285話
冬の生活で、久し振りの要素です。・・・この要素をあまり出していないような気がするのは気のせいだろうか?
・・・季節は冬となり、今年は雪が早く降ってきた。
というか、大雪となってあたり一面銀世界、交通網も雪かきをしなければ馬車や人が通りにくいレベルの豪雪である。
「今年は異様に大雪になったな・・・・ここまで豪雪になった時ってあるか?」
「こういう時に限って、モンスターが出るのもいやですわねっと!!」
つぶやくジャックに対し、襲いかかってきたモンスターに対して綺麗な右ストレートをヒットさせたルナが返答する。
威力がすごいので、色々とそのモンスターはぶちまけて哀れな最期を遂げた。
本日、モンスターが出てきたので適正者たちで討伐中なのだが、今回出てきたのは冬にしては間違っているようなモンスターであった。
「ビブシャァァァァァ!!」
「うわっ!なんか吐いてきた!!」
「それがかかると、その個所から藻が一気に生えるですのん!!」
「意味不明な攻撃なのに、微妙な精神ダメージがあるぜよな!!」
現在、ジャックたちが対峙しているのは「マーミムルンワーム」というモンスターである。
その数およそ17匹ほど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マーミムルンワーム」
巨大なミミズ型でありながら、あちこちからほっそい触手を生やす見た目がものすごく気持ち悪いモンスター。目はなく、全身から生えている毛のような触手で周囲を把握しているのだと考えられている。
前後の部分には小さな穴がそれぞれあり、そこからなぜかかかるとびっしり藻が生える謎の液体をぶちまけてくる。しかもかなり臭い。
一度に10~20匹以上出現し、斬り心地もぶにゅるんと得体のしれないような感触がするので、刃物を扱う適正者たちにとってはできるだけ会いたくない相手である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、刃物・・・要は剣などがその例であり、ジャックも現在斬るたびにその気色悪い感触を勘zに取っていた。
ぶにゅん!! ぶぐぎゅん!! ぶちゅん!!
「うわぁ、想っていた以上にやっぱり気持ち悪ッ!!」
「ひぃぃぃ!!私たちにとってもこれは泣きたいですよマスター!!」
「おおぅ、余りの気持ち悪さに、今魔剣の状態なのじゃが、すごい吐きそう・・・・」
「・・・・・放心すればすべては楽に。フフフフフフフフフフフフフフフフフフ」
斬るのに役立っている聖剣・魔剣・神剣・・・・シロとクロとメゾンからしてみても、最悪の感触のようである。
というか、メゾンがやや壊れ気味になった。剣とは言え、やはり切る相手の相性を考えると辛いものがあるのだろう。
「うわぁぁ!!俺の大剣が藻だらけになったぁぁ!!」
「なんでもなのかは知らないけど、地味に嫌がらせのような気がするのよね!!」
「変にかかって藻のひげが生えたぁぁ!!」
「それはそれですごいなおい!?」
あちらこちらで、それぞれの悲鳴や相手に対しての憎しみの声なども上がる。
雪が積もっているせいで足元が不安定でもあり、真っ白だった地面が藻まみれの緑一色の状況へと変容しつつある。
足場が不安定だし、雪に沈んで動きにくいという事もあって苦戦する者も多い。
「グ~ギュ~グワァァァァァァ!!」
とはいえ、翼を広げて空から炎のブレスを吐くスカーレットにとっては関係ない。
上から焼き尽くし、有利に戦闘しているようである。
こうやって有利に戦えるのが楽しいようで、口角が上がっている。
「って、『白き翼』で飛んで、『斬撃衝撃波』とかで間接的に斬ればこんな気色悪い戦いにくいことにならなかったのでは?」
「先に思いついてくださいよマスター!!」
その様子を見て、対処法を思いついたジャックに対し、シロは文句を大きな声で叫ぶのであった。
その方法でならば、あんな気色悪い感触を直に味わなくても済んだのだとクロも壊れていたメゾンも同様の文句を思ったのである。
モンスター出現からジャックたちが討伐のために到着し、3時間ほどでマーミムルンワームたちは全て討伐された。
途中、身体に絡みついてきて首を細い触手で締め付けてきたりなどされた適正者もいたりとややカオスな状況となっていたが、何とか全員無事であった。
いや、どさくさに紛れて毎度おなじみの発言と仕打ちを受けて真っ赤な花を咲かせた者もいたが。
ただし、今回の戦闘によってあたり一面雪の地面が藻まみれになり、見栄えが怖ろしく微妙な風景となったので、ついでに後始末として雪かきが行われることにもなった。
マーミムルンワーム・・・・微妙なモンスターであり、最期まで微妙なめんどくささを残すのである。
雪かきは一応今回の討伐のついでに行われるものであり、一応このことに関しても別途で保障費用としてそれなりのお金をもらえるので皆文句は特になかったが。
モンスターの吐いた液体によって、藻が付いた武器や衣服などは洗浄することにもなっており、その手入れによって参加しない適正者たちもいる。
「あー、マーミムルンワームの斬り心地って本当に気色悪かったな・・」
「大剣に付いたのを洗い落とすのが、これまた大変だったぞ。さびというか、こびりついていたなかなか落ちなかったし」
学園の方へ帰還時、距離としては近いのでジャックたちは徒歩で戻っていた。
その帰還中にも、ジャックたちは今回のモンスターについての話を話題にしていく。
「いつぞやかのギガントワームの時みたいに、ジャックがキレるのかという恐怖があったけどな」
「あの時の事っていまいち覚えていないんだけどね・・・・どれだけやばかった?」
「「「「物凄くだよ」」」」
ロイスのその言葉にジャックは尋ね、全員当時の事を思い出して同様の意見を述べた。
魔王城の宿泊時にあったギガントワーム・・・・あの時気持ち悪さのあまりにジャックがブチ切れて、モンスターに同情しそうなレベルにまでギッタギタのメッタメタにしていたのは皆の思い出に残っている。
「アレハ・・・ヤバカッタト思ウ」
スカーレットにとっても、種族が違うとはいえ同じモンスター相手に同情するレベルであった。本当に、今こうして討伐されずに横にいることができるのは幸運であろう。
そのため、苦笑して皆に同意をしたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・・・本来、モンスターは適正者に討伐される生き物。
自称神の事件の際に、どうやって生まれてくるのかという事などは判明してはいるが、これから先も生まれ続けるのはもはやどうしようもない事である。
それ故に適正者たちはモンスターを討伐し続ける運命にあるのだが、モンスターでもスカーレットや、ロイスのペットとなったシラタマは特例のような物で討伐はされなかった。
そして、こうして一緒に過ごしている中で学んでいく。人とは何か、自分とは何かと。
言葉も学び、スカーレットは人とあまり変わらないほどの感情を持ち、言葉も持ち、思考を得た。
けれども人間でも魔族でもない、モンスターとしてもスカーレットの立場は微妙なところにあり、力としても適正者と大差はない。
・・・・けれども、寿命という点に関しては謎がある。
モンスターは出現次第すぐに討伐されるので、その寿命が尽きるまでの記録というのはほとんどない。
けれども、どう考えても人間よりも長く、魔族クラスはあるのかは不明だがそれでも長く生きる可能性もあった。
それはつまり、スカーレットにとって恐れていた人でもあり、今は暖かい大好きな人との別れが来ることでもあり・・・・・・
(・・・・・ン?)
ふと、考えていると胸に針が刺さったかのような、それでいて小さな痛みをスカーレットは感じた。
今は皆で学園の寮へと戻る途中であり、上空を飛びながら皆を、そして今仕えている主でもあるジャックを見て、なんとなく感じたその感情。
モヤッとして、小さな悲しい痛みでもあり、言い表しにくいようなそんな感じ。
モンスター仲間でもあるシラタマと話している時でも、同じような思いを抱いているとシラタマの気持ちは言っていた。
いつか来る別れに対して、自分たちは不安を抱いているのではないかと。
・・・・ならば、その時が来るまで甘えてみようかなとスカーレットは考える。
うじうじ考えていてもわからない物はわからないんだし、その時が来るまでずっといようと。
そう思いついたので、今日の戦闘で役に立ったことをもっと褒めてもらおうと思って、上空からダイレクトアタックをスカーレットはしかけたのであった。
なお、この後ルナたちに怒られたのは言うまでもない。なぜなら上から強襲したため、ジャックが地面に前のめりでめり込むほどの衝撃を与えたのだから。
これは常人だったら骨折確定。きちんと改めて力加減をスカーレットは学び直すのであった・・・・・
冬の生活は今年こそまともなものでいたいジャック。
でも、しょっぱなからダイレクトな攻撃で幸先が悪い。
スカーレットに悪気がなかったのはわかるのだが、それなりにダメージはあった。
次回に続く!!
・・・スカーレットに今章は少々重点を置く感じになるかもしれません。彼女はペット枠というか娘枠のような感じですけど、たまに焦点を当ててみたい。
「・・・・でも、モンスターなのにどこがとは言わないけど、大きいって・・・少し嫌なのよね」
「そりゃそのぜっぺぐべぇ!?」
ロイスが言う前に、リンのメイスは深々と彼の急所にめり込むのであった・・・・・・どこがとは言わないが、スカーレットは元々ドラゴンのモンスターだっただけにDはあるので勝負にもならないというか。
ん?背後から物凄い殺気を・・・・・・・・




