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283話

SIDE舞台裏:その3

「ドラゴンの役は演じるだけでいいのじゃぞ。アフレコを妾がするからのぅ」

「ワカッタヨ、一生懸命演ジルヨ!!」

「ちょっと!!衣装これこれ!!スカーレットそのままだと素っ裸になるわよ!!」

 女神たちから神剣を与えられ、ライトの旅は次第に波乱に満ちていった。


立ち寄ったとある村では、一宿一飯の恩義に襲いかかってきた盗賊を討伐したり、


またある貴族が治める領地で、領民がひどい扱いを受けているのを知って大変えさせようとこっそり倒したり、


またまたある時には、大量発生したモンスターの討伐に巻き込まれたりと、波乱万丈を極めた。



 旅の合間に起きる人との関わりの中で生まれる信頼や友情、裏切りや悪意といったことをライトは感じ取って成長していく。




・・・・・それから月日が流れ、「導き板」に従って向かった結果、ついに誰も到達することのなかった、かつて姫を攫ったドラゴンの住まう古城にライトは自然とたどり着いていた。


 これまでの旅は世界の修正を促すための旅でもあり、女神から受けた話では捕らえられた姫を助けることによって、最後の修正をすることができるという話であった。



 そして、ライトは古城の中を進み、仕掛けられたトラップなどをかわし、ついにそのドラゴンがいるであろう大広間の扉を開けることになった。



 中に入ると、うっすらとした煙があたりを漂い、怪しい雰囲気を醸し出していた。


 部屋の雰囲気は暗く、壁にかけられたロウソクの明かりがその不気味さを際立たせる。



「・・・ほぅ、よく来たな」

「っ!?」


 聞こえてきた声に対して、ライトは身構えた。


 ついにドラゴンとの対峙かと思ったのだが・・・・・・その声の主を見て、ライトは驚く。


「・・・姿が・・・・人に似ているだと・・・・!?」


 話にもあったドラゴンの容姿とは全く違う。


 その声の主は、ライトの目の前にあった、どくろで形作られた玉座に鎮座していた。


 けれども、その姿はドラゴンというよりも人に近い。



・・・・・はっきり言って女性である。


 着ている服は胸元が空いたパーティドレスのようなものであり、ドラゴンだとわかるようなところとすれば、その頭の上の方についている角、背中からはみ出ている大きな翼、そして背後に見える尻尾がそうだと言えるだろう。


 だが、ここまで人に近い姿だとは予想だにしていなかったのである。


「ふふふ・・・わらわがなぜ人に近い姿であるかに驚いているようだな」


 と、ここで不敵な笑みを目の前のドラゴンというべきか・・・・それとも、なんといえばいいのかわからない女性は説明をし始めた。




 彼女は(ドラゴン)女帝(クイーンエンペラー)『セイラ』。この世に生きる生物たちの頂点の存在であるドラゴンの、さらにその頂点に君臨する女帝である。


 そして、その横には眠っているかのように横たわり続けている・・・・ローズ姫と思わしき女性の姿もあった。



「そもそも、妾がなぜこの者を攫ったのか・・・・その話もしてやろう」




 ・・・・セイラは太古の昔から生きる古代竜(エンシェントドラゴン)であり、ドラゴンたちの女帝でもあり、その人の姿は生きているうちに自然と習得した姿だという。


 そして、なぜ女帝・・・・女性である彼女が、同じ女でもあるローズ姫を攫ったのか。



 当初は性別が分からなかったが、男だとも予想され、自身の種族の繁栄の道具として利用するのだと思われていた。


 だが、それは大きな間違いであった。



 彼女が目的としていたのは・・・・姫を取り戻すために来る者たちであったのだ。


 その者たちを狙う理由としては、その当初の目的と似たようなところがあったのである。



「・・・我が一族、ドラゴンの数もここ最近・・・とはいっても、人の感覚で言うなら数年ほど前だろうが、数が減っていたのだ」


 そして、種族として滅亡しかけているようなことに彼女は危機感を抱いたのだという。


 そのために、互いに交わって子孫を増やすことを推奨したのだが、どういうわけかドラゴン同士の生殖能力が失われつつあり、もはや同種族では子を成せないと判断したのだ。



 ・・・・そこで目を付けたのが、人間だったのだ。


 人間の欲望は深く、その欲を利用して彼女にふさわしい相手を見つけて種族を繁栄させようともくろんだのである。ただし、適当なものではなく、すべてにおいて優れている人物を彼女は求めたのだ。



「一国の姫・・・・それも、大国の者を攫えば、確実に様々な目的で妾のところに有象無象の欲にまみれた者がやってくるであろう。そして、助け出すために必ず戦いを挑んで、その力を見極めてものにしてやろうと思ったのだ」


 だが、ここで彼女の計算違いが起きた。


 うっかりというべきか、ライトがここまでたどり着けたのは「導き板」の案内に自然としたがっていたからなのだが、全くこの場所までの道のりが分からずに誰もやってこなかったのだという。


 たまに本当の情報を流すが、人の欲望というモノは予想以上で、其の情報を加工して、更に他の者に売りつけたりなどし、もう誰も来ない状況になってしまったのであった。



「そうこうしておるうちに、自然と探し求める者達が消沈してのぅ・・・・正直言って、これ失敗だったと思ったのじゃよ・・・よぅお主が来てくれたわい」


 何かものすごく微妙な雰囲気へと移り変わった。


 



「さてと、まあそれはそれ、これはこれというんじゃったかな。とにもかくにも、お主がここにまで来たという事実は変わらぬ。やっと来た嬉しさはあるが、妾と戦わぬことにはことは動かぬ。・・・いざ、尋常に勝負をここに申し込むのじゃ」


 そういうと、セイラは天高く腕を掲げ、あたりに煙が充満した。



 煙がはれると・・・・そこには、強大な威圧感を纏いしドラゴンがその場に現れていた。


「・・・避けられない戦いという事か。ならば、受けて立ってやろう!!」


 セイラの戦いの意思を感じ、ライトは戦いを挑んだ。



 ドラゴンと人との戦闘、それはすさまじい光景でもあり、七日七晩彼等は不眠不休で、互いに死力を尽くし戦いあった。


 ちなみに、姫はその場から出され、安全なところに置かれていた。






 戦いは長く続き、そしてついに終わりの時となった。


 互いに血にまみれ、大けがをしておりどちらも次で最後の一撃が決まろうとしていた。


 もはや何を目的にしていたのかは、両者ともどうでもよくなっていた。


 互いに死力を尽くし、生きているという喜びを感じ取り、その感動を互いに分かち合っていたのだ。



・・・・けれども、物事には必ず終わりはある。


「でやぁぁぁぁぁぁ!!」

「ずぇぇぇぇぇぁぁぁあ!!」


 互いの最後の攻撃が交わり、決着の時が来た。



「・・・・ふふふふ、見事だったぞ・・」


 そうセイラは言い、その場に力尽きて倒れたのであった・・・・・・・








 それから場面は変わり、傷は癒えてはいないがライトは、セイラが倒れると同時に目覚めたローズ姫を連れて、国へと戻った。


 城へ謁見し、そのことは国中に大きな衝撃を与えた。


 もはや諦められてもおり、どうにもならないと思われていたことをたった一人の青年が成し遂げたのである。


 そして、謁見時、ついに国王に望みをライトは聞かれることになった。



「・・・・さて、このたびようやく我が娘を取り返してくれたライトよ。これまで皆にしてきた約束通り、貴殿の望みは私が叶えよう。果たして、何を望むのだね」



 国王の問いかけに、その場にいた他の者たちはごくりと唾をのんで見守った。


 自分たちがなしえなかったことを、たった一人の青年が成し遂げたことにいら立つ者もいれば、素直に感嘆の意を示す者もいる。


 だが、ドラゴンを倒すだけの力を持った者が居るという事自体がこの場にいた全員の不安でもあった。



 もし、彼の望みが国をひっくり返すようなものだったらどうするのか。


 反発する者はいるだろうが、ドラゴンを討伐した相手に果たして叶うのだろうか。


 それどころか怒りを買い、国を滅亡させるのではないかという恐れさえもあった。





・・・・・国王の問いかけにライトは考える。


 自分望みとして「生きたい」というモノはあった。


 ただ、その生きたいという望みはすでにかなっているようなものである。


 ドラゴンでさえ倒すような力を持つものに、誰がかなうものなのだろうか。


 危害を加えられることはほぼできないだろうし、生きることはできるだろう。


 ならば、他に何を望むか。


 富?名声?権力?・・・・・・・いや、違う。


 

 あのセイラとの戦いの中で、ライトは生きているという感覚を味わっていた。


 互いに死力を振り絞ったがゆえに、その命の重みを改めて感じることができたのである。


 ならば、自分は何を望むだろうか・・・・・・




 深い沈黙に、その場は緊張のあまりものすごい重圧が皆にのしかかり、永遠かと思われたが、ライトは直ぐに決断をしてこう望んだ。



「・・・・では、望むことはある事だけです」

「そのこととは?我が娘・・・ローズを貴殿の嫁にという事も出来るのだぞ?」

「いえ、今一番望むこととしては・・・・・・・・」



 ライトのその望みに、全員驚いた。



 彼が望んだのは富でも名声でも権力でもない。普通であり、誰もが普段忘れているかもしれないこと・・・・












「・・・・普通に、家族を持って幸せに暮らしたかったのさ」

「それがお主の望みだとはのぅ・・・・まあ、いいじゃろうな」



 ライトのその言葉に、その隣にいたセイラ(・・・)は微笑んだ。


 彼らが今いる場所は、ライトが神剣を受け取った遺跡の跡地に作った小さな家であり、そこで現在彼らは仲良く夫婦として暮らしていた。


 戦いの後、セイラは力尽きて倒れはしたが、別に死んではいなかった。


 生きており、その生命力はライトも驚いたのである。


 そして、セイラはライトが自身にふさわしいものとしても認め、彼と共に生きることを望んだ。




・・・けれども、ドラゴンを連れているうえに、それを討伐できるだけの力を持った者を見逃すことができるような者はいるまい。


 そこで、ライトは決めたのだ。


 この神剣を受け取った遺跡の跡地で、誰に干渉されずに平和に静かに暮らしたいと。



 周囲にはできるだけ人を寄らせないようにして、彼らはそこに家を作り、家庭を築いた。


 強い力を持つゆえに、この国もその周辺諸国も警戒を続けている。


 けれども、必ず手出しできぬようにと望み、それをかなえてもらったのである。



 戦いの中で生まれた互いの恋に、彼らは落ち、そして結ばれた。


 世界もライトの働きによって修正され、彼の役目も果たされた。


 神剣も神たちに回収され、今はもう手元にはない。


 けれども、新たにライトは見つけた。


 この今ある平和を、彼女と共に暮らせる小さな暮らしを、そして新たにこれから生まれる新しい命のために生きようという目的を。




 今日も彼らは笑い、互いに過ごし、平和をゆっくりと楽しむ。


 ライトの辛い日々に終止符はうたれ、平和な日々をゆっくりと、愛しい相手と共に過ごしていくのであった・・・・・・・・・・・







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 劇が終了し、幕が下ろされた。


シン・・・・・っと舞台を見ていた観客たちは静まり返り、そして大きな拍手が讃えられた。


 感動し、号泣するモノや、その結末にうれしさを感じる人もいた。


 そして、ジャックたちの学園祭の劇は見事に大成功を収めたのであった・・・・・・・・。

・・・・ようやく劇を終えた。

「導き板」は神剣同様回収。そして、ハッピーエンドと言う感じに仕上がりました。

次回はこの学園祭の後夜祭ですかね。

正直言って、劇を小説で行わせるのがどれだけ大変か今章で思い知りました。何せ新たな一つの話を組み込むのだから、結構大変で・・・・・・・。

なにげにスカーレットがヒロイン役をした珍しい回だったりもする。

というわけで次回に続く!!

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