212話
今回は魔王の私室へ!!
「そこの床の部分と、その壁が罠じゃよ」
「体重50キロ以上の者がそこに乗ると水が」
「バナナの皮があるのは、芸人魂がある人向けじゃと・・・芸人魂ってなんじゃろう?」
現在、ジャックたちはクロの案内によって罠を避けながら魔王の私室とやらを目指して、魔王城の長い廊下を進んでいた。
とはいっても、クラスメイト全員が向かうわけではなく、数人ほどは残ったが。
その原因は・・・・
「まあ、罠の中には金盥が降ってきたり、何か特殊な薬品が流れてきて服のみ溶かされるというモノがあるがのぅ」
と言うクロの一言である。
そのため、大半のクラスメイトが辞退した。
「結局、3分の2ほどいないのか」
「・・・ロイスはついてこなかったほうが良いんじゃないの?」
「いや!!このメンバーの女子達の服が解けるとかそういう点かぐぼぉっつ!?」
「あ、そこは腹に打撃が来るという罠じゃよ」
・・・・いつものジャックたちの集まりの全員ばっかりである。
なお、ロイスの方に下心があるのが見えているため、あえてクロはロイスに隠されている罠を教えないようにしていた。
「私室にたどり着くまでにロイスがどれだけ罠にかかるかな?」
「金盥、ピコピコハンマー、バナナの皮、矢、落とし穴、鉄球、火炎放射・・・・ほとんどの罠にひっ狩りまくっているですわね」
「まあ、あやつの素っ裸は見たくないし、その罠だけにはかからぬように言っておる」
「うん、そうしてくださいですのん」
ジャックたちは魔王の私室を目指すついでに、ロイスがあとどれだけの罠にかかるかかけることにした。
ごきぃん!!
「はぅっ!?」
「うわっ!!あれは痛い!!」
ロイスの急所に床から小さな鋼鉄の玉がぶつかって悶絶した姿を見てジャックは同情し、
ばしぃん!!
「へぶらいっ!?」
「ハリセンって、どういう罠ですか・・・」
いきなりのハリセンに平手打ちされた姿を見て皆が呆れ、
ズドドドドドドド!!
「ひっ!?ふっ!?へっ!?ぽぅっつわぁ!!」
「あ、全部ギリギリ回避ですわね」
矢が真上から大量に降り注いで、すべて根性でロイスがかわすのを見て感心し、
ぱかっつ
「下が針であぶねぇっ!!」
「「「「「ちっ」」」」」
「なぜ舌打ちをする!?」
落とし穴に落ちかけて全員が舌打ちをして、
くわぁぁぁぁぁん!!
「ごわっつ!?」
「いい音がしたな」
「最高級金盥の仕掛けの様じゃな」
たらいが落下してロイスの頭にでかいたんこぶを作った。
そのほかにも、見ている側が次に何の罠にロイスがかかるのだろうかという期待が出るほど次々ロイスが罠にかかっていく。
「へぶぅつ!?」
「みやっつ!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあっつ!!」
「おあちゃぁぁぁ!!熱湯はひでぇぇえ!!」
「・・・・最近さ、思うことがあるんだよね」
「どうしたんですのジャック?」
「ロイスってあれだけ罠にかかっても死なないからさ、最近人間をすでにやめているのではないかと思って・・・」
「・・・・・それはね」
「全員が思っているのよ」
「「「「うんうん」」」」」
そのロイスの光景を見て思ったジャックのつぶやきに、その場にいた全員が同意してうなずくのであった。
なんやかんやと、ロイスばっかりが次々罠にかかるだけで、ジャックたちは無事に魔王の私室の扉前に来た。
・・・すでにロイスは満身創痍であるが、これでも生きている。
「さてと、クロ、ここが魔王の私室前でいいんだよな」
「そうじゃよ。で、その扉の取っ手にマスターが触れればいいのじゃ。魔王様の生まれ変わりでもあるマスターの魔力でも、この扉は開くようになっているのじゃよ」
「ふーん、魔力がカギ替わりみたいなものか」
「魔力も、魂で固定されている波長の様なものがあるらしくてのぅ・・・勇者が混じっていようが魔王様自身の魔力の波長さえあれば開閉可能なのじゃ」
この城の建築家による設計で、魔王の私室は魔王自身の許可と言うか、魔力でしか開閉できないようだ。
「えっと・・クロに流す感じと同じかな」
魔剣に魔力を流すのと同じような要領で、ジャックは魔力を扉に流した。
ズズズズズ・・・・
「開き始めたな・・・」
魔力を流して数秒後、すぐに反応があって扉が開いた。
「・・・・・家具少ないな」
魔王の私室は、かなり広い部屋であった。
しかし、見渡す限り目立つのは大きなベッドと、何か書物が入れられている大きな本棚。
机の上には何か考え事でもしていたのか図面のようなものがあった。
「・・・・ここに来るのも久しぶりじゃよ」
どことなく、懐かしそうな声がクロから出る。
「このベッド・・・大きいですわね」
「キングサイズ?」
「ああ、それは・・・・・・・魔王様自身の寝相が悪くて落ちるのを防ぐためだけじゃ」
・・・・思ったよりも情けないような理由がクロから出された。
「この本棚にある本は・・・・・『魔法図鑑』、『適正者の武器の特性』、『#$%’$&』・・あれ?読めないようなタイトルのが多いわね」
「それは妾にもわからんのじゃよ。魔王様だけはその言語が分かっていたようじゃがのぅ」
「魔王だけが分かる言語って・・・なんだそれ?」
この世界の言語は一般的にほぼ統一されているようなものである。
だが、中には民族限定とかそういう物もあるのだ。
「魔王様は勤勉な方でもあってのぅ、様々な書物を読めたのじゃよ」
なんでも、そう言ったものを調べたりして学ぶのが魔王の趣味だったらしい。
「わからないことがあれば、自らすすんで考え、常に魔族を引っ張るような御方じゃった・・・まあ、自身の立場というモノを考えてほしいという者が多かったがのぅ」
当時、魔王は多くの魔族達に慕われていたので、万が一があってほしくないと心配した人が多かったようである。
歴史とかで魔王と勇者の戦いと言うのがあるけど・・・・・この裏では苦労してそうな人が多そうだ。
「勇者様も似たような人でしたよ。大勢に大切に思われながらも自ら前線へ進んで出向き、よく支援してくださった国王が頭を抱えたらしいですからね」
勇者側は勇者側で苦労があったようだ。
「特に問題が多かったのは女性関係でな、魔王様自身鈍感と言うか、鈍いというか・・」
「あー・・・・わかりますね」
何やらシロとクロの間で共通してわかったことがあるらしい。
そして、その声を聴いてジャックの心がなぜか肩身が狭いように感じるのは気のせいだろうか。
「魔族と人間との戦いが激化してきて、魔王様の子孫を残そうとして夜這いをかけようとした輩がおったり、積極的に寵愛を受けようとしようとする輩が多かったのじゃよ。いつの間にか惚れるやつが多かったからのぅ・・・」
「あー・・・こっちはこっちで勇者様に惚れて突撃してきたりした人がいましたからね・・・・・」
「ジャックはジャックで、私たちの告白を聞くまで本当に同じような感じですよ!!」
「うんうん、鈍さは死んでも治らない」
「分かるですのん・・・いつの間にか惚れこまされながらもわかってくれないというもどかしさがですのん」
「わかるぜよなぁ、その気持ち」
シロとクロの会話に、いつの間にかルナたちが混ざる。他の女子達が混ざって他の男子への文句も入り混じる。
魔王の私室にて開かれた突如の女子会・・・・・・ジャック含め他の男子たちからしてみれば入りようがない空間である。
「・・・いつの間にか剣から人の姿になって会話しているけど、俺としては物凄くなぜか肩身が狭い・・」
「なあ、女子に囲まれるのってうらやましいとは思っていたが、ああいうふうに言われると辛いってのがよくわかるな」
「うんうん、よーく分かる」
「苦労しているんやなぁ・・・」
男子は男子で、謎の一体感を得るのであった・・・・・
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ギギギィ・・・ガショッツ・・・・・ガッシャ・・・ギギガシャア・・・・
ジャックたちが謎の一体感を得てる一方で、魔王の私室に向かう影があった。
もうほとんどが限界に近づき、煙が噴き出て、部品がボロボロとこぼれていく。
内部はあちこち火花が散り、パイプからは液体が漏れ出す。
だが、ソレはやっとの思いでその私室へと、感じたその存在に向かって力を振り絞り、進むのであった・・・・。
女子会、男子会が突如魔王の私室で開かれた一方で、そこへ向け何かが歩んできた。
その姿を皆が見たとき、クロがその存在を思い出す。
忘れられた、もう動いていないと思っていたとある作品を・・・・・
次回に続く!!
・・・ロイスがすでに人間やめているのではないか疑惑。すでにクラス全員が感じている模様。




