95話
貴族家とか、人の名前とかって結構考えるのが大変。
考え付くけど、そこから選んでいく作業がね・・・・。
廃村から出て3日ほど、ジャックたちは町を見つけた。
「あれが多分、『ポポン町』かな?」
あの廃村があった位置と、ゲッスル家の領内を考えると予想としてはあっているだろう。
人口総数は確か100人以上だったはずだが・・・・
「どう見ても人少ないな」
「活気がないですわね」
町の外からうすうす感じていた雰囲気だけど、町の中に入って確実にわかった。
やる気、活気、元気がない人々ばかりである。
「確か、今の現当主の前はかなり生き生きしていた町だったらしいと授業で言っていたわね」
昔はかなり活気にあふれた町だったらしいが、今はどう見てもどことなく皆の希望が感じられないかのような雰囲気であふれている。
「暗い街ぜよ・・・」
「皆ゾンビみたいな感じですのん」
なお、ゾンビは襲ってくるモンスターの方と、魔族のゾンビの2種類があるという。
ヨナが言ったのは後者の方だ。前者のモンスターの方は、踊りながら後ろ歩きの様な歩き方で前に進んでくるというからね。臭いとかがひどいので適正者が相手にしたくないモンスタートップである。
魔族のゾンビの方は、おしゃれにこだわって臭いとかも香水臭いというからどっちもどっちだと思うけど。
雰囲気が暗く感じる町の中を歩きながら、ジャックたちは今夜の宿を探していた。
「今夜はそれぞれ個室でいいかな?」
ここ数日はまとめて寝ているけど、ジャックはやっぱり健全な男子としては辛いのである。
「別にいいですわ」
「どうせ王国が代わりに支払うもんね」
「異議なし」
「問題ないぜよ」
「個室の方が、寮みたいでいいですのん」
全員問題はないようなので、どうせ国が支払うならちょっと高めの宿にしようかなと一同は思っていた。
(個室にしておいて、夜中になって寝静まったころにちょっと寂しくなってとか言って押し入ったほうが良いかもしれないですわ)
(外に出て、窓から侵入してそこからいった方が面白いかもですのん)
(寝たころに、屋根裏から忍び込んで潜り込むのがいいぜよか・・・・それとも正面突破で行くぜよか・・・色仕掛けはやはり拙者の性分には合わぬぜよから、正攻法で行くか・・・)
3名ほど、何やら企んではいたが。
ぞくっつ
(な、なんだ今の悪寒・・・?)
ジャックは一瞬何か背筋が寒くなった。後方から、何やら肉食獣に狙われたかのようなそんな感じである。
モンスターとかの相手をするときの様なものではなく、なんとなく自身の身の危険という物に近いような、遠いような。
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「はーっ、たまにはと思っての外出でふけど、なかなか面白いことも、いい感じの娘もいないでふねー」
「そうですね」
(この馬車どう見ても見た目がセンスがないし、腐れ豚野郎がいることを堂々と宣伝しているようなものだから誰も娘を外に出さないんだよ)
ため息をつくマーレイ=ゲッスルの側で、悪態を心の中で吐くヤプソン。
何を思ったのか、珍しくマーレイが外に出たいと言ったので馬車を用意して乗ったのだが、はっきり言って居心地が恐ろしく悪いとヤプソンは感じた。
何せ、怠惰に屋敷に引きこもり、色欲に溺れ、暴飲暴食をするマーレイ。
その体は醜く肥え太っており、なんでまだ歩いたり動けたりできるんだと不思議に思えるほどであったのだ。モンスターの「オーク」に似た姿と言っても過言ではない。
まあ、実物を見たことはないのだが、聞いた話通りならそっくりだとも思えるだろう。
体型と体重の問題から馬車や屋敷の出入り口などを改装し直す必要があり、多額の費用が掛かった。
「なーんもない日は、屋敷に戻って遊ぶのがいいかもでふね」
「そうしたほうがいいでしょう」
(最初からそうしろよこの能無し野郎!!馬車を動かすのだってただじゃないんだぞ!!整備費、維持費、馬車の馬のエサ費用など一応結構かかっているんだからな!!)
平然と装うヤプソンであったが、内心物凄い罵倒の嵐であった。
これで顔色変えずにしている執事のヤプソン、もしポーカーフェイス大会があれば確実に上位であろうとも思えるぐらいである。・・・その大会は本当にあるようだけど、別の地方にしかない。
「ん?あれはあれは・・」
と、窓の外を見ていたマーレイが何かに興味を示した。
あのいやらしそうな目線、確実に女の事であろう。
いままでの経験からヤプソンはすぐに判断できた。
「おい、あそこの集団娘だらけではないでふかね?」
と、マーレイの目線の先には、この町ではみないような娘たちがいた。
一人男子が混じっているが、どれもきれいぞろいなのは確かである。
いつもなら、ここでマーレイは馬車から降りて娘たちを無理やり攫うかのように連れて行くだろう。
だが、今日はそのまま馬車を止めずに屋敷へ戻るようである。
下品な顔をしているので、ヤプソンは勘づいた
(絶対物凄くろくでもないことを企んでいやがるなこのキングオブピッグは)
いやな予感がしつつも、こいつが痛い目に合えばいいのにとヤプソンはそう思いながら黙っておくことにした。
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「今晩の宿はどこにすべきかだけど・・」
「なかなかいい感じのが見当たらないわね」
ジャックたちは町通りをありきながら宿を探していた。
ちょうどこの人数が泊まれるぐらいの宿を探しているのだが、どれもボロボロな感じで、まるですたれているかのようである。
適当にその辺の人に話しかけて聞いてみたところ、あることが分かった。
ここの前領主、ゲッスル家前当主のハルカンドラの時は、この町は活気にあふれていて皆の笑顔をあちこちにあり、領主がたまにこっそりお忍びで遊びに来ていた。
だが、領主亡き後、新しくマーレイとかいうやつがゲッスル家当主となり、ここの領主となったとたん、ここは生き地獄と化した。
あたりの村からは税金を搾取し、足りなければその家の娘をとっていき、自身の欲に使う。
町にもたびたび訪れてきては、適当に見つけた娘を貴族だからと無理やり言って攫うような形で好き放題しているとか。
さらに、物凄い大食漢でここの飲食店の全メニューを制覇し、食料品も買い占めていく。
まさに悪逆非道。
夜逃げする村も出ていると聞くが、この町の人たちは前領主の思いが強くてなかなか町から離れられない。
そして、今のようにさびれた感じになったというのだ。
「・・・絵にかいたような悪徳貴族って感じだな」
「ひどすぎというか、なんというか・・・」
「能無し腐れ無能穀潰し色欲領主ってことよね」
「長いけど、あっているかも」
「悪代官って感じぜよな」
「オークってモンスターに似ていそうですのん」
なんというか、まさに典型的なダメダメな人って感じでジャックたちは同様の感想を述べた。
「そこまでひどいなら、国からの監査とかが入って貴族籍剥奪とかがありそうなものだけど」
ふと、そんな疑問が浮かぶ。
「確か、王国の貴族たちの中には賄賂を贈っているのもいるらしいから、なかなか手が出せない手のもあるはずよ」
「帝国よりひどいですわね」
夏に行ったことがある帝国を思い浮かべて、ジャックもルナと同意見だった。
帝国の軍事的なところは微妙だけど、それ以外ではかなり清潔感があったからだ。
(もし、王国が嫌になったら帝国にでも行こうかな・・)
ジャックは内心そう思ったのであった。
宿にそれぞれ個別で泊まるジャックたち。
女子側での企みを知らず、安眠しているジャックに近づこうとする影が出る。
一方、ゲッスル家から・・・・
次回に続く!!
・・・テンプレというか、王道というか。こういったなにかしらやらかす貴族ってどこの話にもいるよね。たまには恐ろしくがりがりの悪役も出してみたいところ。




