赤いものをみたの
日常に溢れる「赤」という色が、これほどまでに恐ろしく、冷徹に人を追い詰めるものになるとは、一体誰が予想できたでしょうか。
本書は、ある凄惨な事件の謎を追う刑事(あるいは探偵)の目線を通し、視覚の錯覚と人間の狂気が織りなす恐怖を描いたサスペンス・ミステリーです。被害者の瞳に焼き付いた「赤」の正体、そして背後に潜む真犯人の目的とは何なのか。
ページをめくるごとに変貌していく色の意味と、息もつかせぬ緊迫感に満ちた展開を、どうぞ最後までお楽しみください
『赤いものをみたの
被害者が口から血を流しながらこの世に残した最後の言葉は、その一言だった。
赤い物?なんだそれは?赤いものぐらい世の中には無限に近いくらいあるわ。
そう毒づいた私を嘲笑うかのように、被害者の瞳に映る「赤」が、ゆっくりと形を変えていく。それは床に広がる血の海でも、犯人の衣服の色でもなかった。
じっと見つめる私の背後で、パトカーの赤い警告灯が激しく回転し始める。その光が被害者の瞳に反射し、まるで彼女が「次の標的は、お前だ」とでも言うように、不敵に明滅した。
【了】
本書を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
日常に溶け込んでいる「赤」という色が、もしも悪意を持って書き換えられたら――そんな奇妙な思考の種から、この物語は生まれました。私たちが「見ている」と思っている世界がいかに曖昧で、脳の錯覚や他者の狂気によって簡単に揺らいでしまうのか、その恐怖を刑事の目線を通して一緒に体感していただけたなら幸いです。
今日からあなたが見る「赤」が、昨日までと同じ無害な色であることを願って。
著者




