気になるあいつは爆弾魔?
~島谷家序列~
おかん
↓
姉 優子
↓
俺
↓
愛犬ミケ
↓
中村のおばあちゃん
↓
妹の様な弟
↓
ミミズ
↓
親父
↓
蟻
面白い、と俺は思った。
毒入りチョコの次は時限爆弾か、よほど俺に恨みがあると見える。
俺は拳に力を込め、いつでも戦闘態勢に移れるようにした。
この10年間、磨きに磨きあげてきた秘伝『島谷流暗殺術』を披露する時がこようとは。
『島谷流暗殺術』とは、通信空手に中二病とマーシャルアーツとラジオ体操第3に嫁いびりをミックスした、俺の開発した総合格闘術である。
その威力は凄まじく、妹の様な弟と愛犬ミケを屈服させる事に成功した。もっとも、姉貴には小指一本で敗北してしまったが。
「あの、それじゃ私、これで……」
それだけ言ってダックは顔を両手で覆い、駆け出していった。
おそらく、溢れ出る笑いをこらえきれなかったのだろう。すぐにミッションに復帰したい所だったが、爆弾の解除が先だ。
箱をアスファルトで舗装された地面に置き、包装用紙を破り捨てる。ご丁寧に添えられたリボンを力任せに引きちぎり、箱の中身を引きずり出した。
「――マジか」
俺は目の前の光景に絶句した。
箱の中には、白い粘土の様な物に赤と青の線が引っ付いている。
さらには、備え付けられた液晶画面には赤い数字で09:59と表示されているのだ。
――プラスチック爆弾だ。
「残り……9分59秒」
いや、今9分58、いや、9分57……とにかく、あと数分でここら一体は吹き飛ぶ。決断せねばならない、青か、赤か。
姉貴を呼びに行くか? 一か八かやってみるか?
「動くな」
突然の殺気と冷たい声に俺は我に返った。背中には金属の様な物が押し付けられ、かちゃりと音がした。
まさか……今のは拳銃の安全装置を解除した音なのか?
『島谷流暗殺術』免許皆伝の俺の背後を取るとは……。
「中身を見られるとは思わなかった、そのまま島谷家を爆破して、証拠もろとも消し去るつもりだったのに。これでは私の計画がおじゃんだ」
その声は、俺にチョコレートをくれた時の照れた声と一緒だった。
そう、今まさにダックが俺に銃を突きつけて脅しているのだ!
だが、何のために?
「交換条件だ。今から言うものをここに持ってこい、そうすれば爆弾を解除してやる」
何を言ってるんだ、こいつは? 第一、爆弾の側にいればそっちも巻き添えを食らうだろうに。
その時、空を切り裂くように上空にヘリコプターが姿を現した。
あれで逃げるってわけか。
「何を、持ってこればいいのよ?」
俺の問いにダックは一呼吸し、口を開く。
「お前の母親のブラジャーだ」