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立ち眩み

作者: 夏原直己

短編です。思考実験的な話って面白いですよね。

 立ち眩みを知っているだろうか?

 あれは何かというと、「僕」だ。

 語弊があるかも知れないが、実際そうなのだから仕方あるまい。

 まあ、それを知っているのは多分僕だけだろうが。

 


 僕は今深く目を閉じている。こうしなければ僕はまたどこかで「立ち眩み」になるから。僕が目を開けると、そこはいつも違う景色になっている。

 

 結論から言ったほうが早いだろう。あくまでもこれは僕の推論でしかないが、確信はある。

 僕が目を開けると、僕は「誰か」の意識に飛んで視界を支配する。僕に視界を乗っ取られた「誰か」は、その一瞬立ち眩みに襲われる。これも憶測でしかないが、そんな気がするのだ。時間はほんの一瞬で、わずかばかり景色が見える程度だが、どう考えても気持ちの良いものじゃないはずだ。だから立ち眩みみたいな感覚なんじゃないかと思った。

 

 


 こんなことまで考えられるくらい冷静になれたのはここ最近だ。

 実際この「状態」になってどれほど時間が経ったのか、それもわからないのだから。

 

 今僕がこんなことを独り言のように話しているのはおかしいだろうか?いや、おかしくないはずだ。なんせ頭がおかしくならないようにしているだけなのだから。

 そもそも頭がおかしくなったからだろうかって?僕も初めはそう考えた。でも恐らくそれは違う。僕は健康なんだ。これまた語弊があるかもしれないが、すごく頭がクリアなんだ。今まで感じたことがないくらいクリアなんだ。

 

 目を開けてみよう。海が見える。ビーチだ。ブロンドの太った白人の女が見えた。巨大な尻だ。尻が見える。そして視界は暗くなる。

 また目を開けよう。人混みだ。市場だろうか?肉が沢山ぶら下がっている。カラフルな果物がたくさん並んでいる。太った中年の男が眼鏡を拭いている。彼が何か言った。視界は暗くなる。彼はこの「誰か」の夫だろうか?それとも友人だろうか?それすらわからない。

 

 まあこんな感じだが、とにかく頭はクリアなんだ。クリアとしか言いようが無いくらい、意識がはっきりしている。根無し草の意識がクリアだというのも滑稽ではあるけど。

 こんな感じで僕は過ごしている。


 

 おわかりだろうが、先程から僕は「君」にこの話をしている。「君」は僕が創りだした話し相手だ。

 なぜこんなことをするかわかるかい?これは危険な実験なんだ。

 だって僕は「君」という「意識」を作ったんだよ。わかるかい?

 実態のない意識だけの僕が、「君」という新しい「意識」を作ったんだ。

 


 これは怖いよね。


短編書くのは楽しいなあ。

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