猫の小路カフェ
最寄りの駅から徒歩五分。それだけを聞けば悪くはなさそうな立地だが、何せ場所が悪すぎた。
駅前商店街から、路地だと知っている人しか入らないような、建物と建物の隙間へと曲がる。更にその先でもう一度曲がった行き止まり。
そこに、その店があった。
一見すれば古くさい一軒家。
よくよく見れば、細かいところにレトロな装飾を残したまま修繕された古民家だった。
寄せ植えの鉢と手書きのメニューが書かれた黒板。そして、小さな看板が扉の横に設えてある。
店主夫婦が切り盛りするその店は、幾つかのルールがある。
例えばこんな感じだ。曰く、他のお客様のご迷惑になりますので、店内での写真撮影はご遠慮ください。
その為に、グルメサイトにも全くあがらないので、本当に知る人しか知らない店だった。
フードメニューは基本日替わりで、『パンの軽食』と『ごはんの軽食』。『具だくさんスープのセット』と『カレーのセット』それと、『本日のデザート』が三種類。
珈琲はホットとアイスとカフェラテだけだが、紅茶は幾つもの種類がある。アルコール類は、基本的にはビールとスパークリングワイン、それに自家製サングリアが置いてある。このあたりは完全に店主の好みらしい。
おつまみのメニューは特にはないけど、頼めば結構作ってもらえる。
ほとんどが常連というこの店だ。店主にわがままも言いやすい。
そんなこの店の名は『猫の小路カフェ』
猫しか歩かないような、小路の先にある、とあるカフェである。
現在連載する作品の気分転換に書きはじめた話ですので、不定期更新となります。
大きな事件もストーリーもなく、小腹が空いているだけの作品ですが、気が向いた時でもお付き合い頂ければ何よりと存じます。
タグの『ファンタジー』や『異世界』は、そのうち出てくるかと存じます。気長にお待ちくださいませ。