204話
毎日投稿の予定はないのに、なぜかしてしまう自分とはいったい。
学園祭の午後、ジャックたちはめまぐるしく仕事をしていた。
「あー、学園祭終了まであと4時間ほどかー」
時計を見てそうつぶやくやつがいたので、全員時間を把握したが、まだ続くのかよとその場にいた皆の内心はツッコミを入れた。
「にしても、本当に繁盛しているよなココ」
ふとジャックが廊下を除いてみるとかなりの人数が並んでいる。
人間も魔族もいて物凄く多種多様だが、やはり・・・・
「本物みたいな勇者や魔王がいるって評判が広まったのが原因だよね」
「本物みたいなというよりも、その生まれ変わりでもあるわけだから本物と言ってもいいと思うぞ」
「いや、本人たちとは違うから言い切れないんだよな・・・」
客の列を見てジャックは複雑な気持ちになる。今ここに並んでいる客は、ジャックの前世にあたる人を目当てにして並んでいるようなものだが、その生まれ代わりであるジャック本人を目当てにしてはいないだろうと思っているからだ。
「いや・・・女性客も結構いるんだけど、自覚ないのか?」
「出来るだけ変な女が付かないように協力をお願いいたしますわ」
「ああ、夫となる人に変なのが付かぬようにしっかりするぜよ!!」
何やら女子は女子で何かしらの解釈をしている模様。
とりあえず気を取り直して慌しく働いている時であった。
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴーーーーーーーーーーーー!!
「なんだ!?」
いきなり学園全体に緊急事態を知らせるかのようなサイレン音が響き渡った。
『・・・あー、学園祭の途中だけれども、ここで緊急事態のお知らせよ』
サイレン音の終了と同時に、アンド学園長の声が学園中に流れ始めた。
そういう魔法の類で聞こえるようにしているのだろうが、声の感じからして何かものすごくいやな予感をジャックは感じとった。
『首都近くで現在突如現れた植物型モンスターの大群と適正者たちの交戦が行われているのだけれども・・・・状況が圧倒的に不利になってきているので急きょ学園中の適正者たち全員で向かわなくてはいけない状況となりました。適正者の生徒諸君は今すぐ指定された場所へ向かってください。繰り返します・・・・』
「モンスターとの交戦!?」
ざわっと、その場にいた全員が驚愕しつつも、皆素早く己の武器を取って放送で示された場所へ向かって駆けだした。
学園祭の期間中、学園のOBでもある適正者の人たちが、学園の生徒たちが学園祭を楽しめるように、万が一のモンスターの出現に備えていまこの首都に集まっていたはずである。
そして、交戦中と言っていたことから戦闘になったのだとわかるのだが、ジャックたち学園の生徒全員が狩り出されるということは、すごく不味い状況であることが分かっていた。
服装は皆メイドや執事服などと統一感はないが、緊急事態なので急いで走って現場へと急行する。
ジャック自身も今の時間は魔王の格好をしてはいたが、気にせずに急いで駆け付けた。
適正者の人達は身体能力が常人以上であり、素早くその現場にたどり着いた皆が見たのは・・・・
「な、なんだあれ・・・・」
不気味にうごめく木々のようなモンスターたちと適正者たちの交戦の様子だった。
数が多く、密集しているところからまるで森のようにも見えるのだが、根っこが地面から盛り上がって少しづつ、けれども確実に首都へ向かって前進しているのが目に見えて分かった。
木々の枝には不気味な赤い実がなっており、それを触手のようなものが適正者たちに投げつけたりしている。
「ぎゃぁぁぁぁl!!」
命中した適正者は全身をその木の実の汁で赤く染めて、もだえ苦しむ。
地面がじゅわじゅわといっており、とりあえず触れたらまずいようなものだとわかった。
「この木々は・・・・・モンスターだよね」
「ちぃっ、厄介どころじゃぞ!!」
「『スコヴィルエルダートレント』ですか・・・」
クロとシロはすぐにそのモンスターが何かわかったようである。
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「スコヴィルエルダートレント」
植物系のモンスターの中でも1,2位を争う。マザーと呼ばれる個体がおり、その個体の周囲を囲むようにして繁殖をする。いくらい切り倒しても、マザーを倒さない限りは増え続けていく。
モンスター・リーパーという実を自身の木の枝にならせて、生やしている触手で、敵に向かって投げつける攻撃を行う場合がある。実の汁は超激辛を超えており、まともに全身に浴びたら痛みで身動きが取れなくなるよりももだえ苦しむ。
木の根を動かして利用し、手当たり次第動物だろうが植物だろうが養分を吸いつくし、不毛の土地へと変えてしまう。
耐火に優れて火魔法では効果が薄い。
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「めったに出現しないモンスターじゃが・・・・数が異常じゃ!!」
マザーとやらで数が増えていくらしいが、本来は20体程度の群れの大きさでやめるらしく、それ以上増えもしなければ減りももしないらしい。
しかし、今この場の目視で確認できるだけでも100体以上はいる。
「触手と実に気を付けて切り倒していくぞ!!」
全員に指示が出されて、ジャックたちは己の武器を振るい切り倒していく。
火に耐性があるので燃やし尽くすのは無理だが切り倒すぐらいならできる。
「マザーを狙え!!」
「他の木々とは違う姿のはずだ!!」
これ以上数が増えるのもまずいので全員でマザーを探し切り倒していく。
しかし、スコヴィルエルダートレント側の反撃が凄まじい。
ずどどどどどどどど!!
「雨のように大量じゃん!!」
「下手に斬るとその汁がまき散らされるぞ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
スコヴィルエルダートレントが自身の武器としてなげつけてくるモンスター・リーパーは重量があり、すごい速度で飛んでくるので直撃したらただでは済まない。
しかも、実自体もよく熟れているのか簡単に爆発四散しやすく、その汁がかかった場所には激痛が生じる。
「ちぃっ!!避けるしか守る方法がないのかよ!!」
「しかも、触手からの攻撃も厄介です!!」
飛び交う触手に飛び交う木の実。
モンスター自体を切り倒し続けるものの、マザーがいるせいか、一向に数が減らない。
「このままだと完全に不利だな・・・・」
学園長の魔法がぶっ放されている気配もするが、マザーとやらには命中していないらしく、あちらこちらでまたスコヴィルエルダートレントが生えてきている。
「うちーかーたーはじめ!!」
「ん?」
ふと、聞き覚えのある声がしたので振りむくと1年の適正者のトリンの武器である戦車が見え、其の砲弾がジャックの真横をかすめていった。
「あぶなっ!?」
「あ!!ジャック先輩ごめん!!」
トリンの方ではジャックの事に気が付いたようである。
魔王の衣装の一部が巻き添えを喰らったのか少し破れていたが、ジャックにけがないようなのでほっとしたようであった。
「戦車か・・・確かにこれならあの木の実の汁攻撃は避けられるよな」
トリンの武器は戦車。装甲が厚いので頑丈であり、防水性もあるのか汁まみれにもかかわらず内部にいるトリンには被害がないようである。
洗車の時は地獄になるだろうが・・・・・・。
「あレ?ジャック先輩でスね!」
別の方向からも声が聞こえたので見ると、鉄籠に入っているアインの姿があった。
彼女の武器は全身を包み込んで突撃する鉄籠と呼ばれる特殊な武器であり、こちらも木のみの汁対策はできているようである。
・・・鉄籠から出てきた時に、まな板が胸に張られていることはツッコミを入れないでおこう。
リンと同じような感じがする。ロイスと同じような運命はたどるまいとジャックは思った。
どうやら、それぞれの適正者たちが切り倒していくうちにみな分断されていったようである。
ルナたちの姿が見えないのが、ジャックにとっては不安だったが、後輩たちの手前その姿を見えるわK寧はいかない。
「そっちでマザーが見つけられたか?」
「いえ、確認できないでっせ。砲弾貫通で測定をしているんやけど、なかなか・・・」
「コッチも同じヨうな感ジです。その様子ダとジャック先輩も見ツけてナいようですね」
「ああ、マザーを倒さないとこのモンスターの群れが片付かないからな」
スコヴィルエルダートレントをすべて切り倒すにはマザーを討伐するのが最優先。
しかし、その肝心のマザーがどこにも見当たらないのだ。
「シロ、クロ、何かいい考えがないか?」
「とは言われましても・・・・勇者様の時はこのモンスターたちの群れは平均並でしたし、すぐわかりやすい特徴があったので経験的にはアドバイスは不可能です」
「魔王様の時はあれじゃ。全部ふっ飛ばしたほうが良いと勢いよく魔力をぶっ放して跡形もなく消し去っていたのじゃ」
参考に全然ならない。
「というか、魔王の方が無茶苦茶なほうがするんだけど・・・・・・」
「あの人はのぅ、そういう点では思い切りがよかったのじゃ」
とはいえ、同様の事は今のジャックには無理だ。「斬撃衝撃波」で切り倒せばまとめていけるだろうが、現在適正者たちがこのモンスターの森中を駆け回っており、万が一にでも巻き込まれたら目も当てられない状態になるのは間違いない。
そもそも、一気にすべて切ることができるかも不明であった。
「ん?」
ふと、ジャックは足元に違和感を覚えた。
みると、地面がからからに乾いて砂と化してきている。
「まずいな・・・・もう養分を絞りつくしているのか」
スコヴィルエルダートレントはあたりの養分をすべて絞りつくしていくモンスターでもある。
このままにしておけば、討伐しても砂漠地帯となりそうなのは目に見えている。
「戦車のキャタピラはこの程度なら平気でっせ」
「こっちハ鉄籠の機動力が失わレてしまうノでそろそろ戦闘不能」
トリンとアインの二人がそう言った。
このままでは完全に圧倒的物量差で適正者全員がこのスコヴィルエルダートレントたちによって押し切られてしまう。
「何かいい手は・・・・・・・」
「マザーが見つかればいいのですが、この多さでは・・・・」
「ジャック―!!」
「ん?」
上から何か聞こえてきたので見ると、スカーレットが飛んできていた。
彼女の事は1年生たちにも見られているので驚かれることはなかった。
「どうしたんだスカーレット?」
「ジャック、マザー、発見シタヨ」
「「「なに!?」」」
まさかのスカーレットによって突破口が一気に開いた。
スカーレットなら倒せたのではと聞いてみたが、彼女の主な攻撃は炎のブレスであり、耐火能力があるスコヴィルエルダートレントにはあまり歯が立たないらしい。
ここまで来るのにも触手に襲われていたようで、あちこち服がボロボロであった。
それでも、とりあえず倒せそうな人たちを探したところジャックたちを見つけたのだとか。
「スカーレット、今すぐマザーのところに案内してくれ!!」
「了解!!」
翼を広げ、スカーレットが飛んで案内をする。
ジャックたちは、スカーレットの案内に従ってマザーの元へ向かうのであった・・・・・・
マザーの元へ案内されるジャックたち。
一方でルナたちもそれぞれ頑張ってスコヴィルエルダートレントとの戦闘を繰り広げていた。
果たして、ジャックたちはモンスターたちを倒しきることができるのか!!
次回に続く!!
・・・魔王の格好を今ジャックはしていて、それで聖剣も扱っているとはこれいかに。




