閑話 潜む者
ちょっと忘れかけているというか・・・・
この閑話はやや暗い系です
・・どこかの山の奥の方にその建物があった。
中には人がおり、それぞれが自身が取り組んでいる者に対してのみ興味を持って行動をしていた。
「129番、23番ともに失敗、破棄だ」
「材料がないな・・・・薬草を取りに行くぞ」
「鉄鉱石をあと30グラム、銅鉱石を46グラムか・・」
「熊の骨をこっちへ回してくれ」
「ならイカの甲はこちらに」
それぞれ言葉少なく、互いにいるモノのみを伝え、譲り合う。
そうすることにより、自身の研究に時間をできるだけ割って無駄をなくしているのだ。
余った材料があれば、必要な人へ。
足りないものがあれば、余っている人へ。
それぞれの者が行き来し、互いの研究へそれぞれ没頭していく。
その場で研究を、互いにしたいことをできている者たちはそれで幸せなのだろう。
・・・・だが、そこから生まれたモノにとっては、幸せなのだろうか?
研究の過程で生まれ、実験され、廃棄される。
生き残れたとしてもまた研究対象とされて、無限に抜け出ることのできない地獄。
逃げ出そうとしても、研究施設は厳重に警備されており、出た瞬間に即廃棄の道をたどる。
無事に出られたとしても、その後をどう生きて過ごすかが問題であった・・・・・
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「・・・・・嫌なものを思い出したな」
真夜中、ふとその場の事を思い出した彼は目が覚めた。
たまに夢を見て、その場所での出来事を思い出す。
自身が望まぬ場に顕現され、主がいないのに無理やり確かめられるその感覚。
己も主と共に過ごしたいのに、その主すらおらず、昔見た戦いの場へ加われぬその嫉妬と憎しみが入り混じっている。
傍らを見れば、己自身でもある剣がそこにあり、その当時の出来事を思い出す。
なぜ、自分はこの世界へ生まれ落ちたのか。
なぜ、己には主ができず、自身を動かす肉体があるのか。
そもそも、誰が自身を・・・・適正者が使用する武器を作ったのか。
いくら問おうにも、問いかける相手もいなければ、その答えも出ない。
ならば、自分の心に従ってしまえ。
武器としての心で争いに喚起し、戦いの中に身を置ける世にしてしまえ。
そう思いつつ、彼は静かに行動を行っていくのであった。
その心には、この世に対しての深い嫉妬、憎しみ、そして、己の寂しさが・・・・・・・・・
果たして、その問いに答えはあるのだろうか。
そもそも、適正者の武器とは何ぞや
なぜ、モンスターに対抗できるのがその武器だけか・・・・・・




