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合い言葉は、雨

作者: 絹ごし春雨
掲載日:2025/12/31

 雨が降っている。

バス停で待っていると、隣に人影、彼だ。


「よく降りますね」

低く耳心地のいい声。

「本当にそうですね」


指がほんの少し触れた。彼の指は湿っている。


「タオル使います?」


ハンカチを差し出すと、彼は困ったように笑った。


「僕は、雨なので」


「また、会えませんか?」


「ええ。会いましょう」


彼がちょっと気になっている。


雨が止んだ。


彼の姿は消えていた。


それも、含めて。


バスが来た。





「こんにちは」


今日も私は雨女だ。


彼と手を繋いで歩く。


しっとりとした雨が、私を濡らしていく。


「また、会えませんか?」


「会いたいですよ。いつでも」


「そうですか」


彼は、穏やかに笑った。


私の世界は、雨が多くなった。


いつからかわからない。


「また会えましたね」


彼が嬉しそうに笑うから。


「そうですね」


私も、笑った。




今日は友達が一人いなかった。

首を傾げる。


「ねえねえ。美佳ちゃんは?」


「誰? その子」


美佳ちゃんは消えた。


商店街の人がまばらだ。


「……こんなに人、いなかったっけ?」


「今日は混んでるねぇ。並んじゃったよ」


おばさんに話しかけられた。


「……雨だ」


雨が降るたびに、何かが消えていく。


今日はバスが来なかった。


「送りますよ?」


彼が傘を差し掛けるから。


「まあいいか」


私は、彼についていった。


どうして私の家を知っているのだろう。


家に帰ると、家族がいなかった。


彼は、自然に家の中に入ってきた。


そうするのが、自然だった。

世界が二人きりになる。


「雨は十分ですか?」

「雨は十分です」


私は答えた。

「私のことが、好きでしょう?」

「ええ」


「雨は十分」


彼が繰り返す。

私の世界から雨が消えた。

雨は彼。



家には扉がなかった。

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