51話
ちょっと別視点
ジャックたちが改めて合宿最終日にできなかった遊びを楽しんでいた頃、ギアス帝国にて着々と新たな戦の用意が行われていた。ついでに、第3皇女を救ったとしてのジャックの表彰式の準備もされている。
今度は、海を渡った向こうにある国が狙いである。
近年、帝国は戦争を繰り返すようになっていた。
帝国では様々な魔道具や機械などが開発され、人々の生活が豊かになるようにされてきた。
工場の建設・稼働などで働ける人々を増やし、農村部では家の跡継ぎとなるような長男をさけて次男などの徴兵などを行う代わりに農作業の器具の改良や肥料の開発をして食料生産を活発化させた。
商業に関しては、戦争で勝って取り込んだ国々と貿易を積極的に行い、それぞれの特産品などを売買して、一部を免税などにして活性化させて黒字をますます増やしていった。
更に、交通のために必要な道路の整備や、犯罪を取り締まるための法整備などが行われて、現皇帝は歴代最高皇帝とまで言われていた。
だが一方、その過程で兵器に応用できるものは兵器にして、他国に戦争を仕掛けて勝利し、資源などを譲り渡すようにして、それを元に開発という繰り返しも行われていた。そのため、他の国々からは戦争皇帝とも呼ばれていた。
そんな中、帝国にとある情報が入ってきた。
隣国の友好条約を結んでいるアールスライド王国にて、適正者の中に聖剣・魔剣所持者が現れたというものである。
聖剣・魔剣共に強力な武器としての話もあり、皇帝はその情報について調べさせた。
「なるほど・・・力は落ちていたようだが、聖剣・魔剣で間違いがないか」
「さらに最新情報ですが、昨日明け方頃クラーケンの襲撃にあった際に撃退してもいるそうです」
「また娘が助けられたか・・・今度行う表彰式の際に、それも加えよう。各自に連絡をしておいてくれ」
現皇帝、レント=ギアスはそう命令を下した。
歴戦の猛者のようにがっしりと構え、威厳溢れる姿。
皇帝は適正者ではないのだが、これまでモンスターとも本気で戦って勝ったという伝説もある。種族は人間なのだが、魔族の中でも酒に強いドワーフと鬼人と飲み比べして勝利したという話もある。
さらに、戦にて自ら先陣をきって敵兵をなぎ払い、適正者が出てきたとしても勇猛果敢に攻め倒し、いくつもの勝利をもぎ取ってきたのだ。
今は病に侵されているという話もあるが、報告をしていた男から見ればまだまだ現役の働き盛りで超健康そうに見えた。
命令を受けた男の人が去った後、皇帝は少し残っていた仕事を片付けて他の大臣たちに自室に戻ると伝え、自分の部屋へと戻った。
そして、自室にある額縁を動かし、隠し部屋に入って明かりをつけた。
「・・・よかった、娘は無事だったか!!」
壁に飾ってある大きく描かれた第3皇女の絵を見ながら皇帝は叫んだ。
よく見ると、部屋の中にはほかにも第1,2皇女の絵や、その他娘息子に関するものばかりが飾られていた。
そう、皇帝の病気とは・・・・重度の親バカである。
娘や息子たちが可愛くて仕方がないのだが、皇帝である以上その厳格な姿のイメージを崩したくなく、自分の部屋の隠し部屋にてこうして娘についての報告などを楽しんだりしているのだ。
ルナが王国の学園に留学したいといった時も、その実力を伸ばすならいいと言った建前、本音は娘だからオッケーでーす!!と叫びたいほどであった。
なお、皇帝が重度の親バカなのを知っているのは一部関係者のみである。
その姿を見て消されたものも少なくはない。
「しかし、娘がクラーケンに襲われたというのに儂はその情報を遅れて聞くことになるとは!!このレント一生の不覚!!」
天を仰いで号泣する皇帝。
ルナがクラーケンに危うくやられかけたという連絡を聞いたときは、心臓がものすごくバクバクして不安になったが、こらえて報告を聞き続けて、助かったという話を聞いてほっとしたのである。
「聖剣・魔剣所持者にまた娘を助けられようとは・・・」
ここでジャックについての情報を思い出す。
デュラハンの時もその連絡を聞いた。
「今回もか・・・・だが!!まだまだ娘を嫁にはやれんからなぁぁぁぁ!!」
そう叫ぶ皇帝であった・・・・・。なお、一応防音構造である。
親バカな皇帝の話はさておき、次回はジャックたちは夏休みの間に帰郷する!!
ルナもついていき、5人+1羽+二剣で向かう!
ついでに、娘が表彰式まで戻らないと知った皇帝の行動とは!!
次回に続く!!
・・・いやホントはね、もっとまじめな人にしたかったんですよ?でもね、なーんか足りないような気がして・・・。




