特別閑話 年末
年内最後の閑話!!時間軸や人物関係があやふやな感じにしているのですが・・・・・今年最後ですがどうぞ!!
適正者たちが通う学園も、年末になれば物凄い大忙しとなる。
「ごみはまだ出ているそ!!」
「2階の廊下は磨いたか―!!」
「寮の大掃除だぞ今畜生!!」
寮内では今まさに、年末の大掃除の真っ最中であり、朝から一種の戦場と化していた。
ここでモンスターたちが出現してくると、何時も以上に鬼気迫る雰囲気で一気になぎ倒し全員素早く戻ってきている。
「ごみ屋敷と化している部屋も片付けろー!!」
「誰の部屋がごみ屋敷だ!!」
あちらこちらでやれ洗剤が足りないだの、やれ届かなくて掃除しにくいなどの文句が聞こえてくるが、全員一生懸命新年を迎えるために掃除に励む。
全員きちんとできるように、作業分担もされていた。
「こういう壁とかは俺たちの仕事ってか」
「フキフキキレイニ、ピッカピカ―」
ジャックとスカーレットは寮の外壁の掃除を担当していた。
・・・飛行可能な適正者とモンスターなので、適任だったからである。水魔法を扱える適正者もいることはいるが、こういう細かい掃除とかはやはり飛べる人がやらないといけないというわけで、そこに回されていた。
ジャックは聖剣での剣技「白き翼」で飛び、スカーレットは自前の翼である。
いや、ジャックの場合魔力を消費するので長いことやれないが、一応御節約として極限まで抑えている。
スカーレットは元から飛べてはいのだが・・・・翼を羽ばたかせて飛んでいるところからどれだけの揚力が発生しているのだろうか。
そこは不思議なところであった。
一応それぞれ掃除のための服装である。スカーレットはもちろん飛行時にはズボン着用が義務付けられている。
本人は気にしていないようだが、女子一同からの要請だ。
「自室の整理とかも大変ですわよね」
「こういう時によく何か見つけるよねー」
ルナたちもそれぞれの自室の掃除をしていた。
ルナは第3皇女であり、帝国にいたときは部屋の掃除は侍女とかがやっていたのだが、ここでは普通に生徒扱いなので自分できちんと掃除をしていた。
「冷蔵庫の裏とかは今の時期は嫌ですけどね」
「あー、あの黒光りする奴か・・・・」
モンスターではないのだが、何処の時代どこの世界でも嫌がられるあの昆虫もこの世界にはいた。
ふと窓の外を見ると、外で外壁を掃除しているジャックたちの姿があった。
「空を自由に飛べるのっていいですわよね。ああいうのを見るとうらやましく思えるのですわ」
「魔力のを消費しているからそれなりには疲れるらしいけど」
「それでもいいもんはいいよなー。師匠にかっ飛ばされて飛んだのはあるけどやっぱ自由に飛びたいよな」
「それ飛ぶ違う、ふっ飛ばされている」
空を飛びたいなと思うのは、適正者どころか地上を歩き回る生きとし生けるものたちが持つ願望であろう。
「しかしなぁ、スカーレットにズボンのセンスは惜しい!!ここはスカートの方がやっぱりいいとおも」
「あほか!!」
どずぅぅん!!
「・・・リン、ごみが増える」
「そうね、増やしてしまったので責任もって捨ててくるわね」
いろいろと表現できないような状態となったロイスを、リンは引きずっていくのであった・・・・・。
夕方ごろになり、一通りの掃除が終わって寮はピッカピカになった。
「おー、すっきりしたなー」
「あとは、自分たちの掃除だけよ」
寮に備えられてある風呂に、ジャックたちは入浴をすることになった。
寮のお風呂はきちんと男湯と女湯に分けられているので、それぞれ分かれて入浴する。
覗きが出ることはないだろう。覗いたら下手すると死人が出るのはこれまでの経験上周知の事実となっているのだから・・・・・。
「あ~・・・・やっぱ風呂は良いな・・」
「ちょっと爺さんぽいぞ」
「そこまで年寄りじゃねぇよ」
ロイスの言葉に、やる気ない感じでジャックはツッコミを入れた。
「マスターは若いですよ」
「そうそう、年寄りと言う方が年寄りなのじゃ」
シロとクロもだらんとやる気ない反論を述べる。
なお、彼女たちは女湯の方からツッコミを入れている。
「冷たい水からお湯になっているだけなのに、どうしてそれに浸かると気持ちが良いのかしら・・」
「ほぐされる感じがいい」
「分かるですのん」
「ジポンの温泉が懐かしいぜよなぁ・・・・」
「ギュゥ・・・」
女湯の方ではルナたちがいた。シロとクロはこちらで人の姿になって一緒に浸かっている。
本当なら武器の姿のままでジャックの方に行きたいが、さすがにジャック以外の裸の男性の姿を見るのは嫌だからである。
スカーレットも一緒に入浴をしており、力を抜いてぷかんと浮いていた。
翼の方が重りとなるのか背中から沈んでおり、尻尾も湯の中でくるくる回して舵を取っているようである。
「・・・・こういう入浴って気持ちがいのだけれどもね・・」
リンだけはこのメンバーでの入浴が嫌であった。
理由としては、浮かばない者と浮かぶ者、持たざる者と持つ者の差がはっきりと見えてしまうからである。
リンは前者の浮かばない者兼持たざる者、残りは後者の者たちであった。
シロとクロはそれぞれ聖剣・魔剣とは言え人型の時の姿はスタイルが良い。
というか、最近成長してきているような気がしていた。
ルナ、ミツ、ヨナの3人は元からスタイルが良いのはわかるのだが、ここで圧巻なのがカレンとスカーレットである。
カレンがこのメンバーの中では一番持つ者であり、スカーレットはカレンには及ばないものの、身長などからかなり大きく見える。
オーマイゴッド、神は死んだ、この世は必ず公平というモノがない。
リンの脳内にはそれらの言葉が浮かんだ。
「・・・聞きたいけどさ、どうしたらそんな体形になるのかな?」
ここでふとリンは皆に聞いてみた。
もしかしたらという望みはあったが・・・・
「普通にきちんと毎日の生活リズムを整えることですかね?」
「というか、リンと変わらない」
「素振りを続けることぜよかね?さらしを巻き付けないと邪魔ぜよが・・・」
「種族上の特性ですのん?」
「ワカンナーイ」
期待していた答えはなかった。
・・・・・風呂場から上がると、リンが落ち込んでいたことに男湯にいた一同は何があったのか察したので、全員憐憫の目を向けた。
その後は全員着替えて新年を迎えるために着替える。
着物に着替える者が多いが・・・
「グギュ・・・翼と尻尾が・・・・」
スカーレットの場合、着物が着れなかったのでいつも通りの服装になった。
残念そうな顔をしていたので、慰めるために皆激辛のお菓子をスカーレットにあげた。
そして、全員新年を迎える準備はできた。
「よし、後は年越しだけだ!!」
さて、続きは来年です。閑話にしては珍しく連続の話ですね。
今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。




