117話
真面目な戦闘
・・・久しぶりな気がする。
「がるぅぁぁぁぁぁ!!」
「ちっ!!」
ガキィィィィィィィン!!
穴の底で、ジャックは虎と化した情緒と戦闘していた。
詐欺かと疑いたくなるぐらい、変貌が凄まじく、猛烈に爪や牙での攻撃を相手はしてくる。
聖剣・魔剣で今のところ防御はできるが、かなり厄介である。
元が少女なので攻撃にややためらいが出そうになるのだが、自分を殺そうとしているのでためらいをなくして攻撃を繰り出す。
だが、素早く避けられて決定的な一撃を繰りだせない。
得意技の「疾風切り」は非殺傷の技だし、相手の方が素早く動けている。
だが、素早いがゆえに攻撃がどうも単純なようで、読みやすい。
なので、相手側の攻撃も防御できるのであるのだが・・・
(体力が持たないな・・・・。相手はまだ息切れしてすらいない)
そもそも、パワーに差があるので防御してぶつかり合うたびに衝撃がきて、着実にジャックの体力が奪われていく。
相手は避けるだけだし、力任せに行けるので状況的にジャックの方が不利だった。
そのうえ、
「そいや!!」
「おっと!!」
落とし穴の上から、対魔勇団の男性が地味な嫌がらせのように毛虫を投下してきたりする。
適正者のようだが、どうやら音を消すために武器を使っているらしい。
なので、武器の代わりに毛虫投下であった。
剣でぶった切って防げるが、切るたびにシロとクロが「ひっ!!」「ふわっ!!」などの悲鳴を上げている。
さすがに、聖剣・魔剣でも虫をぶった切るのは嫌いなようである。いや、まあ直に自分の身体でまともに毛虫を・・・・考えたら鳥肌が立ってきたので、今は戦闘にジャックは集中することにした。
ガキィィン!!
爪を防ぎ、牙で噛まれるのをよけるが、やはり狭い空間内での戦闘はやりにくい。
学園長の訓練で、似たような状況での戦闘をさせられていなかったら余計苦戦していただろう。
(でも・・・そろそろ厳しい)
いくら訓練していても、体力の消耗までは避けられない。
チッ
「つっ!」
かわし損ねて、ちょっと爪がかすった。
「がるぅぅぅぅらぁぁぁぁっつ!!」
ジャックの体力の消耗を読み取ったのだろう。
ここで一気に仕留めるつもりかより攻撃が激しくなった。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
「ちぃつ!!」
爪、牙、体当たり、爪、爪、牙、牙、体当たり、爪、体当たり、牙、爪、体当たりと見せかけて牙・・・。
さすがに全部交わしたり防ぎきれなくなり、ジャックの服や皮膚が裂けて血がにじんでくる。
出血してくることにより、よけいに体力の低下、更に思考力も落ちてくる。
(まずいな・・・・このままだと・・・)
だんだん意識も揺らいで、目がかすんでくる。
このままだと確実に負ける・・・。
その時だった。
ドゴウゥウツウ!!
「ぐっぺろん!?」
穴の上から妙な音が聞こえた。
と、そのまま誰かが落ちてきた。
「がるっつ!?」
「うおっ!?」
いきなりだったので、戦闘中だったけど少女だった虎とジャックは落ちてきた人をよけた。
どすん!!
「あ・・・」
見ると、ロリコン疑いのあるさっきからこちらに毛虫を投下してきたりしている男だった。
顔がはれて、何かに殴られたような・・・
しゅるしゅるしゅる
「へ?」
ジャックの身体に何かが巻き付く。
みると・・・・
「これってヨナの鞭・・・?ってうおっつ!?」
グイッと引っぱられて、一気に落とし穴からジャックは引き揚げられた。
「大丈夫なのん?」
「やっぱりヨナの鞭か」
そこにいたのは、ヨナたちであった。
「うわっつ!?ジャックスゴイ出血しているけど大丈夫なのそれっつ!?」
「包帯包帯・・・」
リンがジャックの身体の出血に気が付き、カレンが素早く緊急用の包帯を巻いてくる。
「一体なんで・・・・」
「ルナのおかげぜよ」
と、ミツが説明してきた。そういえば、ルナの姿が・・・
「ルナはどうなってるんだ!!」
「慌てないでぜよ。ちょっとばかし骨が折れてはいるが・・」
「がるわぁぁっつ!」
落とし穴の中から虎が飛び出てきた。
口には先ほどの男が加えられている。
「あれね」
「ジャックを殺そうとしているのはすでに説明を受けている」
全員武器を構えて戦闘態勢をとる。
虎は結構強かったが、あちらも体力を消耗している。
男は気絶しているから戦力外。
ジャックもまだ戦えるのだが、さすがに逃げたいのでミツに誘導されて素直に安全な場所まで避難。
そこにはルナもいた。
「ルナ・・・」
「大丈夫ぜよ」
包帯でお腹のあたりをぐるぐる巻かれているが、一応大丈夫そうである。
今はぐっすりと寝ているようであった。
・・・・どうやってルナが皆に知らせたのか。
落とし穴に落ちた後、眠り薬を投下されて眠りそうになったが、根性で起きていた。
だが、眠気がひどく力が出ないので動きもままならない。
そこで、ガントレットを使って腹に自身の拳をめり込ませた。
普通、それは気絶させるための手段である。
だが、かなりの痛みでいっきに目が覚める。
下あばら骨が当たってひびが入ったかもしれないが、とりあえず目が覚めたことは覚めたので、落とし穴から勢い良くジャンプする。
そのまま真上に飛んでも意味がないので、地上に出たところで自分をもう一回殴って地面にたたきつける。
ジャックが戦闘しており、男もいたのだがどうやら落とし穴の中の方に意識が行っているようで気が付いていない。
このままジャックに助太刀しに行くことはできるが・・・
油断したら確実に負けるし、今自身を殴ったことでケガもしている。
一気に全員で攻めたほうが安全なため、素早く皆のところに駆け寄ってたたき起こした。
説明を手短にした後、ダメージでそのままぶっ倒れてしまった。
あとは、今起きている事のとおりである。
「そうか・・・ルナのおかげか」
「では、拙者も戦闘に加わってくるからここでおとなしくしているぜよ!」
(今は・・・・ルナにジャックを渡したほうがいからぜよな)
内心見張りと言ってここにいたいミツであったが、今回のはルナのおかげでジャックが助かったのでここはルナに任せておこうと思い、そのままみんなの戦闘に参加しに行くのであった。
ジャックとルナはその戦闘から戦線離脱し、一旦休むことになった。
虎相手はみんなに任せる中、ルナが目を覚ます。
一応お礼と・・・・
次回に続く!!
・・・テンプレだと「はぁぁぁぁっつ!!」とか言って覚醒しそうだけど、さすがにありきたりなのでそれはやめました。




