20話
ちょっと休憩回みたいな感じ
シロとクロと名付けてから数日後、今日は休日となったので改めて二人の衣服などを買いに行くことにした。
リンとカレンから借りっぱなしはさすがに悪いからね。なお、洗濯は俺のは自分でしているのだが、シロとクロのは女子勢が全員でしてくれました。さすがに男が女物の洗濯するのはちょっとね・・・。
と言うか、このシロとクロ、普段訓練時は剣の姿になっているのだが、それ以外だと人の姿をとりっぱなしになっている。本物の聖剣・魔剣だと少しさわがれたが、こうして触れ合ってみると普通の女の子と変わらないからそこまで騒がれなくなった。
朝起きる時に人の姿をとり、朝食時には食べはしないけど参加しているからね。剣だから食事をとる必要がないとか言っているけど・・・・。なんかぺたっとくっついてきている。
見た目が美少女そのままなので、他の男子の適正者の人たちからの目線なんかが厳しくなった気がするが・・・。
ジャックはそう感じていたが、大半の目線はジャックへの嫉妬よりも、シロとクロに対するデレデレとしたものである。
ジャックが美少女二人に囲まれているのは確かにうらやましい。だが、その代わりに学園長の厳しい訓練を受けていると聞くので、むしろ大変なんだなと哀れみの方が多かったのであった。
入学式の時に、皆学園長の無茶苦茶さは全員その身に染みているのだから・・・・・。
一方、女子陣営からはシロとクロに対してはいろいろ女子トークとやらで盛り上がっている。
まあ、同年代ぐらいの見た目だからなぁ・・・・・。
と、ジャックは思っていたが、こちらもその考えとは少し違った。
シロとクロの二人はスタイルがいいので、その秘密を聞こうとしているのであった。どちらもスレンダーと豊満と言った対照的な美しさを持っているので、それぞれ人気が高まっているのであった。
まあ、シロはスレンダーとは言ってもどこはと言わないが、それなりにはあったので持たざる者たちからは何とかできないですかと相談されることがあったが。
とにもかくにも、ジャックは二人を連れて買い物をしに行くために今いる首都の中にある、リンとカレンがおすすめだという服屋に向かった。
が、そこまで向かうのにジャックは少しばかり心が苦しくなった。
なぜなら、剣とは言え今は人の姿を買い物に行くためにとっている二人を見る道行く人々の視線を集めていたからである。
「なんか変な注目を浴びてますよね」
「なんでこっちを見る者が多いんじゃろうな?」
「お前ら二人が目立っているからだよ」
シロとクロは自覚がないようである。まあ、話を聞いたけどこの二人は勇者と魔王の前以外ではほとんど剣の姿のままでいたようだしな・・・。何で今さら人の姿をとり続けたりしているのかと聞いたら、
「勇者様と一緒にいたときは戦乱の中でしたから、こうしてゆっくりとできなかったのですよ」
「魔王様も戦いの中におったから、こうしてゆっくりおれなかったのじゃ」
と、何やら重い答えが返ってきた。
ちょっとジャックは言葉に詰まった。この二人がいたのは勇者と魔王がいた時代、つまり人間と魔族が争っていた頃なのである。
しかも、勇者と魔王が戦っていた時がまさに最大の衝突時期。今のこのような平和な雰囲気などはなかったはずなのだ。
そのような中で、こうしてゆっくりと過ごせたのだろうか・・・。
と、ジャックが難しい顔をし始めたので、二人とも慌てた。
「で、でも、今はこうして普通に過ごせますし」
「学園長の訓練などというものがあるが、それでもマスターが考え込むような必要はないんじゃよ」
「・・そうか」
二人とも、俺が考えていたことが分かったのかな?
二人のその言葉は、ジャックが考え込むのを止めさせてくれたのであった。
とりあえず、目的の店に着いた。
「マスター、これはどうですかね?」
「これも妾に似合うよな?」
二人とも試着をしていくが、どれも似合っていた。だが、下着の時は見せるな。服を着たときだけにしろ。
俺が二人の彼氏だと思われたのか、店内の女性客、男性客の方々からうらやましがられる声と怨嗟の声が聞こえるような・・・。
どれも似合っていたが、予算には限りがあるので買える分だけ買った。
二人とも満足げな表情だったので、所持金が結構減ったとはいえなんかこっちもうれしくなった。
いい気分で買い物を終え、寮にジャックたちは帰宅するのであった・・・。
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「・・・以上が、聖剣・魔剣及びその所持者についての報告です」
「なんというか・・・ものすごく普通の生活をしているな」
「普通すぎてなんというか」
ジャックたちの観察の報告を、学園長は城で国王たちに報告していた。
ジャックの武器が聖剣・魔剣だと完全に判明したので、一応週に一度の報告をするようにしたが、その報告内容が一般的な適正者の学園生活そのままであったため、全員どう反応してよいのか困った。
なお、聖剣・魔剣についてまだ他国には情報公開していなかった。
「聖剣・魔剣ともに強力な武器らしいが・・・こうして聞くと普通の少女と変わらんような気がするな」
「まあ、ジャックという者には野心などがないようですし、そこまで心配しなくてもよいのでは?」
「ですが、勇者と魔王それぞれを神聖視するようなやつら、もしくは他国がこの事実を知ったら彼に接近してくる可能性がある」
「適正者はモンスターに対抗できる存在。ですが、国の兵器ともいえるような存在でありんすな」
「他国・・・特に、隣国の『ギアス帝国』あたりにでも知られたらとりこもうとしてくること間違いなしですな」
ギアス帝国・・・近年、活発化してきている国で工業などが盛んであり、また軍事などに力をいれはじめているのである。
今の平和な世の中、帝国に対し警戒をする必要があった。
「一応、友好条約を結んでいるのだから戦争を仕掛けられる可能性は低いが・・・」
「聖剣・魔剣の存在を知ったらまずいことになりかねんな」
今のところ、学園内とこの場にいる者たち以外にはシロとクロが聖剣・魔剣ということは知られていない。普通に人の姿でいればそんな風には見えないからだ。
「だが、人の口は防げぬ。そのうち知られるだろう」
「噂というのは厄介なことでありんすからなぁ」
いくら秘密があってもそのうちバレる。それはその場にいた全員の意見でもあった。
「そういえば、もう一つご報告が」
「なんだ?」
「学園に打診がありましたが、そのいま話題に出た帝国の皇女の1人が留学できないかと」
適正者を要請する学園は他の国にもある。そのため、国ごとに留学させてそれぞれの良い所を学ばせる留学があるのだが・・・。
「タイミングが合いすぎていないか?」
「もうすでに帝国に聖剣・魔剣が知られているのか?」
「いえ、偶然のようです」
「偶然か・・・その皇女は?」
「第3皇女『ルナ=ギアス』です。今年の帝国での水晶の儀にて適正者となった者で、武器は・・・ガントレットですね」
「まあ、友好条約を結んでいるから拒否できないが、完全に帝国に知られるだろうな」
頭が痛くなる問題は、まだまだ続きそうなのであった・・・。
厄介ごとがきそうだな
 




