178話
1年生時と違って、ちょっと詳しくなっております
ガタゴトガタゴトガタゴト・・・・
「今年もやっぱこういう移動は暇だな・・・・」
「シラタマも今年は成長して大きくなったから空を飛んでいるしな」
荷馬車の中からふと空を見上げると、旋回しながら上空を飛び回る白い塊が見える。
ヤタガラスであるシラタマはすでに成鳥へと成長し、1メートルほどのサイズになっているのだ。
ロイスの頭の上に乗ることはなくなり、寄り添うのだけれども、やはりじっとしているのは性分ではないようで自由に大空を飛んでいた。
「ああやって大空を飛ぶと気持ちがいいんだろうな・・・・」
「あ、『白き翼』があるから俺も飛べるか」
「その手段があったか!?ずるいぞジャック!!」
ロイスのツッコミをほおっておくジャック。
現在、ジャックたちは村に帰るために去年と同じ荷馬車に乗って向かっているのだが、やはりこの旅路は去年同様暇なのである。
・・・学園長の魔法でぶっ飛ぶあれは移動が楽で速いけど、着地の恐怖が怖いしな。
「にしても、今年はジャックは村で大丈夫か?」
「ん?」
ロイスがそう言ったので、ジャックは首を傾げた。
「大丈夫かって、何か問題あったかな?」
「いや、ジャックって今ルナさん、カレン、ミツ、ヨナと付き合っているだろう?」
「そうだが?」
「で、村に帰るけどこの場合まずは両親への挨拶があるんじゃないか?」
「・・・あるな」
「そのあたりなら大丈夫。すでに手紙で知らせていて、『よくやった』と書いてあった」
カレンはぐっと指を立てて大丈夫だと言い切った。
ルナとつながりを持っているので、皇族と近い扱いになりジャックには側室とかは認められるらしい。
で、ジャック自身は聖剣・魔剣というかつて勇者と魔王が使っていた剣を所持しており、素行も容姿も悪くなく、適正者として安定した収入をもらえ、誠実さもあり人気もある。
・・・・結構な優良物件でもあるともささやかれていたりするので、両親とも大丈夫だと判断したようだ。
うん、その判断はどうかなとジャックは思ったが、問題はないようなので良しとしよう。
どことなく微妙な感じはするのだが・・・・・。
実のところ、カレンが昔ジャックに恋心を持っていたのは両親とも知っており、一度はあきらめたのかと思いきや、恋人になって叶った娘の事をうれしく思えているのも原因だったりする。
まあ、娘を不幸にさえしなければというのは、両親共通の思いであるが。
「とにかく、ごたごたとかは村にはなさそうなのはいいんだよね」
「問題は、帝国の方ですわ」
そもそも、ジャックの身分は王国の平民である。
適正者であるとはいえ、皇族であるルナと交際し、将来的には結婚するとなれば文句を言う輩は必ずでるはずだ。
「そこのところは、皇帝陛下に任せるしかないってことだよなぁ・・・・」
賢帝とも言われるので、優れた采配をジャックは期待したい。
そこのところは、もうそのお偉いさんたちのほうに任せるしかないのであった。
昼頃、荷馬車はいったん止まって休憩の時間となる。停車するのは、途中にある小さな村であった。
乗客たちは皆降りて、昼食をあちこちで自由に食べる。
荷馬車にはジャックたち以外にも村に向かう人たち乗り込んでいるようで、去年よりはやや多めであった。
「インスタントランチセットって言うのを買ったけど、味はいまいちだな」
「もう少し、味を調えたほうが良いですわね」
狩りを速攻でして昼食をとるということも考えたのだが、ここは最近売られ始めたインスタント食品とかいうモノをジャックたちは食べていた。
「味がいまいちだし、もう少し改良が欲しいよね」
でも、こういうのがもっとおいしくなってくればこういう馬車の旅とかでも助かるような気がする。
「カァーッ」
「シラタマ、あーん」
ロイスが下りてきたシラタマにエサを与える。
結構シラタマも大きくなっているのだが、こうして甘えるところを見るとまだまだかわいらしい。
「シラタマに春が来るのはいつかなぁ」
「いや、シラタマはモンスターだし、なかなか来ないんじゃない?」
ヤタガラスがもう一羽いればいいけど、シラタマみたいなのはめったにいないし・・・・・。
「俺もお前も独身か・・・」
ひしっとシラタマに抱き着くロイス。でも、寿命とかを考えたらシラタマの方が長そうだし、ロイスよりはチャンスがあるんじゃないかな・・・・?
「そもそも、モンスターって同種同士じゃないと子がなせないもんだっけ?」
「オークとかのような例もあるですし、違う種でも子がなせるらしいですわ」
となると、シラタマに当てはめるならば・・・・・
「同種のヤタガラスじゃなくても別の鳥関係でも大丈夫ってことかな?」
「大丈夫ってことですわね。サイズ的な問題もあるでしょうが、少なくともつがいができる可能性は0ではないはずですわ」
「シラタマは確実にロイスよりもチャンスは多いわね」
「そもそも、ロイスにチャンスはあるのだろうか・・・」
「お前らひどいな!?」
皆の言葉に、ロイスは傷ついたようであった。
「ふぅ、食った食った」
「そろそろ荷馬車の発車時刻ですわ」
昼食を食べ終えて、ジャックたちは馬車に戻ろうとした時であった。
ばさぁっ・・・
「ん?」
ふと、地面に影が差しジャックが振り返った瞬間、目の前にあったのは赤い何かであって・・・・
どすぅん!!
「ぐぇっ!?」
「「「!?」」」」
「へ!?」
「気が付かなかったのじゃ!!」
ジャックは何か柔らかいものにつぶされ、後頭部を地面にうって、皆の驚きの声を聞きながらそのまま気を失うのであった・・・・・
簡単に気絶したかのように思えるけど、油断しまくっていたのが原因である。
戦闘中とかならまだ意識はしっかり保つが、今のはふいうちというレベルどころか、気配が消えていたのからね。
さて、ジャックは何につぶされたんでしょうかねぇ・・・・・




