167話
ちょっと後始末的な話です
牛男を沈黙させ、何とか討伐に成功したジャックは現在、事後報告のために代表的なものとして学園長室に訪れていた。
今回の牛男討伐は適正者のけが人は多く出たものの、死者はいないようで・・・・・ロイスの場合は、肉体的には死んでないけど、精神的には死にも等しいダメージを受けたのかもしらないが、ともかく何とかなったのである。
ただ、ここで出てきた問題があった。
「元は人間だったけど、薬を飲んでモンスターになったことですよね」
「ええ、そのことが事実ならおそろしいことになるかもしれないのよ」
学園長室で、学園長が珍し口調真面目な雰囲気を出していた。
そもそも、今回の牛男は、ルナにいやらしいことをやろうとしたエロ腐れ大馬鹿野郎が、謎の薬を飲んでモンスターへと変貌したものである。
その男は、元は帝国の貴族らしくて、去年の夏の一件で処分を受けてこちらに流れてきたやつらしいとルナが言っていた。
一応、帝国の元貴族が、帝国の皇女に手を出した上に、余罪があるようなのでその一件だけでも大問題であるのだが、それ以上に問題なのがその謎の薬。
「あの男は、一応用心深い人でしたので、何かで実験をしてから飲んでみたのだと思うのですが・・」
あらかじめ、何かを実験台にして、その安全性を確認するようなやつだという。
だが、あの時薬を飲んだ男の反応は予想外とでもいうような表情であった。
「実験台とはまた違う状況だったのか、それとも薬がすり替えられていたのかどちらかでしょうが、どっちにしろその薬が一番の危険物よ」
人をモンスターへと変貌させる薬。
しかも、そのモンスターは今回の牛男のように恐ろしく手ごわい相手になる可能性があるのだ。
いったい誰が、何の目的で作り出し、ソレをどのような入手ルートであの男が手に入れたのか・・・・。
(肝心の事を知っているであろうあの腐れエロ外道大馬鹿野郎は、モンスターと化し、すでに地獄へと向かっただろうし・・・)
「あのー、ジャック?心の声が漏れているわよ?」
「え」
いつの間にかジャックはつぶやいていたようである。
しかも、消沈していた怒りがまたふつふつと沸いているような感じで。
「とりあえず、今回の件は国でも捜査するようよ。今回の件は、へたしたら国家を揺るがすものになる可能性だってあるからね」
誰しもが、その薬を飲むだけで凶悪で強力なモンスターへと変貌する薬であるのならば、悪しき者の手に渡れば最悪の事態へとなるのが目に見えるからだ。
「適正者の数減らしや国力を下げたり、最悪戦争に使用される可能性があるからですね」
「昔に比べると、本当にとんでもないものが出てきましたよね」
「うむ、魔王様が存命のころは、魔族と人間の戦いとモンスターの対処だけじゃったがな」
シロとクロからしてみても、その薬は見たことも聞いたこともないものだとか。
「モンスターは、この世界が生み出し人々を襲う物。それらを人工的に生み出せるとしたら・・・」
「へたすりゃ、世界の終わりですよね」
皆がモンスターへと化していき、最終的にはこの世はモンスターだけの世界・・・・絶望しかない。
とにもかくにも、今後また同様の薬によるモンスターが出る可能性があるが・・・・本当に大変である。
「ふぅっ、それにしても頭が痛くなるような問題が山積みね。ジャック、今夜一緒に酒を飲まないかしら?」
「未成年に酒をすすめますかね?」
さっきまで真面目だった学園長が、またいつも通りの雰囲気に戻った。
というか、その酒確実になんか盛られていそう。
モンスターとか危ない薬なんかよりも、学園長に警戒すべきではとジャックは思ったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そのころ、今回の討伐でけが人が収容されている病院では。
「・・・あれは死ぬかと思った。三途の川とやらが見えたよ」
「カァーッ」
急所をジャックによって一撃を叩き込まれたロイスがベッドで、もう成鳥となったらしいシラタマをなでながら、その時の話をしているのであった。
この世界に回復魔法というモノがあり、その中にある再生治療というモノに物凄く感謝した瞬間である。
下手すると、男でも女でもないようなものにロイスはなっていた可能性があったから・・・・・・。
なお、運び込まれた時には骨折などもあったが、そのロイスの回復力に医師は驚いていたそうな。
ロイスと書いて、不死身野郎と呼ぶ人が最近出てきたとか出てきてないとか・・・本当、この不死身具合に作者自身も驚きですよ。
閑話を挟んで、新章ですかね。そういえば、ミヤゲさんどこ行った?




