8話
もうそろそろ学園だよ
その夜、ジャックはベッドで寝ていた。
学園がめんどくさいなと思いつつ、よく眠っていた。
その傍らで、二つの剣が呼応するかのように互い淡く光っていた・・・・。
「以上が、現時点での調査結果となります」
同時刻、エーラン学園の学園長室に城からの報告が届けられていた。
「ありがとう。目を通しておくわね」
学園長はその報告書類の束を受け取り、城から届けてきた人に手を振った。
学園長室の椅子に座り、学園長はその書類に目を通す。
このエーラン学園は適正者が通うことになる学園。なので、水晶の儀で適正者となった者たちの情報を学園長自らがしっかり確認しておくようにしているのであった。
「ふむ、今年は刃物での武器を手に入れた子が多いわねぇ・・・」
適正者の容姿とその武器、性格などが書かれた報告書を読み、その傾向を読み取ってどのように指導すれば良いのかなどの授業計画を素早く頭の中で組み立て始めていた。
この国の人口の大半は人間だが、学園長は魔族であり適正者でもある。魔族の中でも長命の「ハイエルフ」にあたり、この学園が設立されてからずっとこうして仕事を続けているのであった。
長命種族なため、老化は物凄く遅いのだが・・・・学園長の見た目は20代前半ほどと、かなり若く見える。まあ、実年齢は3ケタ以上だが・・・・。しかも未婚。さすがにハイエルフは長命とは言えども、同年代の友人は結婚しており、もはや婚期を逃したエルフと言っても過言ではなかった。
「そして、このジャックって子が問題の子ね」
何枚も報告書をめくるうちに、昼間学園長の耳にまで早く入ってきた噂の適正者についての情報を見つけた。
「水晶が割れて、聖剣・魔剣のような剣を二つ・・・」
学園長はそのジャックが持っている武器が聖剣・魔剣のようであるという事柄よりも、水晶が割れるということに関して目がひかれた。
正直言って武器が聖剣だろうが魔剣だろうがどうでもいい。武器がいくら物凄い物でも、それを扱う人がどうなのかでその性能は決まるのだから。
だが、水晶が割れたということに関して気になった。
もちろん、過去に武器が顕現した時に持ってみて落として水晶を叩き割った人がいたり、ほんの少しだけ触れるだけで良いのに「チェストォォォォ!!」と奇声を上げながら叩き割った伝説のバカもいた。
だが、今回ジャックは軽く触れただけであるのに水晶が割れたとあるのだ。
「水晶を手で触れただけで割れた例は・・・・古い記録だけどこの2件しかないわね」
こういった記録は探すのは本来難しいのだが、学園長はできる人であったため素早く見つけ出せた。
「勇者と魔王、今2人の時に割れたという記録しかないわね」
そもそも、水晶の儀にて水晶に軽く触れることには意味がある。
水晶はその人の魂を読み取る力がこの世界にあった。その魂の中にあるその人に合った武器を水晶が顕現させるのだが、水晶が割れたということはその武器の力が強くて水晶が耐えられなかったということにある。
「だとすると、この出た二つの剣は聖剣と魔剣ってことでいいかもしれないけど・・・」
扱えるのだろうか?と、学園長は思った。
何せ、報告書にある通りこのジャックは剣の稽古とかを受けていない。適正者となったことにより身体能力は上がるだろうが、それだけでは完全に使いこなせるとは思えない。
「・・・下手すると本当にモンスターとの戦闘で命を落とすわね」
聖剣、魔剣ともに強力な武器であるということはわかる。だが、その力が使いこなせるとも思えない。
学園長はジャックにどんな訓練をしてやろうかと考えると、久しぶりに面白く思えてきたのであった。
努力は必要です。頑張ってもらわないと・・・。




