265話
ちょっと夏の生活
村にジャックたちが帰郷して数日たったお昼時、剣戟の音が時折山の中から聞こえてくる。
家の仕事手伝いの合間の休憩時間中、ジャックたちはそれぞれ互いの相手をして己の技量を高めていた。
山村なので、適当なところの木々を斬って広場にして、そこで模擬戦をできるようにしているのである。
キィンッ!!ガァン!!
「よっとはっとそっと、まともに受けたらやっぱり結構危険だね」
「ひょいひょいひょいっと受け流して避けているジャックの方もすごいですわよ」
軽く話しているようだが、互いに武器を撃ち合い、火花が散っていく。
現在の模擬戦はジャックとルナの二人である。
ジャックは聖剣・魔剣・神剣を持ち替えたり投げたりし、ルナはガントレットを巧みに扱いながら細かい動きもして攻撃を仕掛ける。
一方で、もう一つの組み合わせの模擬戦も行われていた。
ガキィン!!
「まともに戦えば俺だって結構強いんだよ!!」
「いつものようにぐちゃってなりなさいよロイス!!」
リンとロイスの互いの模擬戦だが。いつもなら余計な一言で虐殺されるロイスも、真正面からの戦闘であるならば持ちこたえることはできていた。
大剣でメイスを防ぎ、つばぜり合いで受け流していったりなどと、普段の様子からはわからないほどの戦闘能力はロイスには一応あるのであった。
・・・普段の姿がアレなだけである。余計な一言でリンにつぶされる姿が日常的になり過ぎて、こういうまともな戦闘をしている姿が描写されないだけである。
スカーレットは山の探検とか言ってどこかへ飛んでいっているし、残るカレンは審判役をし、アンド学園長は一応この王国の王女であるランの護衛のようなことをしていた。
ランの場合は適正者ではないから、一応しっかりと身を守らないといけないからであるが・・・。
なお、「王女」と呼んでいないのは別にそう呼ばなくても将来的に嫁いで奥さんになるからだという説明でジャックは呼び捨てで呼ぶようにしていた。
ルナと同じような感じでもあるのでそこまで違和感はない。
「ルナだって帝国の皇女だしな・・・忘れそうになるけど」
「まあ、そう言う身分での区別とかはしていないですわね。でも忘れてしまうのはよくないですわよ」
そうジャックはルナに呆れたように言われたが、互によくわかり合っているので気にしないことにした。
模擬戦終了後、ちょっとした話をジャックはした。
「今年もしばらくたってからルナの帰郷に乗って帝国へ向かうけどさ、また面倒ごとが起こる可能性ってあるかな?」
・・・毎年なにかしらの事が起きているので、ちょっと用心深くなったのである。
「今のところ特にないと思いますが・・・」
「うーん・・・でも話だとよく色々巻き込まれているのを聞きましたし・・」
「まあ、ジャックの事だしね」
「起きるだろうとは思えるわね」
「確定事項」
「不可避だろ」
「・・・・そこまで言うの!?」
まさかの全員一致。ラン王女はまだジャックとの付き合いは皆に比べて浅いが、それでもジャックの身辺で起きた出来事などは話に聞いている。
「間違ってはいないデスネ。魔王様もなにかしらの面倒ごとには巻き込まれやすかったですし・・・」
「勇者様も結構そう言うことがありましたからねぇ」
「確定して何か起きても不思議ではないのじゃ」
「・・・我としても納得がいく。実際その原因の一人でもあったし」
メイド、聖剣・魔剣・神剣の意見も一致。
むしろ何事も起きない平穏な時期がある方が珍しいようであった。
(・・・・誠に遺憾である)
全員のその意見の一致に、ジャックはそう心でつぶやくのであった。
なお、この後帰宅してきたスカーレットも同意見であると述べていたそうな。
皆の返答に遺憾を示すジャック。
ルナと共に交際の状況報告などを皇帝に話すために、今年も帝国の方へ向かう。
今年こそは面倒事に巻き込まれたくはないが、そうは問屋が卸さない。
次回に続く!!
・・・この場にいないミツ、ヨナも、その他ジャックの事を知っている人たちも同意見であるのは確定である。
ある意味主人公の悲しい定めとも言うべきか。




