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「で、具体的にはどうするんです?」
「何が?」
「…はぁ、……達哉ですよ。来るとしたらもうすぐでしょう。案外、もういるんじゃないですか」
「おぉ、忘れてた、忘れてた」
眉間に人指し指をグリグリ。
何やら考えるしぐさを見せた後、ニーっと口元に弧を描いた。
端から見たらホラーなこと間違いない。
「返り討ちだぜよ、槙くんよ」
「………」
「隠れるのはやめで、正面からやりやろう。まず、そこの入り口に待機だ。獲物がやった来たら、そのまま捕獲。いや、いっそ一思いにスパッと仕止めるのもいいね」
「…………」
「あ、そう言えばここガラス張りか。となると入り口潜伏は無理か」
「……………」
「先手必勝?出迎え?不意討ち?ねぇどう思う?」
「…楽しそうですね」
回りには黄色い珠がさらに増加している。
生産量、輝きともに一級品だ。
大きさは直径三ミリ程度と小さめだが、すでに足下に多くたまっている。
ここには、"塵も積もれば山となる"原理が絶賛発動中だ。
珠は感情の高ぶりに合わせて量も形も変わる。
形によっては少量でも重張ると膨大な塊の山が出来上がってしまう。
重さも見た目通りある。
そのため、片付けがじみに困難であり、かつ、使い道がない。
つまり、役立たずなのである。
(背後をとって気絶させるのが一番平和なんだけど、あいつ妙に鋭いし。罠を張るにも時間がなぁ。…ん?時間!?)
「槙さん、大変!早くしないと、ほんとに来るよ!」
「…後ろを見てください…」
飛び出す珠が減少した。
びしびし伝わる視線。
それは容赦なく背中に突き刺さる。
グギグギとロボットのように首を回転させる。
塵も積もった山が崩れている音が、研ぎ澄まされた聴力に引っかかる。
目の端に見えたのは、満面の笑み。
ではなく、号泣の達哉だった。