229話
シリアス回へ・・・・いきたい。
「みょわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
今年もあと3週間ほどになった深夜、学園の寮内で変な悲鳴が響き渡った。
「一体なんだよもー」
「誰だ一体・・・」
その声で目を覚ました者たちは、扉を開けた。
「「「「・・・・はい?」」」」
そして、扉を開けた先の光景を見て全員目を疑った・・・・・。
「「「「「な、な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」」」」
扉を開けた先には何もなかった。
「寮が消失している・・・のか?」
全員の部屋が積み重なっており、部屋の扉の向きが一緒になっているとはいえ、まるでアリの巣の観察キットのような状態と化していたのである。
ガラスはなく、本当にむき出しであるが。ちょうど空も晴れており、月明りによって照らされ、その全貌がよく見えた状態となっていた。
ミミシィッツ・・・っと、部屋が部屋につぶされているせいか嫌な音も聞こえ、下の階にいた全員は部屋から飛び出し、上の階にいた者たちは慌てて飛び降りた。
一応全員適正者であり、飛び降りてもある程度までなら平気にまでなっていた。
寝ていた人もその部屋の中にほかの人が突撃してたたき起こし、そのまま全員が避難をし終えたのを確認したところで、あっという間に部屋が部屋によってつぶされていき、残されたのは瓦礫の山だけであった・・・・。
着替えることができた者は少なく、状況に気が付いて慌てて避難したものだから、寝巻の人が多い。
「一体何がどうなってこうなったんだよ・・」
「俺の私物が・・・・」
「お気に入りのお菓子が」
「買ってまだそんなにしていない服まで・・・」
あちこちで落ち込む寮にいた学園の生徒たち。
ジャックたちとて例外ではなかった。
「うわぁ・・・これなんでこうなったんだ?」
「わかりません・・」
「気配もしなかったのじゃよ」
全員部屋がつぶれ損壊し、いきなり住む場所が消えていたことに、驚きを隠せなかった。
「わたくしの方は、ガントレットは無事ですが、私物が全滅ですわ」
「こっちもひどいぜ。せっかく新調した靴とかが・・・」
「私は元からあまりなかったから問題ない」
「カレンは昔からそうでしょ。こっちなんてつぶれる10秒前まで粘って持ち出したけど、やっぱ全滅しているのよ」
「手抜き工事ですのん?」
「いや、いくらなんでも一晩でこうなるのは無茶があるぜよ」
「あれ?スカーレットは?」
「ココダヨー・・・」
がれきの下から声が聞こえる。
どうやら逃げ遅れて寝ていたようで、つぶされているようだった。
慌ててジャックたちはそこからスカーレットを掘り出した。
幸いにして、彼女にはけがはないのだが・・・・・
「グギュゥ・・・服脱ゲタ・・・」
「男子たち!!あっちを向いてないとメイスで頭をバァーン!!するからね!!」
「「「「はい!!」」」」
リンのその声に、男子一同はスカーレットから目をそらした。頭をバーンとは、何時ものロイスのような目に遭うことを示唆しているので、全員すぐに従う。
がれきから掘り起こした際に、どうも衣服だけがボロボロになって脱げたようである。
ただ、モンスターだからかけがはなかったようで、一応鱗などで大事な部分は隠れてはいたが、善意ある者たちが自身の着ていた服を脱ぎ、着せた。
…余計危ない格好のような気がするが、今はそんなことよりもこの状況の始末である。
全員寝巻の状態でかつ、今は冬なので夜も冷え込んでいる。
それなのに、部屋が全壊した状態なので下手すると翌朝に集団凍死という言葉が全員の心に浮かんだ。
「この惨劇というべきか、状態をどうしようか・・・」
「トリアエズ、暖マル?」
スカーレットが火を加減してはいて、がれきの使えそうな布切れなどから焚火をその場に作った。
その周囲を皆が囲み、暖を取る。
一応この惨劇の連絡はすでに学園長に連絡しに行った人がいたらしく、急いで代わりの場所の確保をしようとしているようである。
「どうして寮がこんな状態になったのだろうか・・・」
全員思っている不思議であった。
寝付く前は確かにいつも通りの状態であった。
だが、誰かの声を聞いて起きたときには、この惨劇が起きたのである。
「というか、最初の声って誰だ?」
「あ、それうちやねん」
誰かが出したその疑問の声に、答えた者がいた。
「戦車の中からの声って・・・トリンか」
適正者1年生の半吸血鬼で引きこもりのトリンである。
彼女の武器は戦車であり、その内部に普段引きこもって、寮の部屋に入らずに車庫をわざわざ作ってそこで寝泊まりをしていたのだ。
「ちょっと喉が渇いてな、水がなかったから出て、そして月明りで照らされたこの寮の状態に驚いて、あんな悲鳴が出てしまったんや」
だが、なぜこのような状況になったのかまでは見ていなかったようである。
というか、真夜中に寝ているのかよ半吸血鬼。ふつう夜の方が起きていそうな気がするが・・・・まあ、そこは個人によって変わるか。
とにもかくにも、原因不明なのは変わりなく、いつこうなったのかまでの正確な時間は不明であった。
「明日からどうなるんだろうか・・・?」
不安が周囲に広がるのであった・・・・・
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SIDE???
「・・・誰にも気が付かれぬようだし、もうそろそろ派手にやっても大丈夫か」
同時刻、焚火から立ち上る煙を見ながら、誰にも気が付かれないような場所で、その者はつぶやいた。
自身の力を徐々に確かめていき、確実な安全性とその実力を測るのに時間を費やしたが、今夜やって見た適正者たちが住む寮の部屋以外の消失と言う方法はうまく言ったようである。
「・・・では、明日の真夜中あたりにでも襲撃をかけるか。出来るだけ多くのデータを取りたいし、この様子ならば皆が相手してくれそうだ」
にまぁ・・・っと口角を上げ、その者はその場から去る。
己の知りたい欲望をかなえるために、彼は今、その適正者たちへの襲撃を決めたのであった・・・・・。
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SIDE????
「そろそろ潜り込んでも大丈夫なころ合いか・・・・」
海岸から川をさかのぼり、その人物は船を下りて首都へと向かう。
時期的にはそろそろ油断されているだろうし、この際年を超える前にこの大陸へと戻ってみようかと思って、その人物は戻ってきたのである。
・・・ただ、戻ってくるというだけなら良いが、なんとなく心奥底で求める者に惹かれたような気がした。
「・・いや、まさかな」
その可能性を自ら否定しつつも、その人物は灰色に輝くその剣を船からおろし、輝きが漏れないように鞘に入れて、聖剣・魔剣がある場所へと、自然に足取りが向かうのであった・・・・・
寮の消失に不安を覚えるジャックたち。
一方で、その周囲には別々の影が迫ろうとしていた。
片方は自身の欲望のため、もう片方は・・・・・・
次回に続く!!
・・・・シリアス回が苦手なんだよなぁ・・・・明るくしたいけど、そろそろ2年時の佳境かな。
「頭がバァ―ン!!」って、その時点で死を意味しているような気がするのは気のせいでしょうか?




