9話
入学
数日後、エーラン学園の入学式の日となった。
適正者の人数は例年よりもやや少なめのジャックを含めた35人。
例年は60人ほどらしいが・・・・そのため、ちょっと本寮の部屋が余るので入学式後にその余った部屋の争奪戦があるそうだ。
簡単に言うと、部屋をきちんと片付けられないような人が物置として使用するために争奪戦が起きてしまっただけである。
ジャックとカレンは元から整理整頓をしてはいるが、ロイスとリンは参加するそうな。
この二人、雑なところがあるからな・・・。ジャックはそう思ったが、リンのメイスが飛んできそうなので黙っていた。
なお、そういったところを計算していないのかよと言いたくはなるが、適正者の人数は毎年変動するため、あらかじめだいたいこれぐらい出るだろうと予測して空き部屋が作られているのである。
そのため寮は毎年増築、改築などをされているのであった。
入学会場は学園の校庭。かなり広く、この校庭には何か仕掛けが施されており、ここで血を流そうが腕がもげようがここから出るとたちどころに元通りになるそうな。
その仕掛けは学園長が作り出したものらしいが、秘密だそうだ。
そのため、この校庭で訓練がされたりするそうだが・・・・・腕がもげようがって、もげるようなことがあるのか?
校庭に今年度の適正者が順番に並ぶ。
それぞれの武器を持ち、並ぶさまはちょっと怖い。メイス、大剣、斧、ハンマー・・・・ハリセンはどうだろうか?
なお、歴代適正者の中にはフライパンなどの人がいたとか。今も生きているようだが・・・。
校庭の壇上に誰かが立った。見た目が20代前半の女性?人間に見えるが、よく見ると耳がかなりとがっている。
「あー、ようこそエーラン学園へ適正者諸君。私がこの学園の学園長であるアンド=レアスです」
アンド学園長・・・・かなり昔からこの学園の校長をしている魔族、ハイエルフの有名な学園長か。
結構きれいな人だけど、どことなく油断できないような印象がある。
みると、他の適正者の人たちも同じように感じているのかどことなく警戒するような表情となっていた。
「・・・・ふむ、面白半分でちょっと殺気を飛ばしてみたが、警戒できた適正者が多いな・・・。今年は適正者の人数が例年より少ないというが、その分なかなか素質有りそうなやつらばかりですね・・・」
さっき感じた油断できない感じは、面白半分で飛ばされた殺気かよ。いきなりひどいな。
「さてと、諸君らは適正者としてモンスターと戦う運命になっている。下手すると命を落とす可能性もあるだろう」
うん、戦いたくないです。命落としたくないです。
「そこでだ、まずは諸君らの力を見るためにちょっとあるゲームを入学式の最中だがしよう。まず、諸君らは校庭いっぱいに広がってくれ」
嫌な予感。
「全員各々の武器を構えてくれ。この校庭では校庭外に出れば怪我は消えるし、手加減はするが、今から私が魔法で諸君らをランダムで攻撃する。それを防ぐか、もしくは弾き飛ばすかなどをしてくれたまえ」
いきなりとんでもないことをさらりと学園長が言い出した。
抗議の声を出そうとしたが、魔法の詠唱を始めたので慌てて皆防御できるように武器を構えた。
ジャックは腰に下げていた二本の剣を構える。
その時、学園長が見たような気がしたが気のせいだと思った。
そして、学園長の魔法が校庭中に放たれたのであった・・・。
学園長が未婚な理由の一つに、こういったいきなりの行動を実行するからというのがある。




