
内心物凄く不安になりながらも、表情には一切出さずその報告を聞き、討伐できたと聞いた途端に安堵の息を危うくこの場にいる大臣たちなどの前で吐きかけた。
「ふむ・・・してどのようにだ」
どうやって娘たちが倒したのか皇帝は気になった。
「それは・・・」
「なるほど、目くらましでひるませてから一斉に攻撃か・・・」
「報告によると、目くらましに使用した光源は聖剣でだそうです」
「・・・・聖剣で、か?」
「聖剣で、です」
さしもの皇帝も、かつて勇者が使ったと言われている聖剣を、まさか目くらましのための光源に利用するとは予測ができなかった。
その場の雰囲気が微妙な雰囲気に変わる。
「・・・・結構奇想天外な使い方だな。なかなか面白いではないか」
「そのように使おうなどとする人は絶対いないでしょうからね」
とりあえず報告を聞き終わり、引き続き監視しておくように命令を下した後、皇帝は自室の隠し部屋にこもった。
「・・・・娘がサイクロプスを倒したのはうれしいが、その現場に居合わせられなかったのは残念だ!!」
だんっ!!と床をたたいて悔しがる皇帝。
娘が活躍してそうな姿を見たかったが、見れなかったのが非常に悔しいのである。
もし、その場に居合わせていられたのならば娘の戦う姿をしっかりと目に焼き付けたかった。
うぉぉぉぉぉぉん!!と、悔しがって数分後、皇帝は落ち着きを取り戻した。
「それにしても、聖剣を光源にするとは・・・なかなか奇想天外な発想をする男だな、ジャックとやらは。戦闘に関しての作戦の立て方、聖剣・魔剣所持の適正者。・・・・ぜひとも帝国に引き込みたいが・・・・」
今度行う表彰式の際にジャックを勧誘でもしてみたいと思う皇帝だったが、報告の点で気になる点があった。
娘がどうやら恋慕している相手らしいという報告である。
どうやらデュラハンの時に惚れているらしいという報告があったが・・・・。
「このままもし彼を帝国に引き入れた場合、娘がこれ幸いとばかりに留学を止めて帝国に戻ってくるかもしれんが彼と付き合おうとしたりするかもしれん。かといって、このまま王国に留学していたら彼の方からと言う可能性が・・・・」
娘を思う父親としては、恋心があるのはいいことだと思う反面、どこか手放したくないような気持もあるのだ。
「うううむ、できればこのジャックとかいう男を我が目でしっかりと確かめたいが・・・・表彰式の時ぐらいにしか生で見れぬだろうし・・・・」
皇帝は部屋の中で悩み続けるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふわぁぁぁ、寝不足だよ・・・」
「昨夜はモンスターが出ましたからね」
「妾たちも寝不足じゃよ」
サイクロプスたちを倒した翌日の昼、両親の農作業を手伝っていたジャックはあくびをした。
今日は単なる雑草取りである。シロとクロの二人は母さんからもらった帽子をかぶっていたが似合っていた。
昨夜、サイクロプスたちを倒した後に村の人たちを呼び、モンスターは倒したという報告をきちんとして、その後にサイクロプスたちの死体をどうするのかという話もした。
基本、モンスターは人々に危害を加える存在である。
だが、倒せばかなりいい素材が手にはいる存在でもある。
サイクロプスの場合、その棍棒は細かくして薪にしたりできるのだ。
だが、残る部分は死体である。
腐って悪臭を出したりして、何かしらの病の原因ともなる可能性がある。
そのため、棍棒を回収した後は着火して火葬したのであった。
残った灰は畑のいい肥料となるであろう。
と、サイクロプスに関してわかったことなのだが、どうやら村に来る前に誰かを食べていたらしく、燃やした後にその腹の中に人骨が出たのである。
サイクロプスがやってきた道の途中には博打好きのゲンさんが着ていたという衣服の破片が血にまみれた状態で見つかったらしく、おそらくその人であろうということになった。
モンスターを発見した時には、すでに人が犠牲になっていることもあるが・・・
借金ばかりをして奥さんに叱られていて、、村の皆から金を貸してもらおうとしたり、勝手に何かを盗んで売ったりして村の皆から袋叩きにあわされていたりしていたゲンさんだったようだけど人の命がすでに奪われていたっていうのはやっぱり悲しいよな・・・・・ろくでもないような人だったようだけど。
「にしてもマスター、魔力を流して私たちを目くらましに使用するなんて発想は予想外ですよ」
「流石に、魔王様と共に幾度となく勇者と戦ってきた妾とて、あのような聖剣の使い方は初めて見たのじゃ」
どことなくシロとクロに二人の声が呆れているように感じ取れた。
「普段からお前ら剣の姿の時から発光しているじゃん。それに、クラーケンの時に魔力を流されて強い輝きを放ったと言っていたしな。練習して一瞬だけできるようになったけど、暗闇なら結構な武器となるよなそれ」
「私たちが発光しているのは剣の特性上なんですけど・・」
「魔力で輝きと攻撃力が一時的に全盛期の時に戻るのじゃが、そんな一瞬の時をあのようにして使うのはのぅ」
ジャックの言葉に、やはり呆れたような声をあげるシロとクロであった。
「そういえば、帝国の表彰式の1週間前には村から出て帝国に向かうからな」
「馬車で確か5日ほどかかるんでしたっけ?」
ちょっと話題を変えて今度の表彰式の話にジャックは変えた。
「ああ、ルナが本来は皇帝の一族しか乗れない馬車に特別に乗せてくれるようだし一緒にと言う事らしい」
「他の皆はまだここに残るようじゃがのぅ」
ロイスたちは帝国へと向かわずに、夏休みが終わるまでここに滞在するようである。
表彰式があるので、ジャックとルナはいったん帝国へ向かうのだ。なお、首都に向かわずに直接ここまで迎えが来るようだが・・・こうして考えると、改めてルナって帝国の皇女なんだなと思うのである。
(・・・最近忘れがちなんて言えないしな)
「それってつまり、マスターはルナと二人っきりで向かうことになるのでは?」
「いや、いくらルナが適正者だと言っても護衛の人たちも一緒らしいからな。流石に男女だけってのはきつい」
それだったら普通の帝国行きの便に乗るよ。
「まあ、交通費とかがかからなくていいじゃん?」
「・・・まあ、安全じゃろうな」
「護衛の人がいますから盗賊とかには襲われないでしょうし、マスターたちは適正者ですからモンスターが出ても大丈夫でしょうしね」
ぶっちゃけ安全に行けるってのが一番大きいかな。
とにもかくにも、ジャックたちはそれまで村に滞在し続けるのであった。
帝国へ向かうことにしたジャックとルナ。
護衛がいるので二人っきりの旅にはならないとは思うが、年頃の男女が馬車の中と言うことに不安を覚える皇帝。
その道中に待ち受ける出来事とは?
次回に続く!!
聖剣の扱い方が本来とは違う用途になっているけど・・・・魔剣も似たようなこと出来るかな?
 




