281話
ようやく劇ですけど、全部は一苦労なので分けてます。
・・・学園祭開始から時間が経ち、昼となる。
昼食をとる者たちが出る中、いよいよジャックたちの劇が開始されようとしていた。
校庭を舞台に改造し終え、観客席も作られており、ついでに弁当を販売している者達もいる。
劇の開始直前、ジャックたちクラスメイト全員は気合を入れる。
「この劇が学園での最後の集大成のようなものだ。絶対成功させるぞぉぉぉぉぉ!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
気合を入れた後、全員きちんと衣装に着替え、役作りをしっかりとしてセリフの最終確認をし終える。
なお、観客席にこの国の第2王女であり、ジャックの婚約者ともされているランがいて、下手に目立たないようにと変装して紛れ込んでいる。
国王の方から一応護衛もこっそり出されており、適正者たちも多くいるので、この舞台周辺は現在最強の護衛集団ともいえる状況であった。
それぞれスタンバイし、役を行う者たちは自身の衣装を最後までしっかりと確認して、セリフを頭の中で再確認。
小道具や演出を務める者達は出るタイミングをしっかりと見定める。
『・・・これよりこの学園祭で最大の目玉でもある、原作「ブレイド・ロード」を参考にした「ブレイドオブドラゴン」を開始いたします。ナレーターはこの私、特別員としてシーラがお送りいたします。・・・それでは、始まり始まり・・・』
静かにナレーションが入り、舞台の幕が開いていく。
あたりが魔法によって暗くなり、舞台が照らされてその光景に観客たちは集中して見るのであった・・・・・。
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「ブレイドオブドラゴン」
・・・・昔々、とある王国にてある知らせが国中に出されました。
その王国の王女様であるローズ姫が、昨夜お城で行われた武闘会にて突然大きなドラゴンに攫われたというのです。
そして、そのドラゴンは世界のどこかに住んでいるらしく、国王はそのドラゴンから姫を助け出してくれたものはどんな望みでもかなえてやるという知らせを出したのでした。
権力に目を付けた者、姫自身を我が物にしようと企む者、財宝をもらい大金持ちになろうという者などという者たちが大勢そのドラゴン討伐に向けて動き出し始めました。
そんな中、とある一人の若者もある望みのために討伐に向けてのメンバーに混ざっていました。
彼の名前はライト。まだ10歳という若さであり、その望みとは、自身が育った孤児院への寄付の為でした。
その孤児院は、格差が大きく出来ていた国の貧しい者たちが、自身の欲望の末に出来てしまった子供たちを預けていて、経営が苦しくなっていたからです。
ライト自身、まだ赤ちゃんの頃に誰かに捨てられ、危うくひどい大人たちに虐待されかけたところを、孤児院の園長に助けられて、今日まで優しく育てられました。
なので、もし、ドラゴンを討伐することができればその恩返しになるかと思い、孤児院の手助けができるだろうとライトは考えたのです。
そのため、貧しかったものですから武器を買うお金もなく、ライトはそのへんにあった木の棒などを削って自身の武器として、貧しい装備だと皆に馬鹿にされながらも、討伐へ向けて動き出しました。
ですが、まず大きな問題がありました。
そのドラゴンが住まう場所がそもそもわからないのです。
ドラゴンが飛んでいった方角にあるのでしょうが、未だにたどり着いた者はおらず、旅の途中であきらめてしまう者や、資金面から盗賊になって行く者たちなどが出て、討伐は不可能だと思われました。
ですが、ライトはあきらめません。
どうにかして、必死になってその場所を探すことにライトは頑張りました。
・・・・それでも現実は非常です。
討伐のために頑張って3年ほど経ち、ようやくそのドラゴンの居場所らしき情報を突き止めた者が居ました。
そのため、其の情報を求めて群がる者たちが多く出たのですが、其の情報は金で取引されて、手に入れることがライトにはできませんでした。
それどころか、他に手に入れられなかった者たちがいら立ちのあまりに自分達よりも弱者の立場にある者たち・・・・・貧しい者たちに向かって憂さ晴らしのため暴力を振るいだしたのです。
その振るわれた者の中にライトもおり、ぼっこぼこにされて死にかけました。
そのひどさに諦めようかと思い、孤児院の方に彼は帰ったのですが・・・・弱者が集まる場所と思われていたのでしょうか。孤児院までどうやら悪しき者たちの襲撃にあったようで、優しかった園長たちや、そこにいた子供たちまで被害を受けて、亡くなっていました。
・・・ライトは泣き、叫び、悲しみます。
でも、怒りという感情は彼にはありませんでした。
いつかはこうなるのかもしれないと、心のどこかでわかっていたのかもしれません。
孤児院が無くなり、ライトの行動の元もなくなりました。
そして、居場所の情報が突き止められたらしいのに、未だにドラゴンを討伐したという話もありません。
どこかで野たれ死にしたり、もしくは返り討ちにあったのでしょうか。
いつの間にか、ドラゴン退治なんて言う話もなくなっており、もはや誰もが姫の奪還をあきらめていました。
そして、ライト自身は魂が抜けたように過ごし、月日が流れていき15歳となった時でした。
やせ細り、何もやる気が無くなっていたある日の夜、ライトは路地裏を目的もなくさまよっていました。
と、そこで何かの争うような声がしました。
見に入くと、どうやら老人らしき人達が、他のいかつい大人たちにいじめられているようでした。
ここは本当なら、見ていないふりをするのでしょうが、この日は不思議なことにどういうわけか彼はその老人を放っておけはしませんでした。
その光景に、どことなく感じることがあったのでしょう。彼は心が優しく、そのため必死になって助けに入り、老人を担いでその場から逃げ出しました。
何とか逃げ切り、ライトは一息つきます。
老人の方も、助かったとお礼を述べてきました。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・助けてくれてありがとのぅ、若者よ」
「いえ・・・なんとなく助けようと思っただけですから」
普通に笑っているだけのようですが、その老人はどことなく不思議な雰囲気を纏っているようにライトは感じました。
「まあまあ、なんとなくでも助けてくれたことは間違いないのぅ。・・・お礼としてはいまいちじゃろうが、これをやろう」
と、老人はなにやら一枚の綺麗な金色の板を渡してきました。
よく見ると、表面にはくっきり浮き出た矢印があります。
「これは『導き板』というモノでな、お主がどこで何をしたいかという事を指し示してくれる不思議な道具じゃよ。見たところ、お主はもう何事にもやる気が無くなっておるようじゃが、最後の余興とでも思って、この矢印が示すところに向かって旅してみるのはどうかのぅ」
老人はそういうと、その場を去っていきました。
・・・孤児院もなくなり、もう何もやる気がなかったライトですが、不思議と老人の言うとおりにしてみようと思いました。
その導き板が示す方向へ旅するために、かつてドラゴン討伐を夢見たときに作った武器を持ち、残っていたわずかな食料を持って、歩み始めます。
そして、彼の物語は今まさに、その瞬間からようやく始まったのです・・・・・・・・・・。
・・・ようやく始まるであろうライトの物語。
でもほぼダイジェスト風味です。これ下手すると新連載にしそうで・・・・結構きつい。
なぜ劇を事細かく考えて設定したんだろうか自問自答。




