132話
本日2話目
まずは・・・・
「・・・・ちっ、警戒されているか」
対魔勇団がいるという洞窟の入り口近くまで接近したジャックたち。
このまま気配を隠していけば案外簡単に不意を突けるかもと思っていたのだが、どうやら警戒がものすごく厳重になっているようである。
「どうやら、5人ほどの警備体制になっているようだが・・・情報だともっと警備体制は薄かったはずだ」
「となると、感づかれたのかな?」
このまま奇襲をかけようにも、成功しないだろう。
「となると・・・やはり正面突破か」
「ひゅっひゅっひゅっひゅっひゅ、ここはあちきがどうにかして見ましょう貝殻?」
「うわっつ!?」
どことなく空気が抜けているかのような笑いと共に、物凄く不気味な人物がジャックたちのそばにいつの間にかいた。
いや、適正者が集まったときに見ていたけどさ、いつの間に・・・・
「たしか・・・ナンバー2の強さを持つという」
「『幻影の暗殺者』ことナーキゾレム=クリスタンさんでしたわよね・・・」
前髪が長くて表情が見にくい上に、乱れ髪で来ている服も何処かボロボロで不気味さがあった。
「ひゅっひゅっひゅっひゅ、このぐらいのならあちきの武器で・・・・」
「!?」
目の前で、いきなり空気に溶け込むかのように自然とナーキゾレムさんは消えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
洞窟前で見張りをしていたのは、ジャックたちが予測していた通り適正者たちであった。
彼らはリーダーであるメゾンの命令の下、こうしていきなりの厳戒態勢をとったのである。
「なあ、ここで見張りをいきなり増やすってどういう事だろうか?」
「さあ?ただメゾン様が言うには無駄だと思うけど厳戒態勢をっていう伝令があったからな」
「無駄だと思うけど・・・?なんでそんなことを言う位ならこうするでやんす?」
「案外テストのようなものかもしれん。数日後実行予定の聖剣・魔剣所持者を殺害した後、メゾン様は世界に混乱をもたらすのどうとか言って・・・」
『・・・・二階の寝室裏、ベッドの下』
「ん?」
「どうしたんだ?」
「いや、今何か聞こえなかったか?なんか俺のまずいものの隠し場所を・・・」
「空耳だろ?」
『作詞、作曲ボマストン。聞いてください「わが生涯」』
「ひっつ!?」
「どうしたボマストン!?」
「今なんかものすごく恥ずかしいことを言われたかのような!!」
『あのひー♪ 私はー♪ あなたーぁぁぁにぃ♪ であって、』
「やめてくれぇぇぇぇ!!その歌はやめろ!!若気の至りなんだぁぁぁぁ!!」
「どうしたんだ急に!?」
『・・・・×月○日、今日は試しにあの噂のダイエット方法を・・』
「ひっ!?私の秘密のダイエット方法!?」
『腰を落として、どすこいどすこい。ジャンプしながらシェーッとかいうポーズをとる』
「やめてぇぇぇぇぇ!!それ言われるとも物凄く恥ずかしいぃからぁぁぁ!!」
「どうしたキャスリン!?」
『・・・・捧げます。聞いてくださいラブレター。ゴリマ作』
「ふぉっ!?なんで俺の昔書いた」
『一目見たとき 気に入りま、』
「言うなぁぁぁ!!それ以上は恥ずかしいから言うなぁぁぁぁ!!」
「おい!!しっかりしろ!!」
『あの日の酒で・・・・byラスティン』
「はいっつ!?おれっちかよ!!
『酒を飲んで、娼館へ行ってナンバー1のカワイ子ちゃんかと思ったら間違ってワーストワンの化け、』
「おもいださせるなぁぁぁぁ!!あの恐怖はもう!!やめてくれぇぇぇぇ!!がっちがちのムッキッムキのあれはぁぁぁぁ!!」
「しっかりするでやんす!!」
『下剋上を目指すでやんす』
「はひっ!?」
『下剋上とやらはどうやら下から上に上がるらしいでやんす。なので、階段を上がって・・』
「勘違いしていたその時のことはやめてでやんすぅぅぅぅぅ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・なんだあれ?」
ジャックたちは唖然としていた。
洞窟前にて警戒していた適正者とみられる人たちが全員急に何やら恥ずかしがり始めたのである。
悶え、叫び、のたうち回り、湯気が出て、泣いて土下座して謝って・・・・混沌とした状況であった。
「あれがナーキゾレムさんの武器の『黒日記』ってやつよ」
『黒日記』・・・適正者が持つ武器の中ではかなり特殊な部類に入る武器。対象とする相手の精神的にもっともきつい思い出をランダムに延々と述べあげて、頭の中にその時の映像も流し込む。
相手がモンスターの時は、そのモンスターの能力を極端に下げる呪詛を発動させる効果に変わる。
誰しもが持つ恥ずべき記憶、トラウマな記憶、消し去りたい思い出などを絶対に思い出させて他者に聞こえているかのようにすることによって精神的にダメージを与えてくる武器なのだ。
学園長にもそう言った記憶はあるらしく、精神的に参って負けたそうな。
・・・・しかも、質の悪いことにどうやら映像を記録することもできるそうで、後日、その対象者の友人知人などに見せつけてよりその対象とされた人の精神を痛めつけるそうだ。
さらに、ナーキゾレムさんは実は人間と魔族『ゴーストライター』のハーフだそうだ。
魔族『ゴーストライター』・・・・それはちまちまと隠れて小説を書く魔族らしい。体が透けており、夜中にしかその姿を見ることができないそうな。
で、ハーフであるナーキゾレムさんも適正者としての仕事をしているとき以外は作家活動をしているそうだが、ハーフなせいかいつでも透明になれるらしい。
しかも、その気配すらわからないのでああやって近くまで行って耳元で聞かせることができるのだとか。
おまけに、この戦いもあとで小説化するそうな・・・・。
「しかし・・・間近で恥ずかしい話するのは物凄い地獄だよな・・・」
「そのうえ、楽しんでどんどんやっているからたちが悪い・・・・」
学園長が言いよどむわけもわかる。
ジャックたちはナーキゾレムさんによってやられている人たちに深く同情したのであった。
ちなみに、王国ナンバー1の適正者の人には全く効果がなかったそうな。鉄のメンタルどころかオリハルコンという金属のメンタルとまで言われているらしい。
それはそれでいつかは会ってみたい。
今はとりあえず、ナーキゾレムさんの精神攻撃を徹底的に受けている人たちに、冥福を祈るしかできなかった・・・・・。
「ひゅっひゅっひゅっひゅっひゅっ、あちきはまだ攻め足りないけど気絶してしまったので残念ですよ」
5分後、そこにはもう勘弁してくださいと言わんばかりまで号泣し、メンタル崩壊を起こして気絶した適正者たちの姿があった。
もうこの人だけでいいんじゃないかなと思ったが、なんでも一度この武器を使用してやめると、再使用可能になるまでに30分ほどの休憩がいるそうな。
透明化も同じぐらいの休憩がいるそうで・・・。
まあ、このぐらいの制限がないと相当精神的にはきついだろうしな・・・・・。
とにもかくにも洞窟内に潜入することができた。念のために気絶した人たちから武器を取り上げて、縛り上げたけど・・・これ、起きても正気でいるのかな?
「なんかさ・・・こっちがものすごく悪い感じなように思えるんだけど・・・」
「気にしてはいけませんですわ・・・・彼らの冥福を祈るのが最善ですわ」
洞窟前の見張り達の心をバッキバキに破壊してから、対魔勇団が潜む洞窟内に入ったジャックたち。
奥へ進むと、次々と出てくる対魔勇団の者達。
果たして、ジャックたちはどう進んでいくのか!!
次回に続く!!
・・・・ちなみに、本当は傷口に塩やトウガラシなどを塗り込むような感じのものにする予定でした。
メンタル破壊OR人体破壊・・・・どっちがまだましですかね?




