290話
健全なお付き合い・・・・でも、まあ時と場合による。
すでに学園長の一件もあったしね。
SIDEジャック
「予想はできていたよ・・・・いやもう、ここに来た時点で」
「あの、嫌でしたかね?」
「大丈夫かな。ただ、その質問って普通は逆なような気がする」
「そりゃそうかもしれないですけど、今さらって感じですわね・・・」
異界旅館の露天風呂にて、ジャックは頭を抱えつつも入浴していた。
その傍ら・・・・というか、同じ風呂にルナ、カレン、ミツ、ヨナ、ラン、スカーレット、アンド学園長・・・・混浴状態である。
男湯と女湯の方で脱衣所「は」のれん分けされていた。
しかし、その中・・・露天風呂のところだけはなんと混浴だったのである。
風呂に使ってゆったりとしていたところに、湯気の中からルナたちの姿が見えて、最初ジャックはものすごくびっくりして悲鳴を上げた。
普通そのあたりも逆なような気もするが、女性陣全員周知の事実だったようである。
現在宿泊している異界旅館は、なんと露天風呂が完全混浴であり、こうやって一緒に入るのが可能であった。
水着の着用は本人の意思次第ともされているのだが、ルナたちはジャックの彼女でもあり、どうせ結婚した後は確実に肌を見せる。
そのため、全員水着も着用せず、せいぜい入浴に認めらたタオルで大事なところを撒いてっ買うしている程度であり、ジャックの目の毒のような状態であった。
これまで数多くのモンスターとも、自身を狙う敵とも渡り歩いてきたジャック。
精神としても、夏の合宿時に鍛えられ上げられていたとはいえ、この状況は理性に物凄くきついのであった。
据え膳食わぬは男の恥・・・その言葉が脳内に浮かんだが、ここは風呂場であるのでぐっと我慢する。
それが分かっているからか、ルナたち全員の顔がにやりと笑い、ジャックに触れるか触れないかぐらいまでの近くまで一緒に入浴しているのであった。
戦闘面ならジャックは強いが、こういう状況だと自分たちが優位に立てるので面白く思えたからである。
なお、スカーレットだけは露天風呂が広いこともあってぷかぷかと仰向けに浮いて漂い楽しんでいるようだけど、タオルすらまかずに生まれた姿の状態でいたので、それはそれで物凄い目の毒となっていた。
・・・・・目隠しをすればいいのではないかと言うかもしれないが、むしろそれをしたら余計精神面が辛くなる。
視覚が消えればその分他の感覚が鋭敏になり、むしろ見えないことをいいことにさらに接触されて、より生々しく意識してしまう可能性があるのだ。
そのため、目隠しをすることができず、かと言って逃げ出せそうにもない状況故にジャックはおとなしく浸かるしか選択肢がなかった。
「他の男子たちから見れば血の涙モノだろうけどな・・・・」
ルナは元々皇女だけど適正者として生活している分、髪の艶やスタイルが引き締められ、出ているところが出て、引っ込むところは引き締められている。
カレンは村にいた女性たち(特にリン)や、学園にいる他の女子達にもうらやましがられるほどのボリュームの持ち主。
ミツは凛とした雰囲気を纏い、いかにも県品風格を漂わせていたとはいえ、さらしに隠されていたものはカレン並みであり、そのギャップも相まって良いスタイルを持つ。
ヨナは実はこの中では一番平均的なような気もするが、平均故に付き合いやすいというか、親しみやすいスタイルを持つ。
ラン・・・・王女だけに、ルナとは違った方向性で大切に育てられてきた箱入り娘のような雰囲気を纏わせ、どことなく守ってあげたくなるような感じがしつつも、理性がしっかりとしているその瞳は力強さもみられる。
アンド学園長は、この中で唯一完全な大人の魅力というか、悪女のような雰囲気を纏いつつも、完成されたプロポーションは隠されている状態でもはっきりとわかり、むしろなぜ今まで彼氏がいなかったのかと疑問に思えるほどである。
・・・・・ぷかぷか浮いているけど、スカーレットはモンスターとはいえ、羽や角、尻尾を見なければかなりの美少女でもある。元がドラゴンなせいか、持つべきところは持ち、リンの嫉妬の対象にもなった。娘のようにも感じる無邪気さや、どことなく人懐っこい感じがこれまたかわいらしい。
自身がどれだけ恵まれた状況なのかはジャックもよく理解はしている。
他の男性からしてみても、美女たちに囲まれての風呂での裸の付き合いはうらやましい光景でもあろう。
けれども、実際にその中心となって見れば自身の理性との戦いが激戦となり、楽しむどころかオーバーヒート寸前である。
「定番で、背中を流したほうがいいですのん?」
「あー、背中を流す行為というか、全身洗うほうが良さそうぜよね」
「裸の付き合い、ここは皆平等」
「ふふふふ、ジャックもこうしてみると普通の男の子だってわかるのですわ」
「どれだけ強かろうとも、その本質は変わらない。それはずっと適正者を見てきた私からも言える事ね」
「王族として、異性に見せたことがないですが・・・・旦那様の前ならいいかなと思えまして」
「ギュゥー。プカ~、プカ~ット、皆デ浮カビタイナ~」
「えっとその・・・いや本当にこの状況としては・・・・ああぅ」
さすがに、理性の崩壊を招きそうになり、根性でジャックはこらえ・・・・・・・のぼせた。
「なんかマスターのこの状況・・・・前のマスターにもありましたね」
「あ、こっちも同様の事があったのぅ」
「・・・聖剣、魔剣の前マスターにしろ、英雄色を好むという言葉はある。・・・できれば我だけを見てほしいとも思えますけど・・・・」
シロとクロとメゾンは、のぼせてしまったジャックのために、冷やすためにうちわであおぐのであった。
この時点で皆浴衣に着替えており、真夜中の方にすでに備えられているという事をジャックが知るのは直ぐ後・・・・・・・
女性陣に格差とか嫌気などはなく、一致して仲が良いのは喜ばしい事である。
けれども、ジャックにとってはそれはまた逆に、ある種の災難でもあった。
なぜなら全員協力しあう者だから、逃げ場のない鉄壁のディフェンスがたっているのだから・・・
ついでに、以前学園長がジャックに既成事実を作るために使用した薬、今回もばれないように仕込まれていました。
(完全に外堀どころか罠でガッチガチに固められていたぁぁぁぁぁぁ!!)
そうジャックは心で叫んだが、時すでに遅し。
そして学ぶ。時として、いくら強者でも策略にはまればどうあがこうと無駄であると・・・・・・
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SIDEシーラ
「『我が主 強さはあれども 策に負け 人の欲望は おそろしきかな』・・・・一句出来ましたネ」
どことなく満足そうに、シーラはたった今思いついた句を詠み上げた。
現在の時刻は真夜中ではあるのだが・・・・・
シーラにとって、最優先すべきはご主人様であるジャックである。
で、その次には将来の伴侶の方々ではあるのだが、今日ばかりはシーラもその命令の方を受け入れ、協力した。
自身も混ざりたくないと言えば嘘になるだろうが、シーラはメイドゴーレム。
ゆえに、現在客室で繰り広げられていることはできるのだが、それをしたとしても自身にはあまり意味がないことをシーラは理解していた。
それを考えると聖剣、魔剣、神剣も似たようなものだが・・・・・求めあってしまうのはそれだけ深い絆があるからであろう。
シーラもできると言えばできる。けれども、彼女としてはできない。
なぜなら、仕える立場である今もご主人様は愛おしいのだが、ここでさらに一線を踏み越えてしまえばもう作業が手につかなくなる可能性が目に見えていたからである。
そのため、その可能性を考えるとまだまだ先になりそうだなとも彼女は思えた。
「シーラ、マダ部屋戻ッチャダメ?」
「うーん・・・今日はここで寝たほうがいいのでハ?」
その横には、枕を抱いて寝ぼけているスカーレットの姿があった。
純粋さゆえに・・・まあ、その気まずいさというか、情操教育というべきか・・・・ジャックたちとしてもその場にいると流石に精神的に来るところがある。
そのため、仕方がなくシーラに寝かせるように頼まれているのであった。
(・・・ペットとかモンスター以前に、娘のように思われてますからネ)
ほんのわずかな間にすでに眠りに落ちていたスカーレットに、風邪をひかないように布団を賭けながらシーラはふとそう思えた。
愛らしい愛娘というか、どことなく自分の子供のように思えるのである。
(・・・もし、魔王様に仕えていた時代に一線を越えることができれば・・・・このような子を授かる可能性はあったのでしょうカ。・・・・・いやいやいや!?ゴーレムですからできませんよネ!?)
考えて、つい思いついたそのことにシーラは珍しく赤面し、頭を振ってその煩悩を捨てた。
・・・・メイドゴーレムとして、これから先もご主人様・・・・ジャックにシーラはお仕えする。
その時に、ジャックの子供を抱いて世話をすることがあるのだろうかと、そう遠くはないであろう未来にシーラは微笑み、そっとスカーレットに添い寝をして思いをはせるのであった・・・・・
「がちがちに みうごきできぬ せまられる さくにはまりて ないてもおそし」・・・byジャック
「かためてね けんぜんでもね よくはある どうせならいま おそいたくなる」・・・by女性人一同
5・7・5・7・7になんかはまった。見ている分には面白いだろうけど、当の本人たちにとってはどうなのだろうか。
冬をそろそろ終えまして次回に続く!!
今回は事件も特になく、その平和の代償としてこの温泉があったのさ!!




