166話
本日2話目
さて、どう対処しておこうか
・・・ロイス、肉体的には死んではいないが、精神的な部分で死んだようである。
いや、肉体的にも大事な部分がやられているのか?
慌てて飛んできたシラタマによって運ばれて回復魔法をかけられる中、ジャックはとりあえず・・・
「よ、よくもロイスをやりやがったな牛男!!」
「「「「「責任をなすりつけたぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
その瞬間、その場にいた他の適正者一同のツッコミが重なった。牛男の方も、これには言いがかりだと言いたいのか怒りを増したようである。
「・・・・まあ、ロイスだし大丈夫か」
「ああ、不死身のドMやろうとも言われているしな」
「敵の挑発をして、ひきつけてはいたけど聞いていたこっちもムカついたしな」
「あいつなら火口に突き落とされても、重石を付けて海に沈められても生きそうだしな」
「謎の回復力あるしね」
普段のロイスの不死身っぷりを見ているのを一同は同時に思い出し、ロイスを心配する声は上がらなかった。
周囲から聞こえてくるロイスの話は置いておいて、今はこのモンスター・・・牛男相手にしなければいけない。
「ぐもももももぉぉぉぅ!!」
雄たけびをあげ、突進してくる。
まともにぶつかったらただでは済まない突進だろうが、ちょっとこの勢いを利用させてもらって確かめる。
ジャックも正面から走り、ジャンプしてその牛男の背中に剣を突き立ててみるが・・・
がぎぃん!!
「「「硬っ!!」」」
聖剣・魔剣の両剣でも何とか傷がついたぐらいでまともに切れない硬さである。
「恐らくですが、全身がほとんど筋肉質で引き締まって硬度を高めているようです」
「いわば、筋肉の鎧じゃな・・・・」
そう簡単にはダメージが通らないようである。
とはいえ、全く効いていないわけでもないのでここは数で攻める方が得策か。
「だけど時間がかかりすぎるな」
タフな感じだし、このままだと首都に到達される可能性がある。
「魔法による攻撃が無効化ということは、魔力による攻撃も同様の可能性があるしな」
『魔王のかぎづめ』とか、それらも魔力の塊で攻撃するようなものだし・・・・・
だが、一応あらかじめここまで飛ばされるまでに考えていた攻撃方法がある。
「数で攻めるならやっぱこれかな?」
聖剣・魔剣を片手にそれぞれ構え、ジャックはその場で回転する。
そのまま勢いよく回転し、その凄まじさゆえか小さな竜巻が起きたかのようなものになった。
「『鎌鼬』!!」
技名はその場のノリで作る。
ごぉぉぉぉぅ!と勢いよくその回転した状態で、小さな竜巻は牛男に襲い掛かった。
魔力を聖剣・魔剣に流して切れ味が増加し、回転しながらなので一撃に何連続も一気に斬撃を叩き込む。
「ぐもぉぉぉぅ!?」
一気に皮膚が切り裂け、血が噴き出していく。
浅い傷しか入ってないが、それがいくつも次々と牛男の身体に出来ていく。
小さな傷でも、そこから出血は増えていき、止まりかけたところにまた竜巻が襲い掛かる。
これがまだ皮膚が頑丈な牛男だからまだその程度で済むだろうが、普通のモンスターたちがこの技を喰らえば切り刻まれていくであろう。
ついでに、回転して斬りつけるという単純な攻撃でもあるので、すぐに他の適正者たちも真似して同様の事ができる。
なので、牛男の周囲には他の適正者たちが回転してできた小さな竜巻が次々と出来上がり、剣で切り裂く者もいれば、メイスなどで連続して打撃を打ち込む者が出た。
一見すれば、有利になったように見えるだろう。
だが、この技には重大な欠点があった。
「そろそろ目が回って来たかも・・」
「うえっぷ」
適正者とはいえ、物凄く回転していればさすがに目が回る。
中には酔う人も出て軽く混沌とした竜巻もできていた。
まあ、かなり有効だったようで次第に牛男の身体に物凄い切り傷や打撃痕ができていき、だんだんそこからの出血やダメージによって、牛男は地面に倒れたのであった・・・・・・。
ついでに、周囲には回転しすぎて目を回した適正者たちも続出して死屍累々の光景が出来上がってはいたが・・・・。
「うぇぇ・・・・回りすぎた」
「この方法は結構イケたんですけどねぇ」
「こういう時限定の技じゃな。封印したほうがよかろぅ」
後に、この「鎌鼬」はいざという時の最終手段として使用する以外は厳禁となった。他に吐いていた人がいるからね・・・・・。
というか、シロとクロも一緒に回っていたようなものなのに、全く回転酔いしていないのがすごいような気がする。
スケートで回転しているみたいな感じで回っていた。
回転いすでぐるぐる回りまくったあとってなんか酔わないですかね?
ロイス・・・は不死身みたいなものだから別に心配しなくてもいいかな、たぶん。




