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醜いアヒルの子

掲載日:2026/04/27


春のぬかるんだ池のほとりで、醜いアヒルの子は毎日笑われていた。

羽はくすみ、声は濁り、歩けば泥が跳ねる。


「なんだそれ」「見てられないな」

仲間たちは面白がってつつき、通りすがりの鳥さえも首を傾げた。


最初は悲しかった。

次に、悔しかった。

そしてある日、ふっと思った。


——どうせなら。


「どうせ醜いなら、もっと醜くなってやる」


それは怒りというより、静かな決意だった。


その日から、彼は変わった。

綺麗にしようとするのをやめた。

泥に潜り、腐った水を飲み、夜の暗がりに身を沈めた。


羽はさらに歪み、色は判別できないほど混ざり、

その体は次第に、アヒルとも鳥ともつかない形になっていった。


誰も近づかなくなった。

笑う者すらいなくなった。


数年が過ぎた頃、池のほとりに、奇妙なものが現れた。

それはかつてのアヒルの子だった。


しかし、もはや「子」ではない。

目はどこにあるのか分からず、声は空気の震えのようで、

その存在自体が、周囲の景色を歪ませていた。


昔の仲間たちは、震えながら後ずさった。


そのとき、彼——それは、ゆっくりと口のようなものを開いた。


「ありがとう」


誰も何も言えなかった。


「君たちが笑ってくれたから、ここまで来られた」


声はやさしく、奇妙に澄んでいた。


「美しくなる道もあったのかもしれない。でも、僕は選ばなかった」


少しだけ、間があった。


「もっと遠くへ行きたかったから」


そう言うと、それは地面に体を押しつけた。

柔らかくなった土が、まるで迎え入れるように開く。


ずぶり、と沈む。


誰も止めなかった。止められなかった。


やがて、完全に姿が消えたあと、

そこにはただ、わずかに温かい土だけが残っていた。


誰かが小さく言った。


「あれは……なんだったんだ」


答える者はいなかった。


ただ、もう二度と、誰も軽々しく笑うことはなかった。


その数日後、地面が再び裂けて、光を複雑に屈折した何とも言えないプリズム体が発生した。それは、他の空気の部分との差異によってようやく見分けることができた。


アヒルの仲間たちは、


「あいつ、醜いアヒルの子から、見えないアヒルに成長しやがったっ!」


と叫ぶ。

彼は、ニッコリ笑うと飛び立って、空の中に、雲間へと消えていこうとしたのである。


だが、次の瞬間、たまたまその近くを飛んでいたジェット機にぶつかって、彼の体は四散した。それは、バードストライクにはならなかった。エンジンに巻き込んだのではなく、ジェット機の翼に当たったので、幸い旅客機に乗っている人々には何の影響もなかった。


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