189話
本日2話目
主人公不在回
SIDE貴族
「・・・以上が、皇帝陛下からの通達だ」
「ルナ第3皇女様が賭けられているような物ってことか・・・・」
ギアス帝国のとある建物の一室にて集まっていた者たちは、その皇帝から届いた通達の内容を再確認していた。
彼らは、ギアス帝国の貴族たちや、その子息たちである。
そして、その中でも今回の皇帝からの通達に対して行動を起こした者たちであった。
彼らは、貴族家の三男や妾の子、もしくは去年の夏に親がやらかして爵位を降格された者たちでもあり、もしくは汚職がばれて降格された者たちの集まりでもある。
そんな彼らだが、権力欲があり、皇帝とお近づきになれそうなこのチャンスを見逃すはずもない。
これでうまい事第3皇女との婚約ができれば、将来の出世は約束されたようなものである。
しかし、そうするには・・・・
「第3皇女様が認めた者と戦えってことだが、その相手がだれかはすでに情報が入っている」
一人がすでに調べ上げていたようだ。
「・・・聖剣・魔剣所持者である適正者、ジャックだ」
その告げられた名前を聞き、その場にいた者たちは皆驚いた。
適正者の情報は、どんなドラ息子であろうともそれなりには手に入れている物である。
そして、そのジャックの名前はこの中で知らぬものがいなかった。
「去年、確か表彰されていたやつだな」
「実力もかなりあるらしく、強力な武器と言われている聖剣・魔剣持ちかよ!!」
ジャック本人あずかり知らぬところであったが、どうやら国を超えて権力を求める者たちの間では有名なようであった。
「この相手と戦って、勝利すれば第3皇女との婚約ができるが・・・・・」
「我々に、こいつと戦って勝利する方法はあるのか?」
代理を出すことができるようだが、そもそも相手が悪すぎて代理の者が出るだろうか?
勇者と魔王が使っていた聖剣・魔剣という強力な武器を所持し、自身も相応の実力の持ち主。
クラーケンなどのモンスターも切り倒し、更に去年の夏には皇帝に刃物を向けた適正者たちも倒している。
噂によると、今ではさらに実力が増して、空を自在に舞うとか、いかなるものも飲みこむ漆黒のなにかを操るとか、山をぶった切ったとか、海を切り裂いたなどの話もあった。
・・・・前半はジャックに覚えはあるが、後半は勇者や魔王がやったことが交じっているような気もしなくはない。噂には尾ひれがつくものだ。
とにもかくにも、この相手に勝てるのかと、その場にいた全員が頭を悩ませた。
第3皇女との婚約をして、権力を持ちたい。
だが、それをするには明らかに自分達には分が悪すぎるということがよくわかっていた。
「・・・・この対戦相手をどうにかできればいいと思うのだが」
「賄賂とかは効かないだろうな。ハニートラップもアウトだ」
そう言った金や女を差し向けてということが考えられたが、情報を集める限りどちらも効果は見込めない。
というか、天然ジゴロとかいう話も聞くので、むしろ仕向けた者たちがジャックの味方となってこちらの情報が漏れたらまずい。
「となると、試合前までに代理で恐ろしく強いものを用意するか・・・・」
「暗殺か、それとも試合までに弱らせるの選択だな」
彼らができることといったら、このようなことぐらいしかなかっただろう・・・・・・・・。
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SIDEレント=ギアス皇帝
「以上がその会話の内容です」
「ご苦労、引き続き監視をしておくように」
「御意」
目の前から一人の人物が風のように消えていったのを見て、報告書にレント皇帝は目を通した。
今消えたのは諜報部隊の一人であり、何か動きがればすぐに皇帝の目となり鼻となり耳となるものである。
「やはり、速くも動き出す者たちが出たか・・・・」
このことは皇帝の予想の範囲内である。
強者を呼ぶためにあちこちにいる適正者に代理をできないか交渉する者や、ジャックについての情報を集める者、そして・・・・
「裏につながる者たちにも連絡か・・・」
表があれば裏がある、光があれば影がある・・・・その言葉の通り、いくら帝国内をきれいにしたところで、集まってくる不穏分子はいる。
なので、いっそそれとも連携を取れないかとも考えていた皇帝はそちらにも連絡を取っており、企む者たちの影をつかんでいるのである。
だが、ここで検挙するには時期が早い。
もっと確実になるときまで、皇帝は待つのであった・・・・・・
皇帝は先を読み、あらかじめその企みを見抜いていく。
全ては、娘に幸福な未来が来るようにするためだ。
そのためには、帝国内にいる不穏な者たちを排除していくしか・・・・。
次回に続く!!




