only my sister
久しぶりっ
「ユウコー!」
唐突に沈黙を引き裂いた無遠慮なバカでかい声。
その発生源は裸にネクタイという、斬新極まりないファションの持ち主……ジョニーだった。
「ついに見つけたよ! 君の探していたブラジャー! 親切な方が交番に届けてくれたらしい」
だあああああああああっ! コイツ何を大声で!
「勇気くんの、ブラジャー?」
美羽ちゃんは小鳥の様に小首を傾げ、目を?にしていたが、やがてとろーんとした瞳に恍惚の笑みを浮かべ、美羽ちゃんは口から本日二度目のおつゆをこぼした。
ああ、美羽ちゃん今度は何を考えてるんだい……。
「あれは……バカな!」
ダックはジョニーの右手に収まっている一部でHOTなアイテムに目が釘付けになっていた。
そうだ……ダックも探していたんだ。これはまずい事になるぞ……。
「ジョニーさん!! 逃げましょう!」
俺はジョニーの太い腕を掴み、あてもなく駆け出した。
「勇気くん、いやああああああ! あなたは私の物なのよー!」
美羽ちゃんの悲痛な叫び声。
「島谷くん! それをよこしなさい!」
続いてダックの叫び声。それらを遥か後方に置き去りにして、俺とジョニーはすでに夜を迎えた駅前の大通りを駆けて行った。
居酒屋やら、歯医者やらが詰め込まれた古い雑居ビルの裏口で、俺達は荒い息を整えた。
「それにしてもユウコ。いつの間に、そんなにボーイッシュになったんだい?」
俺ははっと思い出す。そうだった。ウィッグを取っていたんだ。
近くにあったカーブミラーに哀れな俺の全身を写し、それを認めると俺はすぐ死にたくなった。
「どこに出しても恥ずかしくないヘンタイさんだぜ……」
「何を言ってるんだい? ユウコ。君はユウコ シマタニだろう?」
「違うんだ、俺……本当は島谷 勇気。島谷 優子は俺の姉なんだよ」
ジョニーは驚愕のあまり、ずっこけた。
古すぎるだろ、それ。
「で、では、本当のユウコは!?」
「家でふんぞり返って金色のコ○ダ3やってるよ」
「OH MY GOD!」
その反応もどうかなあ。
突然、ブルルと俺の携帯が震えた。
「非通知? うざいな、無視無視っと」
「NO! ユウコ! じゃなくてユウキ! もしかしたら連中かもしれない。出るんだ」
ジョニーの目が尋常では無いくらい見開いていたので、俺はそのうち目ん玉飛び出しちゃうんじゃないかと、ちょっと心配になったので電話に出ることにした。
「もしもし」
『お前の姉は我々、ブラッドスコーピオンが預かった』