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96話

主人公、出番少なめ

 ジャックたちが宿泊すると決めたのは、この町のなかでも一番まともそうな「ジポン亭」である。


 なんでも、この宿の創始者はジポン出身のさすらいの侍風宿マスターとまで言われていた人物だったらしく、ジポンの良さを伝えるためのジポン押しがものすごかった。


 個室は全部屋畳や障子、ふすま、布団は敷布団、風呂はなぜか岩で囲まれた露天風呂、春だったらきれいに咲き誇っているというジポン原産の桜があり、用意されている寝間着は着物という徹底ぶりであった。


 これに燃えたのがミツで、出身国関連のことに詳しく話をして、この宿の女将さんとも熱く語り合っていた。


「畳なら、この並べ方のほうが」

「これはここのサイズに合わせて、そこを計算しているのよ」

「露天風呂の岩は」

「ジポンからわざわざ運んできて、雰囲気を出すために・・・」



 その様子は、いつもの彼女ではなかった。物凄く生き生きしている。


「人って、あんなに変わるのか・・・」

「まあ、他国にて自国の文化に関わる機会はうれしいですわね」

「同意はしますですのん」


 ルナとヨナがうんうんと互いにうなずき合っていた。


 そういえば、この国出身なのはジャックとリン、カレンだけである。


 シロとクロは・・・製造元が不明だしな。


 なんにせよ、個室で寝られるうれしさでジャックはどうでもよくなっていたが。


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 真夜中、ジャックたちが寝ている宿の周辺に集まる6人ほどの影があった。


「・・・ここがターゲットのいる宿か」

「こう毎回攫う仕事っていやっすよね」

「我慢しろ、だいたい身元不明の娘たちを攫うからまだいいほうだござりゅ」

「案外、どこかの公爵令嬢とかだったりして」

「流石に、うちの主がいくら大バカ無能色欲溺れのバカやろうとはいっても、そんなことはすまい」

「いくら本当のこととはいえ、ひどいなり・・・」


 彼らは、それぞれこの宿に泊まったという娘たちを攫うように指示されたゲッスル家の使用人たちである。「シノービン部隊」とも名付けられており、その由来はジポンにも似たような役職の者たちがいると聞いたからである。


 こうして闇夜に紛れて、生娘を攫ってこさせるというのはマーレイの腐った性癖であった。


「ターゲットの娘は、全部で5人。他にいいのがいたら追加で攫ってくることだが・・・」

「いつも通りにすればいいんでしょ先輩?」


 約1名は、今年入ったばかりの新人であった。


 それぞれ散会して、各場所から宿に入り込んでいった・・・・・。


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SIDEシノービンの者1号


「大体、夜中にやるのは結構見にくいんだよな・・・」


 彼はターゲットである娘の一人が眠っているという部屋にあっという間に潜入した。


「あれがそのうちの一人・・・・・」


 暗闇の中だが、それなりに目が慣れてくると見える。


 一応確認のために近寄って見て見る。幸い、物凄くぐっすり寝ているようでターゲットが暴れたとき用の眠り薬が必要ない感じであった。


「こいつで・・・・ん?胸がほとんどないじいぇぐえほう!?」


 胸がなくて男みたいだ。そう言いたかったのだが、何かしらの重い一撃を腹にまともに食らった。


「が・・・・な、なんだいまの・・・・む、胸がないどころか男並みのぐげべけぇ!!」


 言い終わる前に、彼は何やら物凄く重い一撃をうけ、そのまま意識を失ったのであった・・・・


「誰が男で胸無しよ・・」

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SIDEシノービンの者2号


「なんかものすごい音が聞こえたけど・・・まあいいか」


 こちらはどうやらおとなしく寝ているようで、このまま縄で縛って・・・・


 と、縄を持った手を近づけた時であった。


パァン!!


 何やら銃声が鳴り響くとともに、そのまま意識は闇へと沈んでいった・・・・・。


「・・・あれ?これ実弾入れたままだった・・・」


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SIDEシノービンの者3号


「先輩たちはうまくやっているっすかね・・・」


 今年このシノービン部隊に入った新人は先輩たちの姿を思い浮かべていた。


 行く当てもなく、さまよっていた自分に屋台でおごってくれた先輩たちをしたってあの嫌な悪徳野郎のもとについてこの部隊に入ったのである。


 命令としては、最悪だろと言いたくなるものが多かったが、先輩たちも黙ってやっているので愚痴をこぼさないように新人は我慢した。


「さて、こちらも・・・ん?」


 新人はこの宿の窓から侵入しようとしたのだが、誰かが窓から出てきて同じように屋根伝いで来ている姿が見えた。


「あれ?先輩っすか?」


 もう仕事が終わったのかと思ったが、どうやら違う。


 なにやらちょっと透明な服を着たきれいな娘だった。


「あ、あれ・・・・?」

「・・・・曲者ですのん」


 次の瞬間、新人の顔に何やら鞭のようなものが当てられて、彼はそのまま地上に激突した。


(い、痛かった・・・・・でも、なんか悪くなかった・・・・・・)


 そのまま、新人は気絶した。鼻血を流しながら、どことなく満足そうな笑みを浮かべて・・・・・。


「・・・何やら変なものがうろついているようですのん。今日はあきらめるですのん」


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SIDEシノービンの者4号


「くっくっくっく、天井裏から狙う。これがシノービンの本領なり」


 天井裏から侵入して攫おうと、彼は考えた。


 この方法ならば、上から睡眠薬でもかければいいし、部屋に侵入の後も残しにくい。


 これが一番いい方法だと彼は考えた。


「さて、そろそろ部屋の上かなりか・・」

「・・・何しているのぜよか?」

「ん、なに、娘を攫おうと・・・・・・ん?」


 今誰が言ったのか。


 背中に物凄い冷や汗をかいて彼はその声がした方向を見た。


「・・・曲者!!」

「ひっつ!?」


 逃げようとする間もなく、彼は斬られてその場に倒れ込んだ・・・・。


「安心するぜよ。多分みねうちぜよ」


 たぶんとついているのはどういうことなり・・・・とツッコミを入れたかったが、彼はそのまま気絶した。一応みねうちだったが、若干皮膚が裂けていた。


「・・・・何やら怪しい気配。今宵はあきらめたほうが良いぜよね。・・・・やっぱり、裸で突撃するのが正しいぜよか・・・・?」


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SIDEシノービンの者5号


 彼は廊下を音もたてずに歩いていた。


 こうやって侵入したほうが良いかもと思ったのである。


(抜き足差し足忍び足・・・これがシノービンとしての実力でござりゅ)


 やや舌足らずなのが残念であったが。


と、歩いていると、目の前で同様に歩いている娘がいた。


(お、これは好都合でござりゅ。このまま後ろから抑え込んで・・・)


 そう頭の中で考えたとき、いきなり目の前で歩いていた娘がぴたりと止まった。


「・・・・後ろですわね!!」

「なっつ!?」


 其のまま、何が起きたのかもわからずに何かに吹っ飛ばされて、そのまま突き当りに激突し、全身の骨が悲鳴を上げたのが分かりながら、気絶した。


「・・・だいぶ気配とかが探れるようになってきたですわね。・・・襲おうとするなんて興ざめですわ。ジャックだったら・・・」


 想像して、熱くなったその娘は、慌てて自分の部屋に戻るのであった。


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SIDEシノービンの者6号


「ここは・・・・ちっ、部屋が違ったか」


 彼が入り込んだのは、ジャックの部屋であった。


「しかし、こいつが娘たちを囲っているようなものだったらしいが・・・誰とも寝ておらん」


 ちょっとばかしは期待していた男だったが、残念であった。


「まあ、別の部屋に・・・・ん?」


 その時、男の視界にある物が目に留まった。


 暗闇の中でも、ほのかに白く、黒く輝く二つの剣・・・・・。


「武器を所持しているってことは、もしかして適正者か?待てよ・・・・この剣って・・・・」


 剣を見て、男の頭の中にある話を思い出した。


 適正者を育てる学園にて、聖剣・魔剣持ちが現れたという話を・・・・。


 そして、この暗闇の中でもわかる剣の輝き・・・・・


「ま、まさか!!」


 男は理解した。今、目の前で寝ているこの男こそが聖剣・魔剣所持者の・・・・・ジャックだと。


 そして、その聖剣・魔剣の力は男も知っていた。


 なぜなら、彼自身も適正者で、夏の時のクラーケンで駆けつけようとして、あの力を目の当たりにした一人だったから・・・・・。


 なんやかんやあって、今のゲッスル家当主に仕えているのだが、相手がさすがに悪いと男は理解した。


「に、逃げてお知らせせねば・・・・」

「・・・どこに逃げるんですか?」

「マスターの部屋に、不法侵入とは・・・」

「な!?」


 剣から声がしたので驚く男。


 目の前で、剣の姿が変化し、少女の姿となった。


 いや、そこからさらに成長し、大人の女性のような姿となった。


「やはり、だんだん力が戻ってきていますね」

「こうして見られぬうちに、姿も戻ってきておるが・・・まさか貴様のような下賤な輩に見られるとはのぅ」


 剣が人の姿になるのは驚いたが、長年この仕事をしていた男の勘が叫んだ。


 このままだと死ぬと。


「う、うわぁぁぁぁっつ!!」


 恐怖、それに突き動かされて、男は自身の武器クナイを振りかぶったが・・


ガキィン‼︎


「人の姿をとってますけど」

「妾たちは元は剣じゃよ」


クナイは突き刺さることなく、動かせなかった。


「本来は武器自ら動くのは苦手じゃが」

「体術ぐらいは見よう見まねで」


足を払われ、腕を捻られながら床に叩きつけられ、


ボキッ


「あ」

「ぎゃっ⁉︎」


・・・どうやら腕を折ったようである。力の入れすぎが原因らしい。


「えーっと、とりあえず寝てください」


と、その体制のまま首を強打され、男は気を失った。


ぷしゅー


何か、空気が抜けるような音がしたかと思うと、二人の体が縮み、いつもの姿に戻った。


「まだ戻りきってませんでしたね」

「ぬぅ、ずっとあのような「なぁいすばぁでぃ」とかいう感じの姿でいたかったのじゃが・・・まだまだじゃな」


とりあえず、気絶した男をこれでもかというぐらいに厳重に縛り上げた二人は、剣の姿に戻って、明日ジャックに説明するのであった。




重軽傷を負ったシノービンの者たち。

翌日、ジャックたちに目的を吐かされる。

一方、彼らの雇い主は・・・

次回に続く‼︎


・・・適正者は、常日頃からもう武器を持ち歩くのが癖みたい。

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