1
「あなたには興味が無いわ」
いきなりそう言われた。仕方なく、俺は「そうか。ごめん」と言って、その場を去った。目の前にいた、女の子は恥ずかしそうにも見えたし、大変めんどくさそうにも見えた。二つの姿が見える時点で、俺は女心というものを全く理解できていないことに気がついた。俺は、落ち込む気持ちを抑えるかのようにため息を吐いた。虚しさが俺の心を、えぐった。
次の日。何ごともなかったかのように登校した俺は、それはそれはポジティブな奴であった。
「おはよう」
登校中に俺に声をかけてきたのは、クラスメイトの猫だった。
「ああ、おはよう」
猫。なんともまぁ、不思議な名前をつけたものである。元々は、「錨」という名前にしようと両親は思っていたのだが、いざ、紙に書き出してみると「錨」という漢字が書けなかったらしい。辞書を引っ張るなり、インターネットで検索する努力を両親は省いたのだという。結局、「錨」という字に近い「猫」という名前が簡単に書けたため、この名前でいくことにしたらしい。能天気な親である。
「なんか、悪いことでもあったの?歩いている後ろ姿がとても寂しげだったよ」
猫と言う名前にふさわしくないほどの、感の良さである。いや、猫は感が良いのか。
「昨日、ふられた。見事にふられた」
「へぇ、お相手は誰?」
猫は興味津々だった。
「6組の遠藤」
「ああ、遠藤さんねぇ。彼女可愛いもんねぇ」
猫は、しみじみ言った。しかし猫は、「でも、君にはちょっと高嶺の花だよね。うん。彼女を狙うライバルは多いって聞くよ。野球部とかサッカー部とか」
「だよなー」
しかし、内心で違うことを思っていた。頼むからもう俺の心をえぐらないでくれ、と。