父と母
読んでくださった人がいる、というのはうれしいことですね。
=アリアネ視点=
産声を上げた我が子をみて私は涙した。
「あぁ・・あたな・・・よかった・・!よかった・・!」
夫であるイヴァンが手を握ってくれる。
医者は目を見開いて信じられないという顔をしている。
話は聞かされていた。
死産かもしれない、と。
兆候はあった。
一週間くらい前だろうか、おなかの子があまり動かなくなったように感じた。
イヴァンはすぐに医者を呼びに行ってくれた。
医者は、まだわからない。生まれるまで待ちましょう、といった。
そこから一週間。
不安な気持ちで過ぎていった。
不安は的中した。
子供が生まれた。
医者の顔は暗い。
イヴァンは唇を噛みしめている。
その顔をみてわかってしまった。
(あぁ・・いやよ・・!いや・・!そんな・・・!)
そんなはずないと。
泣きながら首を振る。
医者が口を開く。
「残念ながら・・・」
その時。
「おんぎゃぁああああああ!!おんぎゃあああああああ!!」
その場にいる全員が目を見張った。
医者も、産婆さんも、お手伝いさんも、メイドも、イヴァンも。
私も。
奇跡だと思った。
いや、奇跡だったのだろう。
ただただ、感謝した。
イヴァンに、この子に。
ここにいることを確かめるように赤子を抱く。
さっきとは全く違う涙が流れた。
赤子の髪を見てみると、金髪、というより白髪に近かった。
色素が薄いのだろう。
将来髪の色が違うことでいじめられるかもしれない。
そんな考えが一瞬よぎる。
何を考えているのか、私は。
生きてくれて、生まれてきてくれた。
それだけで私は、この上ない幸せだ。
もし、いじめられたら私が守ろう。
この子は大切に育てよう。
私たちのかけがえのない宝なのだから。
=イヴァン視点=
信じられねぇ・・!!
もうだめかと思った。
神様を恨むとこだった。
もし、神様ってやつがいるんなら死んでも許さねぇと誓うとこだった。
ああ、本当によかった・・・!
「ったくよぉ・・心配かけやがって・・・!」
自然とそんな言葉が出た。
まったくだ。
だが、さすが俺とアリアネの子だ。
妻のアリアネは汗と涙でそりゃひどい顔をしている。
でもそんな顔も愛おしいと思う。
よく頑張ってくれた。
俺は手を握ってやることしかできなかった。
強い女だ。
「あなた・・男の子よ!」
落ち着いたアリアネが聞いてきた。
名前は事前に話し合って決めてある。
「メルティア・・・この子はメルティア・ランスロッドだ!」
メルティアはひとしきり泣いた後、寝てやがる。
こっちの気も知らねーで・・・。
いや、それでいい。
自由に、強く育ってくれ。
「よく、がんばったな・・・。」
妻とメルティアを引き寄せる。
今日は俺の人生で最高の日かもしれない。
おじいちゃんがはやくしゃべりたそうにしてます。