54話
クラーケンの時にはイマイチだったので、ちょっとサービス回
ルナはカレンの家に泊まることにした。
理由としては、服である。
一応替えの服などは持ってきてはいるのだが、もし無くなってしまった時などに借りる時にカレンの服のサイズが一番合うのだ。
リンの服だと一部が合わないからである。
「ここで泊めてくれることにありがとうですわ」
「あらあら、カレンの友達はいい子ね」
ルナはカレンの母に挨拶していた。
「お母さん、部屋はどこに?」
「客間よ」
と言うわけで、客間に布団が敷かれる。
風呂に入らせてもらおうとしたが、どうやらこの家には風呂がないらしく村の共同風呂に入ることにした。
風呂のあるなしの理由としては、共同風呂があるからなくてもいいじゃんと言う人と、一人でリラックスして入りたいという人がいるからである。
ちなみに、ジャックとリンの家にはあり、カレンとロイスの家にはないそうである。
なので、共同風呂へ行くとジャックは自宅の風呂なのでいないはずだが・・・・。
「あれ?カレンとルナか」
「ジャック?」
ばったりと共同風呂の入り口でルナたちはジャックと鉢合わせをした。シロとクロの二人も人の姿になってついてきている。
「ジャックの家、風呂あったよね?」
「それがさ、母さんが言うには風呂がちょっとおかしいから今日はそっちに入ってらっしゃいと」
ジャックが自宅のふろに入ろうとした時、ジャックの母ランが風呂の調子がおかしいと言ったのでここに来たのである。
風呂は昔ながらの薪を入れて火で沸かすものなのだが、どうやら風呂に謎のひびが入ったらしく、お湯漏れをしそうなので、修理を頼むと言って今日はこっちに入ることになったのだ。
村の風呂修理職人がいるので、1日で簡単に直るのだが。
「まあ、たまには村の共同風呂もいいけどな」
「そうですの?」
ルナとしては個人で入るようなものが好きである。
「ここ結構空いているときがあるからな。広々と使えるもいいもんだよ」
「ああ、そういう考え方もありますわね」
「・・・ジャックの母と父は?」
「ん?母さんたちは今日は入らなくてもいいからとか言っていたけど・・・」
「・・・」
カレンはここでふと思う。ジャックの母親の方は昔から積極的に自ら率先して動くときがある。
あの時、ルナはジャックの家では平静を装っているかのように見えたが、好意を持っているのは自分も経験があるから見ているとわかる。
もしかすると、風呂にひびが入ったのって・・・。
なんとなく、ジャックの母ランの行動の理由がカレンは読めたような気がした。
まあ、面白そうなのでカレンは黙っておくことにした。まだ推測にしか過ぎないし。
「ふわぁぁぁ、広いですわね」
「村の皆が入るから広く作られている」
ルナとカレンが共同風呂に入ると、ルナの予想よりもゆったりとした作りになっていた。
「ここがマスターの村の共同風呂ですか」
「なかなかのものじゃな」
シロとクロも続けて入ってくる。
二人とも剣の姿の時に磨いてもらえれば、人の姿になったときも風呂に入ったときと同じ状態になるのだが、風呂に入ること自体を楽しんでいるようである。上がった後は剣の姿に戻って、拭いてもらえれば乾かしたのと同じ状態になるというから結構楽なのだ。
「それにしても、ちょっと熱めですわね」
「ここの村の人の大半が熱いのを好きらしい」
村の共同風呂は皆で管理をしている。
そのため、風呂の温度は皆で会議した結果今に至るらしいのだ。
「マスターの方のお湯加減はいかがですかー」
シロが男湯と女湯を仕切る壁の向こう側に向かって話す。
「ちょうどいいよー」
ジャックの返事がきた。
「合宿所の風呂のしきりとはちょっと違いますわね」
合宿所にあった風呂は、適正者用の除き防止策が施されているのだが、この村には適正者があまりいないため対策用にはなっていないのだ。
そのため防音にもなっておらず、互いの音が筒抜けなのだ。
「ちょっと恥ずかしく感じますわね・・・」
「村の男たち、覗こうとしたりするけど失敗する」
「どういうことですか?」
もちろん、覗きがこの村ではゼロではない。覗きをしようとする奴らは当然いる。
だが、覗き見をするにはこのしきりを越えるか穴をあけねばならない。
そのため、対策がしやすくてこの仕切りには鉄板が仕込まれており、さらには鼠返しのようなものが上の方についているのだ。
成功例としてはしきりを飛び越えたりすることだけど、その時は全員でフルボッコにした上に裸で逆さにして村のさらし者にしたのであった。
「なるほど・・・そのような対策があるのですわね」
「むしろ、その人のその後の方が気になりますね・・」
ルナは感心し、シロはそっちの方が気になった。
「・・・にしても、マスター!!今そっちはマスターだけかのぅ?」
クロが何やら怪しい笑みを浮かべた。
「んー?そのようだけどー?」
ジャックの方は今はジャック一人だけが入っている状態である。
「なるほどなるほど・・」
クロの瞳が悪戯を思いついたかのように光ったのを見て、ルナたちは何かいやーな予感がした。
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「クロのやつ、いったい何を質問してきているんだ?」
ジャックは今の質問の意図が分からなかった。
今のところ、男湯に入っているのはジャックだけのようである。
村の男たちは深夜とかもっと遅い時間帯に入ってくるようで、今の時間帯はかなり空いているのだ。
「くっくっくっく、マスター日頃の思いを込めてちょっとプレゼントなのじゃ!」
「ひゃぁん!?」
「!?」
クロの笑い声が聞こえたかと思うと、なにか女の子っぽいような声が聞こえてどきっとした。
「くっくっく」
「ちょ、クロさん、なにを・・・ひゃん!!」
何やらクロが女湯の方で何かやっているようである。
もともとクロは魔剣であるが、その本性としては悪戯好きなところもあるようで。
実は風呂に入りに行こうとした時、ちょっとジャックの母ランに言われていた。
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『そうそうクロちゃん』
『ん?なんじゃ?』
『お風呂にルナちゃんたちがいたらちょっといたずらしてジャックに聞こえるようにしてくれる?』
理由を聞くと、ジャックは昔から鈍感なところがあるから、せっかくなので少し意識させてあげたいとかいうらしい。
『これも母の愛。だからね?』
『ふむ、わかったのじゃ!』
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というわけで、もともとの本性も合わさって今に至る。
「シロ、お主の方はこれで勇者をたぶらかそうとしたかのぅ」
「やめっ、ちょっと、ん」
「うぉぉぉぉい!!何やってんの!?」
ジャックは慌ててクロを止めようとするが、向こう側。
止めようがない。
「ほうほう、カレンは見た目いじ、」
「やめるのですわ‼︎」
ゴッ
なにやらげんこつの音が聞こえた。
どうやらルナがくらわせたもよう。
その後は、静かになった・・・。
「で、気絶中か」
「まったく、困ったものですわ」
風呂から上がり、ちょっと先ほどので顔が赤くなるのでまともに見れなかったが、ルナのげんこつがよっぽど効いたのか、クロは目を回したまま気絶していたのであった。
剣の姿に戻ってくれないとこのまま持っていく羽目になるんだが・・・。
その後、起きたクロに対してジャックたちは説教したのであった。
 




