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閑話 いつかは来る時、来てほしくない時

普段は明るい子たちでも、深い悩みはあるんです・・・・・

・・・この世に生きていることができる時間、「寿命」というモノはどのような生物にも定められている。


 どれだけ優れていても、劣っていても、いつか必ず「死」というモノは生きとし生けるものに必ず訪れる。



 人間、魔族、そしてモンスターにも寿命はあるのだ。






 適正者にモンスターは討伐され、その寿命なんて存在が考えられたことはほとんどない。


 けれども・・・・・討伐されずに生きのこっている者達には、そのことを考える余裕ができる。





真夜中、誰もが眠る丑三つ時に、寮の屋上に2体の影があった。



「シラタマ、寿命ヲ考エテミタコトアル?」

「カァ・・・クワァ、カァ」


 スカーレットの問いかけに、ロイスのペットでもあり、ヤタガラスというモンスターであるシラタマは返答を濁した。


 言葉は違えど、モンスター同士そこそこの意思疎通はできる。


 そして、討伐されずに生きているのであれば、互いに考えてみたくなることもあるのだ。




・・・・シラタマは、卵の時代に拾われてロイスのペットとなってその横で過ごしているヤタガラスというモンスター。


 現在は、巣立って離れ気味だがそれでもロイスのそばについている。




・・・・スカーレットは、本能的に強い力の持ち主に恐れて、討伐されないようにと考え、人に近い姿となったドラゴンの一種であるモンスター。


 現在は、ジャックのペットのような立場でもあり、その横で無邪気に遊ぶ。




 互いに種族も生い立ちも違えど、ある時ふと同じような思いを抱いた。


 「一体自分はどれだけ生きていられるのだろうか」と。



 互いに自身の親とも、仕えるべき主ともいえる人物のそばにいつもいる。


 けれども、その主とて不老不死でもないし、いつかは必ず別れが訪れる。



 一緒に過ごし、感情を分かち合い、思い出が積み重なっていく。


 そして、そのうちふとそのようなことを考えたのだ。




 誰かに相談しようにも、同じようなモンスターというのはなかなか話に聞かない。


 討伐を免れ、一緒にいることを許されてはいるが・・・・・それでもいつかはそばにいる人と別れるその時が来る。


 そうなった時、自分はどうなるのだろうか。



 そのまま生きていくことができるのだろうか。




 そこが互いにわからない。寿命なんて普段考えるようなものでもない。


 それに、形あるものはいつかはなくなる。どうでもいいものならば、気にはならない。



・・・けれども、スカーレットもシラタマも、互いにそれぞれの主のそばにいつまでもいたいと思えてしまった。


 そのせいで、いつか来るであろう別れに対してどのようにすればいいのかわからなくなった。



 単純に人を襲うモンスターであり、討伐されていたのであればそのような考えを抱くこともない。


 けれども、彼女たちは討伐されず、一緒に過ごしたがゆえにそのような思いを抱いたのである。



 愛情、愛着、愛しさ・・・・様々な言葉で言い表せるのだろうが、そのどれもが当てはまるのは間違いない。




 モンスターはモンスター、人は人と、割り切ることもできるが、それでも割り切れないような気持があるという袋小路に入ってしまったのである。





・・・・・・別れの時はまだまだ先になるだろう。


 でも、それまでに自分たちのこの悩みが解決するのだろうか。


 それはスカーレットにも、シラタマにもわからない。


 けれども、自身の主に別れが来るその時まで、ずっと一緒に居たいという想いは、二体とも共に抱く共通の想いであった・・・・・・。

モンスターゆえに、その寿命がどれだけあるのかは自分達でもわからない。

悠久とも言えるほど長い時を生きるのかもしれないし、主との別れの前に亡くなるのかもしれない。

それでも、ずっと一緒に居たいという思いは二体とも抱くのである・・・・


ちょっと今回は暗めでしたが、悩めるモンスターたちに視点を置きたかったのです。たまにはこういう視点を置くのもいいでしょうかね。

次回から新章です。

冬の生活をまともに描きたい。というか、今までまともだったかな?

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