293話
本日3話目
やはり、最後の最後で平穏無事に卒業はできないようだ
・・・卒業式開始時刻となり、晴れた青空の下で学園の卒業生たちは武器をそっと構えていた。
適正者故に、武器を持つのはおかしくはない。
けれども、ここで全員の危機管理能力的、訓練によって鍛えられた勘が働いたのである。
思い出されるのは、入学式の時の・・・・学園長の魔法をくらわされた時の事である。
アンド学園長がこういう行事の時に、何かしらの事をやるのは皆いやというほど身に沁み込んで理解してたため、この卒業式でも何か仕掛けられるのではないだろうかと、全員の頭によぎったのである。
事実、学園長は学園長で卒業式の最後に、盛大にやるために花火のような魔法を使用し、盛大に最後の卒業式という名の、身を引き締めるための訓練を行おうかとこっそり計画していた。
卒業式は、その恐ろしい学園長の計画が行われるまでは、とりあえず通常の物とは大差ない状態で進む。
卒業の言葉が送られ、名前が呼ばれて、卒業証書を授与していく。
学園長の奇襲に皆備えつつも、徐々に過去のこの学園での思い出を考えると、自然に涙が皆にたまってきていた。
・・・・楽しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと、面白かったこと、死にかけたことなどと、様々な思い出が次々に浮かび上がっていく。
そして、最後の一人まで卒業証書が授与され、いよいよ卒業式も終わろうとする時であった。
「~~~では、最後に皆へと思いまして、」
ウ―――――――――ッツ!! ウ―――――――――ッツ!! ウ―――――――――ッツ!!
「「「!?」」」
突如として、あたりに警報が鳴り響いた。
改良が進んだ警報機なので音が前とは違うとはいえ、この警報は前にもジャックたちは聞いたことがあった。
・・・・首都に、モンスターが攻めてきたという緊急警報である。
『緊急事態発生‼︎緊急事態発生‼︎緊急事態発生‼︎』
『首都内に50体ほどのモンスターが侵入‼︎モンスターはアンデット系警戒レベル大の「デュラハン」‼︎4体は首都内に入る前に討伐されたものの、取り逃がし侵入‼︎』
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「デュラハン」
アンデット系モンスター。頭部と胴体が切り離れており、別々に活動が可能。全身が黒い鎧に覆われているように見えるが、中身がなく鎧そのものがデュラハンである。首がない馬にまたがっているものが多いが、中には鎧の色が真紅のようなもので馬に乗っていない上位種の「デュラハン・クリムゾン」と呼ばれる普通のデュラハンよりもはるかに強いものがいる。
防御力が高く、ダメージを与えにくい。通常4~5体ほどの群れで構成されていると以前は言われていた。
しかし、過去に15体ほどの群れで首都に攻めてきたことがあり、そのモンスターの群れの頭数の定義を覆すきっかけになった。
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「・・・またデュラハンか」
その警報を聞き、ジャックはぽつりとつぶやいた。
適正者となって初めて遭遇したモンスターでもあり、当時はまだ戦闘技術も未熟であったために、唯一ジャックが敗走して逃げた相手である。
その過去に15体ほどで出現して以降は出現の情報はなかったのだが、何の因果かこの日、奴らは出現したようである。
数も倍以上に増えており、その脅威は理解できた。
・・・・けれども、今はジャックたちにとっては脅威としては映らない。
むしろ、最初に警報で初めて聞いたモンスターに対して、全員の卒業記念にぶち倒す相手としては最適である。
「卒業式だったけど、これは予想外・・・・・だけど、これは逆に好機!!卒業式最終試験として、皆がこの先適正者として合格か、この機会にて学生として最後の出撃を私は命じるわ!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
出現情報のすぐ後、アンド学園長が言い放った最後ともいえる学園長命令に皆は従う。
すばやくそれぞれ武器を構え直し、被害が出る前に素早く殲滅へとジャックたちは向かうのであった・・・・。
首都内を駆け抜け、ジャックたちは攻めてきたデュラハンたちと対峙する。
かつては恐ろしい敵でもあり、手も足も出なかった敵。
けれども今は違う。あの時から変わり、皆は鍛えあげられ、もう立派な一人前の適正者である。
「総員!!ガンガン行こう!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
号令がかかり、皆それぞれの武器を振るって、それぞれデュラハンの相手をしていく。
「大剣の専売特許はこの俺だぁぁぁ!!」
「いやロイス以外もいるわよね!?」
ロイスが大剣で豆腐の用にデュラハンを切り裂き、メイスでまたがられていた首なしの馬を爆発しさせながらリンがツッコミを入れる。
「照準良し、発射!!」
拳銃を構え、首なしの馬の足元を狙い、カレンは撃ち抜いてバランスを崩させる。
「連携を喰らうぜよ!!」
バランスを崩して落馬するデュラハンに向かって、ミツは刀を使用し、その鈍重な鎧ごと切り裂いていく。
「鞭で武器を奪ったですのん!!」
「スカーレット・キィィィィック!!」
鞭でデュラハンの武器を奪い、無防備になった隙にスカーレットが上空から勢いよく、こっそりいつかはやってみようかと練習していた、炎を足に纏わせてデュラハンを蹴り飛ばしてぶっ飛ばす。
「・・・デュラハン・クリムゾンか」
「かつては恐ろしい相手でしたわね」
ジャックとルナは、デュラハンの上位種である「デュラハン・クリムゾン」を3体ほど同時に相手にしていた。
それぞれ通常のデュラハン以上のパワーもスピードも強度も併せ持つ強敵である。
・・・・適正者になりたての頃、かつては全く二人とも歯が立たず、この状況だと確実に死んでいただろう。
けれども、互いに支え合い、協力し合い、その力を高めて・・・・敵はいないも同然!!
「さっさとぶっ倒れろ!!『魔王のかぎづめ』!!」
「連打連打連打殴打連打殴打ですわ!!」
剣技を発動させ、ジャックはデュラハンたちを葬りつつ、ルナはガントレットをこれでもかといぐらいたたきつけて、猛烈なラッシュでぶち倒していく。
・・・・・警報が出てから10分後。
あっという間にかつての強敵でもあったデュラハンたちは、成長したジャックたちにもう敵ではない、ただの雑魚だという位まで殲滅されて、ジャックたちは討伐を終えたのであった。
討伐を終え、ジャックたちは学園の校庭へもどる。
全員けがもなく、無事に帰還する。
・・・・こうして、最期の卒業式に突如現れたモンスターたちは、あっけない最期を終え、ジャックたちはようやく学園から卒業し、未来へと歩んでいくのであった・・・・・
・・・成長し、強敵をも撃破できるようになり、ジャックたちは学園を卒業した。
学生から社会人へと変化し、ジャックは貴族としての生活が待ち構えている。
そして、その貴族として生活をする前に・・・・・一番大きなイベントが待ち受けているのであった。
次回に続く!!
・・・ややハイペースなような気がします。そして、さりげなくスカーレットが討伐に加わってますけど、あの討伐時に使用した蹴りはなんとなくノリで出来たやつでした。




