110話
本日2話目
この話は珍しく主人公たちの出番なし。たまにはいいじゃない、適正者だもの。
たまには彼らにも休暇的なものを与えたいんだよ。
「まったくめんどくさいな・・・・」
「そー(その通りだね)」
「いい加減省略するなよ」
「りー(理解できているからいいじゃん)」
ジャックたちがラドムスコ男爵の屋敷にやっと着いた頃、そのふもとの方にある町に二人のフードをかぶった人たちがいた。
どちらも、灰色のフード、灰色のマフラーを着用しており、回りから見ればおそろいにしているようにしか見えなかった。
ただ、身長差があって片方は大柄の男性のようだが、もう一人は明らかに娘と言っていいほど小さい女の子であった。
「はぁ・・・まさか資金源が厳しくなってきたから、とってこいと言われてもなぁ」
「めー(めんどくさいよね)」
彼らは、自らが仕えている組織の資金稼ぎのためにこの町にバイトに来ていたのである。
彼らが仕えている組織は「対魔勇団」。最近、支部とかが王国などの調査によってつぶされてきているので、新しい支部とかの設置のための資金奔走に忙しくなってきたのだ。
ジャックたちと敵対する組織ではあるのだが、金不足は深刻な問題であった。
今までは、権力者などに取り入ったりして資金が潤沢にあったのだが、最近「何か」の研究が行われているようで、その研究費用に組織の財源の大半が尽くされているのも原因である。
その「何か」というのは、組織の上層部しか知らず、聞くところによるとあちこちで混乱を引き起こせるようなものらしいけど・・・・。
「先に、組織がつぶされそうなのが怖いんだよな・・・」
「そー(そうだよねー)」
「かといって、今更適正者として働けるわけでもないし」
「むー(難しい問題だよね)」
そう、彼らは実は元適正者である。だが、この国のではなくて別の国から流れてきた適正者であった。
適正者としてはあるまじき事件を起こし、それでその国で死刑になりかけていたところを、組織の人が戦力が欲しいからと言って入団する代わりに脱走の手助けをしてもらい、こうして今ここにいるのであった。
しかし、うかつに武器を出せば彼らがどの国の者だったかわかってしまうので、普段は服の下にわからないように隠している。彼らの武器は、特殊な特徴を持っているからだ。
「『ジャック』とかいう聖剣・魔剣所持者を殺せれば出世もできるらしいけど・・・現在行方不明らしいし、そううまい話はないよなー」
「なー(ないよねー)」
あはははと、どことなくあきらめたような笑い声をあげて、彼らは今日はここの領主の不幸貴族で有名なラドムスコ男爵とやらの屋敷でバイトをするために向かうのであった・・・・
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「ふぅっ、我が家がやっぱり一番落ち着くのねん」
「そのとおりですな」
ラドムスコ男爵は、何とか屋敷に戻れたことに安どしていた。
道中でクマや蜂に襲われたりし、ジャックたちによって何とか助かっていたのである。
「綺麗な娘たちも会えたけど、下手に手を出すと・・・・まずかったのねん」
「賢明な判断だと思いますよ」
ラドムスコだって、女遊びをしたい、手を出したいという欲はある。
だが、さすがに自分たちを助けてくれたような人に手を出すようなことはしないし、何より、ルナたちが適正者であるという時点であきらめるしかなかったのである。
ルナたちの見た目がきれいだから、据え膳生殺しの不幸だが、手を出せば下手すると・・・・・・。
「それを考えると、さすがに命が惜しいねん」
「まあ、ここまでたどり着けたのでお礼にふもとの方にある町の宿泊所への紹介状を出しましたしいいでしょう」
このラドムスコが治めている町・・・ここには宿屋、旅館、宿泊所などといった旅人に安心したサービスを届ける施設が他に比べて豊富にある。
ラドムスコの狙いとしては、ここにきれいな客が泊まったら襲いに行きたいと思っていたのだが、その思いとは裏腹に、なぜか集まるの爺さん婆さんばかり・・・・。
きれいで若い娘が泊まる時があっても、適正者だとか、城の騎士団とか・・・・。手を出せば返り討ちに合うような未来しか見えない者ばかりであった。
まあ、そこそこ繁盛しているようであったので税収もそれなりに入ってきて良かったのだが、ラドムスコのメンタル的には不幸だった。
娼館もあるが・・・・最近つぶれた。貴族権限的なもので一番いいのを頼むと言ったら、物凄く筋肉質の・・・・男のようにしか見えない人を当てられて一晩過ごした。完全にトラウマである。
モンスターにサキュバスとかいう、淫夢をみせるやつを捕らえてせめてでもと思ったら、適正者たちに全員倒されてインキュバスという方が・・・・。こちらもトラウマである(一応退治してもらった)。
まあ、とにかく一応このあたり一帯の領主なので今回のお礼にと、一番いい宿に泊まれるように図ったのであった。
性根が腐った貴族にも、真面目な貴族にもなり切れないラドムスコ・・・・・彼は自分が一体どのような貴族になれるのかわからない不幸さもあった。
「そういえば、本日この屋敷の臨時手伝いとして雇う二人が来るはずですが・・・」
この屋敷にもメイドとかは一応いる。だけど、ラドムスコの不幸で屋敷が壊れることがあって、その掃除が大変と嘆き、過労でいま倒れてしまったのである。
そのため、臨時として家事などができる人を募集したら2名集まった。
「片方男、もう片方は女だけど幼い・・・・・ああ、せめてきれいなお姉さんだったらよかったのねん」
「まあ、集まっただけで良しとしましょう」
セスバ的には、誰も応募しないかもと思っていたが。
(さすがにいくら不幸なお方でも、この屋敷を全壊させるような不幸はありませんですし大丈夫でしょう)
一応能力的には問題ないらしいのはわかっているので、そのあたりはセスバは安堵した。
だが、セスバのその思いは、違う形で現実のものになりそうであった・・・・・・
互いに知らぬうちに、聖剣・魔剣所持者と対魔勇団という敵対する者同士が集まっていた。
ここで下手に巡り合えば、争いになることが明らかである。
果たして、両者はどのようなことになるだろうか?
次回に続く!!
・・・一応ね、大きな組織だって資金稼ぎには苦労するんですよ。しかも、今は王国内で撲滅しようと学園長たちも頑張っているし。そろそろ騒動が欲しくなってくるからね。
ところで、宿泊所の紹介って言っていたけど、部屋とかは・・・・・




