閑話 とある第1皇子
本編で、出番が最後までなかった人を、この後日談というか閑話に出すことにしました。
正直言って忘れていた。いや本当にごめんよ・・・・
・・・・私の名前はグランドロッジ=ギアス。
ギアス帝国の第1皇子であった者であり、今日この日から私は皇子ではなくなり、皇帝になる男だ。
だが、この皇帝に至る前にあったちょっとした堕落した者の事を話そう。
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「レント=ギアス皇帝陛下が、もう間もなく退位するらしい」
その噂は帝国中に広がり、国民たちの間で流れていた。
そして、そのことは本当なのだとこの私は理解していた。
というのも、先日私は留学先から父上であるレント皇帝陛下に呼び戻されることになり、その理由というのが父上が退位し、その皇帝の位を私へ譲るためだそうだ。
ただ、ここで少々厄介になったのは・・・・・私の弟であり、第2皇子であるヘイブン=ギアスである。
長男である私は帝位継承権が第1位であるのだが、この弟がどうやらその帝位継承権を狙って、私の命を狙っているらしいので警戒するようにと父上の手紙にわざわざ書かれていたのである。
昔は優しい弟であったが・・・・私とは違うところに留学し、この帝国を支えるために学ぶうちに、どうも欲望が増加してしまったそうなのだ。
だが、はっきりとした証拠があるわけではなく、このことは内緒にして悟られぬように王城で弟と久しぶりに会うことになってしまった。
「おおぅ!!グランドロッジ兄上久し振りっふね!!」
「・・・・・ヘイブンだよな?」
王城にて、久し振りにあった弟は、なんというか・・・その、まるで肉団子のように丸々肥えていた。
お前、ベジタリアンだっただろ・・・・・何でそんなに太るんだ?
「ヘイブン、お前ずいぶん見ないうちに・・・大きくなったな」
かける言葉が見つからず、私は言葉をごまかした。
「ぐっふっふっふ!!留学先でお菓子をちょっと食べすぎたんでふよ。まあ、これでも健康そのもので、特に問題はないっふよ!!」
ぐっと指を立て、物凄く細くなった目だがにこやかに笑うヘイブン。
うん、私の命を狙うかどうかという以前に、この弟が先にあの世に逝きそうで心配になったぞ。
「しかし・・・父上からの呼び出しで、しかも皇帝の位を譲るという内容は驚いたな」
「そうでふねー、僕ちんの方にはグランドロッジ兄上の公務の支えになるようにと言う内容だったっふよ。まあ、僕ちんにはまったく皇帝の器がないのはわかっているっふひ、兄上で文句はないっふよ」
とりあえず話してみたが、弟の性格は相も変わらず普通のようである。
父上からの手紙にあった私の命を狙うような様子もないし、考え過ぎではないだろうか。
とにもかくにも、今日は長旅で疲れているという事で、それぞれ久し振りの王城にある自室へとグランドロッジとヘイブンは向かった。
「ふぅ・・・・にしても、ヘイブンがあんな見た目になっているとはなぁ」
自室のベッドに腰かけ、グランドロッジはため息をつく。
例えで言うなれば、風船を膨らます前後の様な弟の体形の変化に驚いたのである。
だが、自身の命を狙うかもしれないという父からの警告はあり得ない様にも感じた。
「ふぁぁ・・・・にしても、長旅で疲れたな。ちょっとねるか・・・」
あくびをして、グランドロッジはベッドに横になり、少し寝ることにした。
・・・・真夜中、王城内は静まり返り、
・・ズシン、ズシン、ズシン
いや、重そうな足音がしているので全く静まってもいないだろう。
王城の廊下では、ヘイブンがニヤニヤした笑みを浮かべながら、自身の兄の部屋へと向かっていた。
「ぐっひっひっひっひ・・グランドロッジ兄上は今頃ぐっすり眠ってるっっふねぇ。何せこっそり睡眠ガスを流したっふしねぇ」
その手に持つのは小さな小瓶であり、中には毒々しい色をした液体が入っていた。
実は、グランドロッジの部屋に、ヘイブンはあらかじめ仕掛けを施していたのである。
グランドロッジがベッドに横たわると同時に、ずっとぐっすり寝てしまう睡眠ガスを出す仕掛けであった。
寝ている間は人は無防備になりやすく、それは例外はあれどもどのような猛者でも同じようなものだ。
・・・・そう、レント皇帝からの警告は正しかったのだ。
ヘイブン第2皇子は・・・・今晩、グランドロッジ第1皇子の命を人知れず奪うつもりだったのである。
目的は、兄が死ぬことによって帝位継承権によって自身が皇帝へとなり、己のやりたいように国を変革しようと企んでいたからだ。
留学先では本来、皇子たちはきちんと正しい倫理や政治の仕方を学び、国へ戻ったらその学んだことを活かしてさらに国をよくしていこうという目的があった。
だが、そこでヘイブンは堕落してしまった。
頑張っても帝位継承権は兄の方が上であり、元々の成績なども何もかも兄の方が上回っていた。
それどころか、下の妹たちの方も自分よりも成績が良く、中には適正者にまでなっている妹がいたのである。
だが、兄を除く他の兄妹は現在それぞれ嫁いで・・・・いや、一人は現在どこか放浪中であるためヘイブンはわからないが、現状この国の帝位を継げるのはグランドロッジかヘイブンだけであった。
そして、それが彼の欲望に火をつけてしまい、こうして帝位を自身のものにするために綿密な計画を練ったのである。
眠り薬を流すことによって目覚める可能性を減らし、寝ている間に今手に持っている毒薬を飲ませるだけの簡単なお仕事である。
人を介しても良いのだが、うかつに他人の手を借りれば万が一の時にバレる可能性が高い。
何もかも自分一人で実行し、確実に遂行しようとヘイブンは決めていたのだ。
もちろん、使用する毒薬はヘイブンが留学先で作り上げた新薬で、使用したとしても毒が効いて殺害した後すぐに分界され、証拠も残らぬようになるというものだった。
「ぐっふっふっふ、これも僕ちんの輝ける未来のため。明日になれば、兄上は突如疲れによって心臓に異常が起きて死んでしまった悲劇の皇子となり、僕ちんはそのなき兄の後を継ぐ偉き弟として国民に知れ渡るのでふー」
思わず自身の計画をつぶやき、兄の部屋へとウキウキと、なおかつバレない様に忍び足で迫るヘイブン。
だが・・・・・・そんな計画はすでにバレバレだったのは言うまでもない。
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そこからどうなったかって?
私が語るようなほどでもないよ。大体予想がつくでしょう?
翌日、私が目を覚ますとヘイブンがその・・・・ボンブレスハムのように縛り上げられていて、余りにも似合っていたから一瞬噴き出しかけたんだよね。
で、その横には黒い笑みを浮かべた父上と・・・・なんか見たことがないメイドさんがいたんだよね。
「父上・・・皇帝陛下!!何故ヘイブンがそのような面白ゲフンゲフン、縛り上げられているのですか!!」
危うく本音を漏らしそうになりつつも、ヘイブンのその姿に対して私は父に尋ねた。
「はぁ・・・愚かなことをこのヘイブンはやらかしたのだ。お前に宛てた手紙にて、命を狙っているとかいただろう?それはな、このヘイブンがやらかすであろうことを・・・・この横にいるメイドが察知して調べ上げたのだよ」
「メイドが?」
父上がため息をつきつつ、そのメイドに指さしたことで私は疑問を抱いた。
話によると、真夜中にヘイブンは本気で私を殺そうと証拠が残らない毒薬を持って部屋に入り込んだらしい。
しかし、その瞬間今父上の横にいるメイドがバックドロップをヘイブンに食らわせた後、腹をストレートで34回、バックベアやクラッチを23回以上食らわせ、ズタボロになったところで急所を・・・剣山とかいうモノでとどめを刺した後に、今の状態へ縛り上げたらしい。
そのせいか、ヘイブンのズボンが血塗れになっているのは・・・・・容赦ないな。
そして、そのメイドだが・・・・実は、この王城のメイドではないらしい。
私の妹の婿・・・・確か、ジャックとか言ったかな?その人に仕えているメイドらしいのだが、父上の退位と私の即位の事であらかじめどのようにするのか聞きに来ていた客人だったそうだ。
そして、ちょっとメイドが調べて・・・・このヘイブンの事が露見したそうである。
「ご主人様の奥方の兄の方を興味本位で少々調べたのですが・・・・・その時にこの者の計画を偶然知ってしまい、一応、許可を得てこのような状態にしたのデス」
淡々と述べるメイドだけど・・・・・うん、これメイドというか暗殺者に近いような雰囲気を醸し出しているね。
そして、調べてヘイブンの私を殺害しようとする計画を偶然見つけたこのメイドは、その主・・・私にとっては義理の弟になるのかな。そして嫁いだその妹も主という事で、主の血縁者である私も守ろうとしたそうなのだ。
ついでに、留学先で隠されていたヘイブンの悪行三昧などもついでに父上に証拠をすべて渡したようだけど・・・・メイドの域を確実に超えているよね。
何このメイド、本気で怖い。
とにもかくにも、このような不手際を弟はやらかしたわけで、流石に表ざたにはしたくないから、ヘイブンは表向きには再留学という事になった。
でも、真実は・・・・やめておこう。私を殺そうとしたけど血のつながった弟でもあるんだ。
悲惨な運命にあったことを語るのは心苦しいよ。
でも、父上はそんな私の心にもうんうんとうなずいて、優しさがあるのを喜んでくれたよ。
そして、数日後即位してギアス帝国の皇帝についたわけだけど・・・・・今でも、私はあの時であったメイドの事を密かに恐れている。
もし、私が皇帝として間違った道を歩もうとしたら・・・・・あのメイドが現れてヘイブンと同じ末路を辿らさせられるかもしれないからね。
そうならない様に、私は私なりに頑張って善政を行うよ。愚かだった弟のにのま荷にならないためにもね。
あ、そのメイドの主・・・・妹の婿であり、私の義弟ともなるジャックという人物は素晴らしかったと言いうことは言っておこう。
というか、あのメイドを超えたメイドを仕えさせている時点ですごいような気がする。
私だったらあのメイドは雇いたくないなぁ・・・・・今後仲良くしますので、出来るだけあのメイドには合わせないでくださいとお願いしたよ。
たまにこうやって本編完結した話を書くのも面白い。
そして、何気にあのメイドゴーレムのすごさを垣間見た瞬間でもあった。




