195話
本日2話目
そろそろ新章に移るかな
試合終了後、ジャックは一休みをしていた。
先ほど、終了と同時に正式に公認されてこれで一応は邪魔者はいなくなるはずである。
文句を言いたそうにしている貴族もいたらしいが、皇帝陛下があらかじめ調査をしていたらしく、降格処分、爵位剥奪、減給、などをちらつかせた瞬間すべて黙った。
・・・皇帝の恐ろしさと言うか、そういうのも味わった瞬間である。
「とりあえず、これで心配事はなくなったのかな?」
「ええ、そのはずですわ」
「ジャック、勝ッター」
いつの間にかルナがジャックのそばにいた。
スカーレットも尻尾をフリフリと機嫌良さそうに振りながらちょこんと近くにいた。・・・モンスターなのに、犬っぽいようなとジャックは苦笑する。
「そういえば、ミヤゲさんがほとんど本気で攻めてきていたけど・・・第2皇女がこれに参加してよかったのか?」
これ一応第3皇女争奪戦みたいなものであり、ジャックに勝てばルナとの婚約が認められるという決まりである。
それなのに、ルナの姉であるミヤゲが参加していたが、万が一にでもミヤゲが勝っていた場合はどうなっていたのだろうか。
「ミヤゲ姉様曰く、どうやら私をミヤゲ姉様の所有物みたいにするのだとか・・・・」
「・・・大変だね」
ルナの心中をジャックは察した。
まあ、勝利できたし良しとしよう。
「ついでに、お父様・・・皇帝は試合終了後にミヤゲ姉様を城に連れ戻そうとしたのですが、すでに逃亡いたしまして現在行方不明です」
また自由奔放な旅に出たのかあの人は。
・・・・ん?
「そういえばふと気が付いたけど、第1皇女とか、第1皇子とかルナの姉や兄にあたる人を見ないような?」
正直、皇帝の印象が強すぎて周りが見えていなかった。
「第1皇女である姉は別の国にすでに嫁いでまして、甘い甘い甘い生活をしているそうですわ」
「・・・甘いが何でそんなにはいる?」
「察してください」
「あ、はい」
「第1,2皇子である兄様たちは現在他国へ留学中です。皇帝が帝位を譲るまでですが」
「・・・・会えるのだろうか」
「会えますよ・・・多分」
あの皇帝、帝位をまだまだ譲りそうにもないしな。死ぬまでずっとその地位に居そうである。
とりあえず、ジャックたちは城へ戻り、そのすぐ後にルナとそろって皇帝の前に謁見することになった。
ついでにスカーレットも一緒である。
「さて、このたび正式に我が娘ルナとの交際を公認し、婚約関係になることをまずは祝おう」
「はい」
皇帝のプレッシャーは今回はないのだが、おそらくルナも横にいるからであろう。
・・・・一応隠してはいるけど、相当な親バカであるからなこの皇帝は。
「・・・だが、結婚式を挙げるのはもうしばらく先、学生を卒業してからの方がよいだろう」
「ええ、そのようには考えています」
ジャックはまだ学園の生徒である身なので、そういう結婚式を行うには時期尚早なように思えるからである。
話を聞いていたルナが意識したのか顔を赤くしたが・・・・。
「とりあえずジャックよ、娘をよろしく頼む」
「わかりました」
皇帝がそう告げ、ジャックはその返事に深く答えるのであった・・・・・。
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ジャックたちの退室後、部屋に一人の影が現れた。
諜報部隊に所属する一人である。
「・・・して、処分はどうなっている」
「はっ、惜しそうにしている者やまだ反発しようとする輩がおりましたが、すべて沈黙いたしました」
一応今回ので一気に不穏分子となりそうな者たちは黙らせることができたが・・・
「隠れて汚職をしていた者も、精神的なところから攻撃して、『生きていてごめんなさい』と言うまでになりました」
「・・・・そこまでやれとは言っていないが」
「新人の一人がそうしたようです」
諜報部隊、新人もただいま研修中でもある。
その中の一人がそこまでさせるとはいったい何をさせたのであろうか。
「なんでも、その者が昔考えながら書いていたアイディア帳や、日記、その他もろもろ・・・を暴露したようです。しかも、他の貴族に送るという」
話によると、その新人は王国のとある適正者の弟らしい。流れて帝国に来たところで、その能力から諜報部隊に組み込んでみたのだが・・・・
「うーむ、諜報部隊ではなく拷問の方に行かせるべきだったか」
皇帝にも、たまには失敗はあるのであった。失敗と言っていいのかは不明であるのだが。
「それともう一つ、例の薬についての事です」
「モンスター化させる可能性のあるあの薬か」
今回、貴族の何人かが王国で確認されたモンスター化させる薬を入手していたのだが、すべて下剤などにすり替えており、帝国の薬物を研究させる部署へ調査をするように命令をしていた。
「成分は幾つかは普通の薬品から調合が可能ですが、不明な部分がまだ多いそうです」
「入手ルートや、その販売経路の特定は?」
「こちらも不明。考えられるのは我が諜報部隊を欺くほどの巧妙さがあるのではないかと」
「ふむ・・・厄介だな。この際、王国側との連携をしっかりとったほうが良いかもしれん」
「では、そのように連絡をいたします」
報告しに来た者がその場から消え、皇帝はため息をつく。
「モンスター化させる薬・・・いったいどこの誰がこのようなものを創り出したのだろうか」
考えてみるが、どうも目的とかも掴みにくい。
ただ、これは無差別にやるようなものでもないようなのは確かである。
主にこの薬の販売主はどうもターゲットを野心ある貴族に絞っているようだが・・・帝国の転覆を狙うのであれば、皇帝にその薬の飲料水などに混ぜたほうが手っ取り早い。
それなのにそのようなことをしないのは何か別の目的があるのだろうか。
皇帝だけではこの案件は把握しきれない。
そのため、王国と協力し合う体制を整える用意を皇帝はするのであった。
諜報部隊期待の新人は王国の適正者の弟・・・・当てはまりそうな人物がいるな。
にしても、モンスター化させる薬はいったい誰が作り、何の目的で販売したりしているのだろうか。
次回に続く!
・・・そういえば、謁見の時スカーレットがおとなしくしていたようだけど、あれって寝ているだけです。気が付かれないようにスヤァと寝ています。




