『魔女』
物心ついたときには既に、それらはぼんやりと「視える」ものだった。
予感というものに、似ているのかもしれない。近い未来のことが、なんとなくわかるのだ。
先に起こる出来事をぴたりと言い当てる私を、最初に気味悪がったのは母親だったか。
思い出せる記憶は全て孤独とともにあった。
母が死んでからというもの、行く先々で私はひどく虐げられた。罵声を浴びたり、暴力を受けたりすることは私にとってもはや日常茶飯事だった。
理不尽に力を振るう人々の中では生きられないと悟った私が、森の奥で暮らすようになったのは無理からぬことだろう。しかし一人で生きるために身に付けた薬草の知識は、私の印象を更に悪くしたようだった。
「魔女」――人々が私のことをそう呼んでいるらしいことを、買い出しのため集落を訪れたときにたまたま耳にした噂話で知った。
そのとき、私は妙にすとんと納得したものだ。
人々を気味悪がらせ不安を与える異質な者を魔女と呼ぶなら、私は間違いなくそれなのだ、と。
まさに日陰を歩くような人生だった。
誰から疎まれようとも、どこで陰口を言われようとも何の問題もない。いくら私がそれらのことに傷付いたとしても、意味はないのだ。そう思うようにした。
なぜなら、私は自分以外の人々とほとんど関わってはいないのだから。森の奥に閉じ籠って独り静かに暮らしてさえいれば、日々は穏やかに過ぎていくのだから。
それでも私を訪ねてくる人は、ぽつりぽつりと絶えなかった。私のことを畏れ疎みながらも、私を頼らざるを得ない人々。私の前では笑顔を取り繕い、助けを乞う人々。
憤りを感じずにはいられなかった。人のことをこんな辺鄙な場所に追いやっておいて、困りごとがあったときにだけ近付いてくる。調子が良いにも程があるだろう。
しかし彼ら、彼女らの作り笑顔の裏側に垣間見える焦りや不安を目にすると、こう思わずにはいられないのだ。
誰もが皆、陰に堕ちることを恐れているのだと。
誰もが皆、弱い人間なのだと。
失うものが何もない私は、彼らよりは強いのかも知れない、と。




