閑話 あるメイドの休日
たまにこうやって、この作品の続編というか、その後の話を不定期でお届けいたします。
記念すべき話として、彼女に視点を置いてみました。
・・・貴族として生活し、領地経営時々モンスター討伐の生活で半年ほどたっていた。
慌しく動いていたが、ようやく最近徐々に暇ができ始めたのである。
「・・・まあ、シーラのおかげでもあるからな」
ぽつりと、書類の整理をしながらジャックはつぶやいた。
メイドゴーレムであるシーラは超・ハイスペック。
本来のメイドとしての仕事以外にも収穫予想の計算や農地改革、屋敷で働くメイド長としても、書類整理の手伝いも多種多様にこなし、少しづつ出来る人にシフトさせながらも彼女は働いていたのである。
「でも、休める時は休んでほしいんだよね。なので、今日は一日ゆっくりしてくれないか?」
「・・・・ならば、お言葉に甘えて今日一日お暇をいただきマス」
でも、流石にたまには休息を得てほしいとジャックは考え、今日一日シーラは休みをもらうことになった。
いつもフル稼働し続けると、限界も早く来そうだからね。
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「・・・休みって何をしましょうかネ」
部屋から出て、シーラは自分に与えられていた部屋で素早く考え出す。
もともとシーラは魔王に献上されたメイドゴーレムであり、その本質と言えば「主のために働く」というモノがあるのだ。
なので、身体を気遣って休みをもらえるのはうれしいのだが、いざ休みを楽しんでみようかと思うと、何をすればいいのかわからないのであった。
「まずは、服を着替えましょうカ」
わからないならわからないで、適当に過ごしてみればいい。
そう結論付けて、シーラはいつものメイド服を脱ぎ、密かに作成してみた私服に着替えた。
そして屋敷から出歩き、とりあえず今日は領地内の散策でもしようかなと考え歩み始めた。
今いるこの地方は、半年ほど前にジャックが与えられた地方でもあり、新たに名前を「ラルゼ地方」として変更されていた。
ラルゼ地方は王国と帝国の国境の間・・・・いや、むしろそれぞれをつなぎ合わせてできた場所と考えればいいだろう。
この地方は少々特殊で、王国側からと帝国側から与えられた場所が統合されているので、その区分としては半々になるのだ。
そのため、王国から帝国、帝国から王国へと出入りする商人たちが中継地点としていつの間にかこの地に居つき始め、徐々に物量の中心地としても発展し始めたのである。
シーラの予想では、あと数年もしないうちにこの領地はかなりの発展を遂げるだろうと予想で来ていた。
また、ジャック自身がよく仕事から逃亡・・・もとい領地の見回りを自ら行い、問題点がないか聞いて回ったり、改善をすぐに施したりなどするおかげで、まだ年若いとみられながらも皆から慕われているようであった。
シーラにとっても使える主が慕われるのはうれしいことだが、逃亡を図ろうとすることがあるのは流石に困るのでそこは見張りを願って他の人に見てもらうこともあった。
まあ、何とか互いに議論しあってたまにならという事で妥協したのだが・・・内心、もうちょっとだけ仕事に専念するように願えたかなとシーラは思う。
・・・一応ジャックは適正者でもあるので、モンスターが出たときに討伐する作業がある。
それに、奥さんの大半が適正者であり、代わりに向かってもらう事も出来そうなものだが、ジャックとしては傷つけたくないのか自ら前へ出る。
その優しさはわかるのだが、もう少し今の立場を知ってほしいなともシーラは思う。
けれども、その優しさがある故に、こうして皆に慕われ愛される人がいるのだと考えると・・・・・わからなくもなるのだ。
「・・・・まあ、今は暇ですし今日は考えるのをやめて昼寝でもしましょうかね」
適当に寝心地が良さそうな野原を見つけ、シーラはそこに横になり、空を眺める。
よく晴れた綺麗な青空であり、風も心地よく程よい感じだ。
メイドゴーレムゆえに、本来なら睡眠は彼女にとっては必要ない。
けれども、こうして昼寝を楽しむのも悪くはないかなとシーラは思う。
こうやって平和にできるのも、日々の仕事に精進ができるのも主がいるおかげである。
そして、この日々を大事にし、自身が完全に壊れて動けなくなり、この世から存在しなくなるその時まで絶対にこの家にお仕えしようと誓い、熟睡するのであった。
・・・・目覚めたのは夕暮れ時であり、慌ててシーラが帰宅したのは言うまでもない。
でも、どこかリラックスできたような気もして、それ以来たまにシーラは休暇を届け出るようになったのであった。
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「チートがあっても、目立たないように過ごしたい(諦め気味ですが)」
を、投稿し始めました。新作ですが、興味を持たれたらどうぞ。




