272話
もうそろそろまた一波乱起こしてもよさそうかな
ミヤゲの仮婚約者として打ち合わせた翌日、ジャックは謁見の間にて3人の皇子たちと対峙していた。
その傍にはミヤゲが立ち、静かに表情を変えず、目をつぶって黙っている。
(ルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナルナ・・・・)
・・・・なんとなくだが、ジャックはミヤゲが根性で傍に立つジャックを愛しい妹だと思って、我慢しているっぽい心の声が聞こえたような気がした。病的なレベルで。
今まで様々な敵と対峙してきたジャックとはいえ、その病的なレベルに後ずさりして逃げ出したくなるほどであった。
「・・・・というわけでだ、ミヤゲの婿候補としては、実はそこにいるジャックが選ばれ、婚約を施しているのだ」
レント皇帝が後ろの方で玉座に座りながらそう告げ、王子たちを見据える。
その眼光は鋭く、やはりこの3人の皇子たちはもうどこかへ行ってほしいと思っているようにも受け取れた。
「ジャック・・・まさか、聖剣・魔剣使いとして有名なやつか!?」
「所持する武器が勇者と魔王がかつて使っていたあれか!!」
「まさか本人がここにいるとは!?」
情報収集能力の低さがうかがえるようだとその場にいた全員は思った。
聖剣、魔剣所持に関しては、すでに他の国では十分伝わっているだろう。
しかし、この話し方からすると、それ以降の情報・・・神剣の所持などの情報を得ていないようだ。
そして、ジャックがすでに帝国の第3皇女でらうルナや、王国の第2王女のランとの交際もあるということを知らない様子である。
あと、皇帝に言われるまで誰なのか気がついていなかったという点も、落第点と言ったところか。
・・・・実はこの数時間前にシーラが戻ってきて、バルビモル王国についての情報を集めて来ていた。
それによると、どうも情報収集能力が他国よりも劣るらしく、ひと昔どころかふた昔前の情報が現在流れているようである。
そのため、ジャックについての情報もそこまでないようだ。
シーラがどのようにして情報を集めたかは疑問が残るが、まあいいだろう。
ジャックが所持する聖剣と魔剣、その両方ともかつて勇者と魔王が所持していた武器であり、強力なものであると理解しているのは間違いないだろう。
その武器を所持しているという情報のみでも、この三人の王子たちにとっては太刀打ちできないほどの相手と理解させるには十分である。
・・・・とはいえ、こういう武器の事で権力を得てやるような方法はジャックの好むことではない。
しかしながら、この方法が一番効果的だろうと考えられたゆえにやっているだけであり、この後ジャックはこのもやっとした気持ちを晴らすために運動でもしようと決めた。
何はともあれ、ジャックが婚約者(仮)であるならば、太刀打ちできないと王子たちは思ったのであろう。
「「「すいませんでした!!」」」
すごくきれいな土下座をした後、謝罪を述べていき、嵐が去るかのようにあっという間に帰国していった。
正直言って、ここまですんなりと事が運ぶとはジャックもレント皇帝もその他の人達も思っておらず、そのあまりの速さに皆あっけに取られていた。
「・・・まあ、なんだ。ご苦労だったな」
あまりにも楽過ぎたために、皇帝もどういえばいいのかわからないようで、結局ジャックに仮婚約者として働いてもらったということに対するねぎらいの言葉をかけ、この王子たちの襲来は終わった。
・・・・だが、ここでふと嫌な予感をジャックは感じ取った。
あまりにもあっさりしすぎる王子たちの対応に、何処か疑問を浮かべる。
普通、この程度の事で引き下がるような者達だろうか。
バルビモル王国の者たちはナルシストと言うが、あの王子たちにはそのナルシストのかけらもなかったように思える。
そもそもナルシストという定義は何だろうか。
自分が大好き人間というふうに思われがちだが、要はそれだけの自分に対する妄想力があるようなものであるとも受け取れる。
それはつまり、妄想の結果自分にとって都合のいいように受け取るようなことをする人であるとも意味するのではないだろうか。
その不安を抱きつつ、ジャックは念のために自身のその推測をレント皇帝に話してみることにするのであった・・・・・
いやにあっさりと引き下がった王子たち。
その行動力にジャックは疑問を抱き、念のために皇帝にこの後何が起きるのかの予想をジャックは述べる。
一方で、ミヤゲはミヤゲでふと、あることに気がついてしまい・・・・
次回に続く!!
・・・ミヤゲが気がつくこと?彼女が一番愛しているのは誰でしたっけ?その人と一緒に居たいためにどうすればいいのかと考えたら、どのような結論に達することができるでしょうか?




