213話
本日2話目
「にしても、このベッド大きいな・・・」
ジャックは、魔王の私室にてベッドに横たわった。
「ふかふか・・・・・ぐぅ・・」
「「「「寝るの早っ!?」」」」
横たわってものの数秒でジャックが寝たのを見て、その場にいた全員がツッコミを入れた。
「あ、そうじゃった。魔王様が使っていたこのベッドは超・安眠効果がある特別製でな、いつでも快適な眠りを提供してくれるという者じゃったよ」
クロがそう解説を入れる。
この部屋に入ってから人の姿になっていたので、ジャックの腰に差した状態だと一緒に寝てしまう可能性があったので、その難を逃れたのである。
「すごいな・・・・魔王の部屋のこのベッド」
「まあ、これは妾が提案した物でもあるのじゃが・・・・・」
感嘆の声が漏れるが、どことなく歯切れが悪そうに言うクロ。
「え?何か問題でもあったのですか?」
「いやのぅ、そもそもこれは表向きは快眠のためじゃが・・・・・本当の使用目的は夜這い防止じゃ。このベッドは速攻で乗った者の眠気を誘って、魔王様の貞操を守る役割を持っておったのじゃよ」
「・・・・なるほど、そちらはそちらで苦労していたんですね」
ポン、とクロの方をたたくシロ。
勇者と魔王、正反対に位置するような人物同士だが、どうやらどちらも女難に見舞われていたようであり、その二人に仕えていた剣同士、通じるものがあったようだ。
まあ、数分ほどでジャックは目を覚ました。
「超・すっきりしたんだけど・・・・」
「スゴイ早く起きたな・・・・」
時間が経ち、そろそろ風呂の時間の様なので魔王の私室から皆出ようとした時であった。
「・・・ん?何か焦げ臭くないか?」
ふと、ロイスがそうつぶやいた。
「え?あんたの屁じゃないの?」
「バカか!!俺はこんな臭いはせんわこのつぶれたむ」
ぐしゃっつ
「・・・ロイスの臭いじゃないようね」
「魔王様の私室を血で汚すのはだめじゃよ・・・・」
とにもかくにも、全員その焦げ臭いにおいに気が付いた。
「まさか火事とか?」
「火事!?」
「いやそれはないじゃろ。この魔王城は火事にならぬように燃えにくい素材でできておる」
ならば、その焦げ臭いにおいは何なのか。
「だんだん濃くなってきていない?」
「なにかこう、油のようなにおいもする・・」
「油じゃと?」
そのカレンの言葉に、クロが何かを思いあったようである。
「油だとすれば・・・まさかあやつか?しかし・・・年月が経ちすぎておるし、もう壊れているはずじゃと・・・」
「なにか思い当たるのですの?」
・・・ギギギギ・・・・ガシュウゥゥゥ・・・・・ガジャ・・・
「ん!!何か変な音が聞こえる!!」
廊下から響いてきたその音に、皆気が付く。
・・・・シュゥゥ・・・・・・ガシャッツ・・・・・ガシャ・・・・ギシシィ・・
「何かものすごくゆっくりとした感じだな」
「何かが壊れかけの様な感じの音ですわね・・・」
廊下の奥の方から、何かがゆっくりと姿を現す。
バチィッツ・・・・バァン!!・・・・・シュ・・・・ガシャッツ・・・
「なんだあれ・・・?」
その姿が近づいてきて、皆その姿がよく見えてきた。
「ゾンビ!?」
「いや、ゾンビじゃなさそうだな・・・・」
その近付いてきた姿を確認し、数人がゾンビだと一瞬思った。
服・・・メイド服の様なものだが、ほとんどがボロボロで擦り切れており、あちこちが変色している。
腕も左腕の方がだらんとぶら下がっており、肩から外れかけているかのような感じだ。
しかし、ゾンビとは違う感じであった。
顔の方は元は整っていたのだろうが、ところどころの皮がはがれており、むき出しになっているのは白い骨ではなく、銀色の錆びた金属の様なものである。
手足の方も、剥けている部分からは同様の物が見て取れた。
「あれは・・・・確か建築家のやつがオプションとして付けたという『メイドゴーレム』とかいうやつじゃ!」
「「「「「ゴーレム!?」」」」」
クロのその言葉に、皆が驚愕の声を上げた。
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「ゴーレム」
モンスターでも出る時があるが、ほとんどは人工的に作り出されたものである。
様々な種類があり、モンスターに対抗する適正者の代用として開発されていた時もあったが、生み出すときの材料費や維持費、整備費、燃料代などコストが高くて断念された。兵器として開発もされたことがあるが、同様の理由で断念。
水晶で作られた『ゴーレムコア』からの信号命令で動いている。魔力、モンスターから抜き取れる魔石、水、空気、燃える水、蒸気、何かしらの光線などを燃料として動く。
中には、人型のゴーレムを愛玩用として創り出そうとした猛者変態もいたが、小型化ができず断念したそうな。
勇者や魔王がいた時代には、より高度な作製技術があったらしいが今は滅んでしまい、失われた古代技術とも言われている。
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通常のゴーレムは人よりも大きい形が主である。
しかし、目の前にいるメイドゴーレムとやらは、人とほぼ同じほどの大きさである。
・・・・しかし、あちこちからは煙や火花が出ており、その様子からもう壊れかけだということが目に見て取れた。
「勇者や魔王がいた時代にはより高度な技術があったというけど・・・まじでか!!」
「すっかり忘れておったのじゃ!!なにせもう稼働していない物かと!!」
どうやら、クロの予想以上にあのメイドゴーレムは長い間稼働し続けたようである。
老朽化によって、もうスクラップ寸前ではあるが・・・。
そのまま、今にも止まりそうな状態でジャックたちにメイドゴーレムが近づいてきた。
「なんでここにあのゴーレムが?」
「もう壊れる寸前のようだけど・・・」
・・・ギシッツ・・・・バチッツ・・・・・・ガシッツ・・・ギシッツ・・・・バァアァァアン!!
「「「「壊れた!!」」」」
煙が全身の隙間から吹き出し、背中の方で爆発が起きて、そのメイドゴーレムが地面に正面から倒れた・・・。
「・・・・もう寿命じゃったようじゃ。老朽化が限界まで進んでおる」
「元は綺麗な感じだったんだろうけど・・・・もうあちこちがボロボロだ」
倒れたメイドゴーレムの周囲にジャックたちは集まった。
「関節部からなにかはみ出したりしてますわね」
「頭の方にゴーレムコアがあるはずじゃが・・・」
後頭部をクロが何やらごそごそして、綺麗な水晶が取り出された。
しかし、その内部の方にひびが入っていた。
「この壊れ具合じゃと・・・もうずいぶん前から稼働停止寸前の状態で動いていたようじゃな」
「というか、なぜ俺達の方に近づいてきたんだ?」
「恐らくじゃが、マスターがいたからじゃな」
「え?」
クロのその言葉に、全員がジャックの方を向いた。
「魔王様と同じ魔力を持つマスターの反応を、このメイドゴーレムは探知して迎えに来たんじゃろう。長い年月が経っても、自身の使命として魔王様の帰還を待っていたのじゃろうから・・・・」
クロがどことなく悲しそうな顔をした。
大昔、まだ勇者と魔王がいたころからこのメイドゴーレムは稼働しており、魔王のそばにいたのだ。
その当時の事を思い出しているようであった・・・。
「・・・これ、直せないのか?」
ふとジャックの口からその言葉が出た。
自分は魔王の生まれ変わりとか言われているけど、魔王とは違う。
でも、このメイドゴーレムがずっと魔王の帰りを待っていたのだとしたら・・・・・このままほおっておくのがなんとなくできなかった。
「ん?できるじゃろ」
「「「「できるの!?」」」」
思ったよりもあっさりとクロが答えたので、全員思わずツッコミを入れた。
「まあ、ここに滞在中は無理じゃ。けれど、その関係の職人なら・・・・・・」
ちょっと中途半端。
PCが調子悪いからね・・・・あと若干スランプですので、しばし微妙なところが多くなるかと。




