魔力
年末は帰省する方多いですね。
魔法。
あるんじゃないかと思っておった。
台所の火もどうやってだしてるんじゃ、と思っておった。
ミリィに聞いたところ、魔法というのは儂が元の世界で考える妄想の魔法となんら変わりないことがわかった。
魔力を用いて現実に変化をもたらす技。
それが魔法。
つまりなんでもできる。
しかし、人が持つ魔力は微々たるもので、日を灯したり、コップ一杯分の水を作る、というのが人間の平均らしい。
上級者の魔法使いともなると、天候を操り、雨を降らすことができるとも言っておった。
だだし例外として魔族というものがおる。
魔物ではなく、魔族。
この区別は知性がないものを魔物、知性がある者を魔族という。
魔物という枠組みの中に、魔族がおる、と考えるとわかりやすい。
種族に、「魔」とつく者はその体に、大量の魔力を宿しており、また、肉体自体が魔力と相性がいい。
そのため、知性ある魔物である魔族は、人間より高度かつ強力な魔法を使うことができるのである。
「と、いうことなんです。…って2歳児になにを説明しているんでしょね私は…。」
いやいや、そんなことないぞミリィ。
よくわかる説明じゃった。
しかし、疑問が残るの。
「なんで魔物は魔力がいっぱいあるの?」
「一説では、魔力というのは魔素という空気みたいなものからできており、魔物は魔素が多い所で生活しているため、肉体が魔素に慣れ魔力が多い。とされています。証明はされていませんが、現に魔素の多い所で生きていた猫が、ケットシーになった等、そういった事例はありますね。」
「ミリィも空飛べるの?」
「いえ、ボブソンさんは神聖教会の偉い人ですから。空を飛ぶことを許されたエリートさんです。」
なに、ボブソンめ実力派じゃったか…。
意外にもやるではないか。
「それに、人間が空を飛ぶことはできないんです。ボブソンさんは箒を持っていたでしょう?あれは神聖教会から支給される魔道具というもので、そのおかげで飛べているですよ。」
ほ!魔道具!
そこから考えるに、比較的簡単な魔法は魔道具を使うことで普及しておるということか!
「ミリィ!ぼくも魔法つかいたい!!」
儂ワクワクしてきた!!
じじいといったら魔法使いじゃろ!
こりゃ、儂始まったな!!
「うーん…メルティ言い忘れていましたが、魔法が使える、というのは才能なんです。100人に1人が火を灯すくらいの魔法を使えます。他の人は全く魔法が使えない、ということはありませんが、中には全く魔法が使えない方もいます。ボブソンさんのように神聖教会に認められるほどの魔法使いは100人に1人が千人集まった中の1人です。しかもその才能は遺伝しません。それに、申し訳ないですが、私は魔法が使えません。」
なんと…ボブソンめっちゃエリートじゃないか。
尊敬はせんがの。
ふーむ…そうか、誰でも使うことができるわけではなく、かつ、使えたとしても才能の差はピンキリと。
そうなると、儂が魔法を使えるかは置いておいて、身近ではボブソンしか魔法使いがおらんということか…。
嫌じゃの…あれに教えをこうのは。
「しかし…。」
「アリアネ奥様は魔法使いでおられます。」
ママーン!!
儂は信じとったぞ!
母上はただの化け物じゃないって!
そう聞くや儂は母上のところに走り出す。
「母上!儂も魔術ならいたい!!」
「め、メルティ?急にどうしたの?わ…わし?」
おっとっと。興奮のあまり、つい口調が。
全くおじいちゃんったらおっちょこちょいなんじゃから。
「ぼくも魔術つかいたい!」
「それは…いいけど、メルティ魔法っていうのは誰でもつかえるわけじゃ…。」
「うん!知ってるよ!」
そこでミリィが部屋に入ってくる。
「奥様…実は…。」
どうやらボブソンが飛ぶのを見て憧れてしまったらしいと説明するミリィ。
ちがわい!空を飛ぶのは憧れたけど、ボブソンに憧れたみたいに言うない!
「ちょっと早い気がするけど…。」
そう言って母上は、後ろの棚から杖をとってきた。
その先には透明な水晶がついておった。
ほぉ!ふぁんたじーじゃの!
「メルティこの水晶に手を置いて念じてみるの。力を込めるように手のひらから血が吹き出るイメージよ。」
例えグロ。
ふむ、しかしその感覚は気を通す時と同じじゃの。
まあ儂は最近常に気を通しておるから貧血みたいなもんじゃ。
「魔力が少しでも通ればぼやぁっと水晶が光るわ。」
そう言われて儂は水晶に、手を置く。
目覚めよ!儂の魔力!
水晶をかちわれゃゃやあああ!!
「ふおぉお!!」
おっと今日はよくおじいちゃんが出るわ。
どれ、水晶は…。
しぃん……。
びっくりするほど無反応。
ほっほ。この儂がそんなまさかの。
どれもう一度。
「ふおぉおおおん!!」
しぃん……。
……………………………………嘘じゃろ?
なんとも言えない空気が流れる中、母上が口を開く。
「メルティ…残念だけど…。」
「あなたに魔力は無いわ…。」
母上に抱かれ、その現実を受け入れることができたのは夕飯の後のことであった。
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